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第55話 チャレンジ ザ シフォンケーキ

 久々にチャレンジャー精神をくすぐるものにであった。シフォンケーキである。ピンとこない人のために説明すると、とにかくふわふわと柔らかく、軽く、しっとりしたスポンジケーキのことである。こう書くと、ごく普通に食べているスポンジケーキのように思える。だけんどもしかし、パートナーが言うには、ふわふわに軽く焼き上げるのが至難の技なのだそうだ。「絶対失敗しない」系の本が2冊も出ているのがその証拠で、絶対失敗するんだと強く訴える。

 話を聞いただけで、ちょこざいな系新作エッセーの最初200文字くらいが頭に浮かんでくる。チャレンジャーの精神とやらが、どの辺にあるのかは知らないが、ずいぶんとくすぐったくなってきた。
 よし、それほど言うのならば、ひとつ作ってみようじゃないか。とにかく、絶対失敗しない本とシフォンケーキ型を購入するようにパートナーに申し付けた。

 気の早いパートナー、次の日にはもう本とケーキ型を買ってきた。既に本も読んだらしく、事細かに手順が書いてあるだの、Q&Aまでついているだのと、何やら楽しげに話す。よっぽど私が失敗するのを見たいらしい。
 もちろんケーキ型まで買ってきてもらったのだから、後には引けない。どれどれと、本を見る。

 う〜む。3ページにわたる詳細な手順、全写真付き。加えて、2ページにわたるQ&A。普通のケーキ本の3倍の説明である。しかも、Q&Aに至っては、膨らまない潰れるのオンパレード。
 で、でも、い、いまさら後には引けないじゃないか。か、型まで買っちゃったんだからさあ。

 既に600文字くらいの失敗話が頭の中に思い浮かんでいるが、めげてはいられない。材料をそろえる。玉子4個。失敗すれば4個がパー。もう4個あるのを、一応チェックしておく。玉子の黄身に砂糖やら振るった小麦粉やらを入れて混ぜる。
 だけんどもしかし、今回は白身の方が重要。とにかく軽く仕上げるためには、よくよくホイップされたメレンゲにする必要がある。目安は、ボウルを逆さまにしても落ちてこないくらい。実際にやってみる。
「はあっ!!!!!」
 気合の割には、落ちそうな気配を見て取るや、すぐさま元に戻す。あぶないあぶない。
 その後も、混ぜ混ぜ焼き冷ましと、やや緊張気味ではあるが、手順通りに作っていく。

 ついに、ケーキを型から取り出す時が来た。パレットナイフでゆっくりと型からはがしていく。取れた。出来上がりはというと?

「ふわふわじゃ〜ん!!!!!」
「かるいじゃ〜ん!!!!!」

 風邪で伏せっているパートナーをそっと起こして、出来上がりを見せる。
「本当にできるんだねえ。」
 目をみはるパートナーの前で、笑いが止まらない。ぐははは。
 あやうく焼き時間を間違えるところだったとか、ちょっとだけ凹みがあるなんていうことは、ドカッと棚に上げさせていただいて、これで1200文字のどうじゃ話は固いぜなどと考えつつ、しばらくは輝かしい栄光光線をビカビカとまわりに浴びせかけることにしよう。

パートナーのひとこと

 絶対失敗するお菓子って、ないかなあ?

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たぶん12万