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第35話 つるつる ふるるん

 ある日の私の、子供とパートナーへのサービスデー。計画を練る暇もないほど仕事が忙しく、前日の夜まで、何をするのか全く決まっていなかった。それでも、窮すれば通ずというやつだろうか、アイディアも出るもので、ゼリーに思い至った。やや肌寒い時期にゼリーか? と言うことは、ひとまず置いておくことにする。子供の大好きな、苺とブルーベリーをしこたま入れた、ベリースペシャルゼリー。赤と青の色合いも鮮やかに、受けること間違いなしである。しめしめ。

 ゼリーと言えば、つるつる+ふるるん。この食感が、子供たちに絶大な人気を誇っていることは、お子様ランチのちょいおまけについてくることからもよ〜く分かる。もらい物のフルーツゼリーを食べている時など、子供が食べ尽くした頃を見計らって、「へへ〜ん、お前にはもうないだろう。こっちはあるも〜ん」と、口の中で「ふるふるっ!」としてみせる。殴られることもあるくらい、効果絶大である
 と、ここで素朴な疑問が沸いてきた。大人がゼリーを食べている姿を、ファミリーレストランなんかでみかけないのはなぜだろうか。お子様ランチにはついてくるのに、大人用メニューではとんとみかけない。あのさわやかな口当たりは、大人だって好きなはずだ。その証拠に、大手お菓子店には、たくさんフルーツゼリーが置いてあるではないか。きっと他の人は、子供にお土産を買っていく振りをして、こっそり隠れてもしゃもしゃ食べているに違いない。

 そんなアングラなゼリーも、作るのはいたって簡単である。お湯を沸かしてゼラチンを溶かし、冷やせば出来上がり。だけんどもしかし、今回のゼリーがちいっとばかり違うのは、ゼリー液より軽いベリーたちをゼリーの中に、まんべんなくちりばめる点にある。ほうっておくと、ポコンポコンと浮き上がってくるやつらを、うにゃっ! と沈めておかなくてはならない。ゼリー液を氷水で冷やしながら、ゆっくりかき混ぜると、なんとなく底無し沼どろどろ状態になる。すると、ベリーたちはどろどろから這い上がってこれない。そこのところを冷蔵庫にぶち込めば、めでたく出来上がりと言う寸法である。

 のはずなのだが、ご想像のとおり、いつまでたっても、ポコンポコンと這い上がってきてしまう。2時間は冷やさなきゃならないってのに、もう。とにかく冷蔵庫に入れてしまうことにした。
 2時間経過。なんだか、取り出したゼリーにぶりぶり感がある。期待したふるるん感ではなく、躍動感があふれているのである。そのくせボールから取り出すと、ビールを飲んで寝こけている私のように、びろんとだらしない。ゼラチンが足りないのか? 説明書きを読むと、分量はばっちり合っている。んん? この固まらない果物があるとかっていうのは何? 缶詰ならOKだってか、生は駄目だってか。茹でた苺やブルーベリーなんか、食いたかねえぞ! まあ、できちゃったんだから、子供とパートナーには、このぶりぶりで我慢してもらおう。

 いい加減食べ終ろうと言う頃、子供が私に向かって、口の中でゼリーをふるふるしてみせている。子は親の背を見て育つとか言うなあ。その後の
「アッ チャッッチャッッチャッ」
と、カスタネットを持って、怪しげに踊っているのまでみせられると、背中を見て育つどころか、親を映す鏡とか、かえるの子はなんとかと言う言葉がぐりぐりと駆け巡る。どうも、うちの子供は、真っ直ぐに育っていないような気がする。

パートナーのひとこと

 寒天の方がカロリー低いよ。

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