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第56話 食事のしつけ

 子どもの小食、偏食に悩むお母さんは案外多い。
「うちの子は、おやつばっかり食べて、ご飯を食べないのよ」「幼稚園のお弁当を丸残しにして帰ってくるの。おなかがすいているから、しょうがなくて、おやつに林檎を剥いたり、菓子パンを出したり、おにぎりを作ったりするの。そうすると、夕食がまた、入らないの」
 聞いた私は内心、「おやつを買っておかなきゃいいんじゃないか」「1食抜いても、夕食まで待たせればいいんじゃないか」と単純に考えていた。母子もろともに悪循環に陥っているように見受けられるからだ。
 けれども、そんな風にいえるのは、我が子が食いしん坊でよく食べ、好き嫌いも多くなかったせいらしい。

 子どもの好物と親の好物が同じだとは限らない。私は基本的に、自分の食べたいものを作るので、子どもの嫌いなものでもかまわず食卓に載せる。1品、子どもの食べられる物があればよし、なかったら、ふりかけでも掛けて食べろ、という了見である。しかし、銘々に盛ったおかずは食べて欲しい。
 「何でも食べよう、残さず食べよう」と、自分が言われたことは一通り言っている。そうしてもらった方が、食事が楽しいからである。

 1年前のことである。子どもが精神的に不安定になった時期がある。
 生活全般にわたったのだが、「悪いことをしてはいけない」という強迫観念に取り憑かれたのである。食事に於いては、「残してはいけない」と思うあまり、皿に落ちたパンくず1つ、お椀にこびりついた飯粒一つ、残すのを怖がり、 きれいにとれないと言っては泣いた。大皿のおかずに箸を付け、汚したのではないかと不安になって泣いた。
 私は目が点になった。行儀にうるさい家ならともかく、何でまた、そんなことを思いついて勝手に暗くなっているのか。
 泣きっ面の子どもと一緒の食事が楽しいわけがない。皿を舐めてまで、きれいに食べようとする子どもに「かえって行儀が悪いことだ」と諭しながら、悩ましく切ない時を過ごした。味なんて分からなかった。

 幸い、学級担任の献身的なご助力が得られ、心も体も外向きな生活を心がけることによって、子どもは次第に元通りになっていった。今では、心身共にパワーアップして、生意気なことこの上ない。
「おなかいっぱいで、もう食べられないや、ごめんね〜〜〜」
と明るく言ってのける子どもを見ると、あの時期はいったい、何だったのだろうかと思う。
 子どもは、学校での給食指導は実践しているらしく、なるべく残さないようにしていると言う。
 「残さずに食べてもらって、給食センターの人も、栄養士さんも、幸せだね。」と私は言う。

 子どもが食事に集中し、美味しそうによく食べるのを見るのは、親として非常に幸福なことだとしみじみ思う。そうでないお子さんをお持ちの親御さんは、さぞや辛かろうと思いやられる。
 食事のしつけに、以前より寛容になった私なのだった。

教訓

 食事は楽しく!!

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