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第47話 ミートソースの心

 学生時代、懐が暖かい時はミートソースのスパゲティーを良く作った。安くてお腹一杯食べられるし、茹でるだけのお手軽料理。とてもお世話になった。出来あいの缶詰ではあるが、鮮やかなトマトの赤い色、ほのかな酸味、濃厚な肉汁の味わい、甘い香りがたまらなく食欲をそそった。
 今でも、相変わらずミートソースのスパゲティーを食べている。お手軽な休日のお昼という点は、学生時代から変わらない。子供の好物でもある。

 トマトとひき肉を煮込んだだけのミートソースは、見るからに簡単に作れそうな気がする。実家の親から送られてきた、桃太郎だか金太郎だかよく分からないトマトの大量消費のために、ちょちょいと作ってみた。

 トマトをザックザク、タマネギをタタタンタン、ひき肉をドッパドパと入れて煮てみる。ミートソースにしてはトマトが白っぽいし、トロトロになる気配もない。いくらぐつぐつと煮てみても、トマトはトマト、タマネギはタマネギ。それぞれが自己主張をし、刻み野菜のそぼろといった様相である。
 汁気が足りないのだ。トマトの汁気、トマトジュースをダバダバと入れる。気合いをつけるために、腰に手を当て、自分でも飲む。だけんどもしかし、またまた汁気がなくなって、元通り。匂いも何だか青臭いし、全く食欲をそそられない。
 でも、作ってしまったものはしょうがないか。食べてみる。あっさりした味わい。甘みもない。シャクシャクした野菜の歯ごたえに、涙がにじむ。これをミートソースと呼んでは、いけないと思う。

 ふう。どうにも解決する方法が思いつかない。実は、ミートソースは、ミートソース業者にしか作れない特別な秘密があって、私には無理なのだろうか。なんたらエキスだか、ほんだら多糖類だとかいうような、見たこともないものを入れないとだめなのだろうか。
 だけんどもしかし、ついに、目からうろこがぽろろ〜んと落ちる日が訪れた。イタリア産トマト水煮缶とひき肉で、カレーを作ってみたのだ。
 缶詰をあけると、健康な唇のような赤が目に飛び込む。ずるずるっとトマトを引きずり出すが、おや? 日本のトマトにありがちな芯が、どこにもない。水煮のせいだろうが? とりあえず、グチャグチャッと潰して煮込む。
 色はカレーだが、味はミートソースそのもの。酸味が新鮮である。

 次の日。今日はイタリア料理にするんだ! と、おもてなし料理本を参考にして作ったトマトスパゲティー。炒めタマネギにつぶしプチトマトを入れ、大量のオリーブオイルを流し込む。とてつもなく単純なトマトソース。どこがおもてなしだ、と言いたくなるくらいシンプル。だけんどもしかし、その赤い色、その甘み、そのトロ味。あ〜もう、
「これだよ、これ!」
 探し求めていたミートソースのそれである。

 ミートソースの決め手は、トマトとオリーブオイルにあったのだ。
「なあんだ、そんなことかよ」と言ってくれるな。
 はっきり言って、私の栄光を持ってすれば、もうミートソースなんてちょちょいのちょいだね。

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