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第49話 親の努め

 パートナーと子供が、私にアイスクリームを作って欲しいという。子供は、大きくなったらアイスクリーム屋さんになりたい。だから、どのように作るのか見せてやるのが親の努め、なのだそうだ。
 子供のアイスクリーム好きは、良く分かっている。どこかに出かければアイス、デザートといえばアイス。暑くてぐったりしていたはずなのに、アイスと聞けば、目がキラリ〜ン。
 だからといって、いきなりアイスクリーム屋になりたいというのは、ちょっと短絡的ではないかと思う。それに、冬にはアイスクリームは売れないから、焼き芋屋もやらなくてはいけないよ、といったら、子供の方はきょとんとしていた。

 それはともかく、本当は、アイスクリームを作るのは、ちょっといやなのだ。アイスクリーム屋なんて志したことがない私も、小学生の頃に科学雑誌だかを読んで試しに作ってみたことがある。その時に、何度も何度もかき回しては冷やし、それはそれは時間がかかったと記憶しているからだ。
 そんな私の悩みのことなんか、誰も気にしちゃいないらしい。私以外はみんな、アイスアイスで目がキラリ〜ン状態である。作る側の私としては、誰も気にしちゃいなくても、家族なのだから、とりあえず悩みを打ち明けてみた。
 かき氷ではだめか? ゼリーではだめか? とあたってみたが、そんなんじゃなくて、アイスクリームとかジェラートじゃなきゃいや、だそうだ。それに
「この本に、冷やして固まりかけた頃に混ぜればおしまいって、書いてあるよ。簡単簡単」
と、取りつく島もない。ほよよよよ。

 家族の喜ぶ顔が見られれば良し、親の努めも良し。心が決まれば、さっさと準備に取りかかる。なにせ、それはそれは時間がかかるのだ。
 作るは、紅茶のジェラート。
 お茶の葉にお湯をかけて蒸らした後、牛乳に入れて色を移す。温めた牛乳とは本には書いていなかったが、冷たいままじゃ色も付かないだろうと、煮る。ちょっと味見。に、にが〜い。すぐに反省。作り直し。
 再び蒸らして、冷たい牛乳の中へ。柔らかいクリーム色、立ち込めるアールグレーの香りがすごい。これに、大量のコンデンスミルクを投入し、やっぱり超ハイカロリー食品なのだと妙に納得。あとは、冷えて固まりかかったところを混ぜ混ぜするのが、口当たり滑らかに作るコツ。

午後2時:
 タッパーに入れて、冷凍庫で冷やし始める。
午後4時:
 端っこがやや固まる程度。子供が混ぜたいというので任せたら、溶けてしまった。ほよよ。
夜7時:
 固まりがだいぶ大きくなる、またまた混ぜ混ぜ。予想通り。
夜10時:
 子供はとっくに寝てしまったので、私が混ぜ混ぜ。君のためにこんな夜中に混ぜ混ぜしているんだから、ちゃんと見ていろよ。
夜11時:
 もおいいや。後は野となれ山となれと、最後のひと混ぜ。

 翌朝、見事に完成したが、おやつの時間までおあずけ。
 お待ちかねのおやつには、子供もパートナーも目がキラリ〜ン。
「いただきま〜す。」
 紅茶の風味が口一杯に広がる。う〜ん、うま〜い。
 さあて、アイスクリームも作ってみせたし、親の努めは完璧に果たした。これで、子どもの将来も安泰だね。おっと、焼き芋のだめ押しでもしておくか。

パートナーのひとこと

 10年後が楽しみだね。

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