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第43話 かくも美しき目玉焼き

 数ヶ月に1回くらい出張に出る。大阪や博多1泊が多い。純粋に仕事の出張もあり、不純にも宴会要員でかり出されるものもある。お酒が強くない私には、飲んだ次の朝がとてもつらい。なかなか目は開いてこないし、ベッドから起きあがるのにひじょ〜にエネルギーを要する。いつまでも、うだうだゴロゴロ。
 そんな時には、朝風呂である。朝からじっくりお湯に浸かって、体を目覚めさせてやる。体がぽっかり温まってくるにしたがって、生きるエネルギーもじわじわっとわいてくる。最近は名古屋日帰り出張が増え、この楽しみが味わえない。ちょっと残念。

 さて、体が起きてきたところで、次は朝食である。私のようなゆっくり朝風呂派は、ブッフェタイプの朝食では、既に出遅れている。到着した頃には、あらかた食べ尽くされていて、干からびたベーコンや冷たい玉子焼きが残っているくらいだ。ぱさぱさのベーコンを突つきつつ、残り物には福があるとかつぶやきながら、パンとオレンジジュースを流し込む。

 そんな悲しいことばかりでもない。ビュッフェでは出遅れても、セット形式では出遅れがない。しかも、このセットでは、芸術的に美しい目玉焼きに出会うこともある。それはそれは透き通るように美しい白身とみずみずしい黄身。食べるのがもったいないくらいだ。な〜んて思いながらも、結局はぺろりと平らげてしまい、食後の紅茶なんぞを飲みながら、ふうっと物思いにふける。あの芸術的な目玉焼きは、どうやって作るのだろうか。
 自分の作る目玉焼きはクレータがボツボツ、端っこはパサパサに黒くこげ、黄身はへこんでいる。全くもって月とスッポンである。いやいや、あれは目玉焼きではなく実はカマボコなのでは、なんていうあらぬ疑いをいだいたりする。

 そんな思いをモヤモヤと抱えていたところ、ふと目にした本が解決してくれた。答は簡単、時間をかけること。とにかく弱火も弱火、ごくごく弱火で、じ〜っくりと時間をかける。すると、ホテルで出てきたような芸術的に美しい目玉焼きが出来上がる、らしい。やっぱり、カマボコではなかった、らしい。
 消えそうなくらい小さな小さな火の上に、フライパンを静かにのせる。バターをほんのひとかけのせ、溶けたところで玉子を静かに割ってのせる。あとは、待つだけ。手荒にすると本当に火が消えて、気付かないうちにガス中毒になりかねないのでご注意。
 透明な白身に、底の方からうっすらと白いもやでき、少しずつ着実に広がっていく。全体に広がっても、その透明感は失われず、指で触れば、指紋が残る。黄身の方だって、そのつやを保ったまま、いつのまにか固まっている。奥ゆかしくも美しい目玉焼きである。
 こういう目玉焼きは、ぷるぷるっとしたところをじゅるじゅるっと、行儀悪く食べたい。

 目玉焼きも人間も大器晩成、じっくり時間をかけた方が良いものが出来あがるものなのだ。どこかで聞いたようなことを考えながら、またホテルの朝風呂につかりながら、生きるエネルギーを養う。よし。おもむろに立ち上がる。が・・・むむむ。二日酔いかあ? 晩成するには、夕方までじ〜っくりお湯に浸かっていないとだめかも。

パートナーのひとこと

 オムレツが好き。

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