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第36話 2時間で本格ラーメン

 10時。開店と同時にスーパーに飛び込む。目指すはラーメン玉である。

 土曜、朝一で見てしまった「ラーメン職人選手権」。それでなくとも食いしんぼうの一家、画面から溢れ出んばかりの湯気、脂、熱気に平静でいられるはずがない。娘がつぶやく、
「お昼、ラーメン食べたい。」
そうだねえ、どこで食べよっか、と外食を提案すると、
「特製ラーメンが食べたい!!」
と言い張り、しまいには、怪しげなラーメンの歌を作り、踊り出す始末。
 よおし、2時間で本格的ラーメンを作って見せよう。

 まずはラーメン玉。お馴染みの3食入り醤油ラーメンである。そして豚骨。一番小さいパックが70円、これでよい。それに豚バラブロック、長ネギ、ほうれん草、以上である。
 コートも脱がずに、豚骨を水に入れ、火にかける。70円の豚骨だけでは心許ないので、その辺にあっただし昆布も入れる。豚バラブロックは、酒、砂糖、醤油、長ネギ、八角少々で角煮風に煮る。各々の鍋のあくを掬いながら、時間の許す限り、じっくりと煮ていくのである。

 ラーメンへの思い入れは人それぞれであろうが、郷里の味と言うものも、ひとつ捨て難い。私の場合それは、細打ちの縮れ麺と澄んだ醤油味のスープである。
 我が郷里は、地理的に近い喜多方を意識して、いつの頃からか「米沢ラーメン」と旗を掲げ、ラーメン屋を乱立させている。こうした新興地場産業というか、地域振興事業というようなものは、今一つ納得のいかないものが多い。特産物や歴史と全く関係がないのである。食ってうまけりゃ何でも良いが、時折、ふと「でも、何でラーメンなんだ?」と素朴な疑問にとらわれたりするのである。
 それはさておき、私にとってラーメンは縮れ麺である。店のラーメンもそうだが、即席麺もカップ麺もとにかくメンといえば、縮れ麺なのである。初めて、まっすぐなラーメンに出会ったとき、そうめんでもない、うどんでもない、スパゲティーでもないラーメンに、ものすごく違和感を覚えたものである。出来るものなら、日本中、ラーメンは縮れ麺に統一したい。インスタントラーメンが縮れているのは、そう思う人が多いからではないのだろうか。

 1時間経過。スープは白濁し、とろみが出てきた。火は弱めず、常にお湯が対流するようにしておく。スープから突き出た豚骨や、たちのぼる湯気が魔女の毒薬作りに似てまがまがしい。娘がちょろちょろと鍋をのぞきにやってくる。12時を過ぎ、パートナーもそわそわし出した。火にかけてから約2時間、タイムリミットである。
 丼に付随のタレと、長ネギの小口切りを入れる。こし器を当てつつ豚骨スープを注ぎ入れ、硬めにゆでた麺を泳がす。ゆでたほうれん草、大きく切った豚バラを豪快に載せ、特製ラーメンの出来上がりである。さあどうだ。

 白いスープがタレの醤油味をやわらげ、全体にマイルドな感じである。豚バラもスープとの相性が良く、うまい。今までのお湯で作る味と全く違う。家族全員、うまいうまいと額に汗して食べたのだった。

 しかし、お腹にたまるラーメンである。スープのこくと脂で、お腹いっぱい、胸一杯である。実の所、2時間、スープの湯気と匂いに当てられて、私は食べる前から腹八分目状態だったのである。うううむ。

教訓

 やっぱりラーメンはお店で食べよう。

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