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第37話 ビビリ薬入りタイ料理

 パートナーが、突然タイ料理を食べたいと言い出した。どんなものなのか知っているのかと聞くと、知らないと言う。辛いのが苦手なくせに、それでも食ってみたいと言う。なぜかと質問したら、
「何が出てくるのか、はらはらドキドキするじゃないか」
とのお答え。どうやらパートナーは、ホラー映画のようなものを期待しているらしい。

 パートナーが捜し出したお店はというと、タイ伝統料理とか宮廷料理とか、それはそれは一般人が雰囲気にビビッてしまうようなところ。家庭とか屋台とかは、どこにも見当たらない。だけんどもしかし、パートナーの方は準備万端、今にも行かんばかりの勢いである。私の方も、エスニック料理は嫌いではないし、魚から作った醤油のようなものであるナンプラーなんかを、スーパーの調味料売り場でついつい手に取ってしまう口である。
 百聞は一見にしかず。レッツゴー。

 そのお店は、入り口にも、そんな風に体は曲がらないぞという姿の舞踊像が置いてあったり、赤と金のお衣装を身にまとった美しいお姉様方のお出迎え等など、あらゆるところにビビリ薬を振り掛けてあるようだ。
 はるばるここまで来たんだから、とにかく入る。メニューを見ると、値段の方はややお高めではあるが、目は飛び出ないのでちょっと安心。唐辛子マークの料理を避けつつ、ヤキソバ・えびの炒め物・揚げご飯などを注文をする。

 しばらくして登場した料理はというと、カーヴィングと呼ばれる野菜を使った美しい飾りをあしらった品々。ここにも心憎いほどビビリ薬を効かせてある。
 お味の方は、なんとも甘くて酸っぱくて香ばしくて、これらが渾然一体となった、不思議においしい料理である。スプラッターでもなければホラーでもない。野菜をふんだんに使ったヘルシーな料理である。野菜はいやだなどとごねている子供だって、喜んで食べている。一家で、タイの伝統と宮廷をおおいに堪能させていただいた。

 あの味をお手軽に再現してみよう、などと思い始めている自分が恐い。2LDKのウサギ小屋に、宮廷を再現しようというのである。お蔵入りとなっていたナンプラーとタイ料理本が、再び日の目を見る事になった。こいつで、ヤキソバを再現してやるのである。
 実は、このナンプラーにはあまり良い思い出がない。醤油みたいなものだと言われて、餃子なんかに付けて食べてみたりもしたが、独特の臭みが気になって、つい使いそびれてしまう。
 ところがだ、宮廷料理の方は、そんな臭みなんてない。あんなものができるのだろうか。ま、とりあえず砂糖と酢とナンプラーをまぜまぜしちゃう。手際よく、野菜とヤキソバめんをジャジャッと炒める。気持ちは宮廷料理人なので、できるだけ派手に鍋から跳ね上げながら炒める。さらに、まぜまぜ調味料をジュジューッと入れてみる。さてさて出来上がったヤキソバのお味は?

 おおおおお、あの宮廷の伝統に近い、甘くて酸っぱくて香ばしい味ではないか。ナンプラーの臭みも気にならない。まぜまぜ調味料って不思議で偉大だ。これも伝統のなせる技なのであろうか。

 まあ、ナンプラーを極めれば、宮廷も伝統も極めたようなものである。はっはっはっはっは。唐辛子がどうしたって? カーヴィングが何だって? 簡単簡単、ま・か・せ・な・さ・い!
 ところで、タオチオって何?

パートナーのひとこと

 タイ料理って、なんだか楽しい。

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