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第70話 おさかな天国

 転居した。やって来たのは杜の都。魚の美味しいところである。近くのスーパーでも生協でも商店でも、魚の種類の豊富さ、鮮度、安さに驚かされる。

 美味しい魚はいい。手間暇かけなくても、美味しい。むしろ、余計な手間をかけない方が美味しい。刺身、塩焼き、漬け焼き、照り焼き。塩、醤油、味噌、酒、みりんなどの伝統的調味料は魚を食べるためにあったのだとさえ思う。

 いきおい、献立は魚がメインの和食が多くなる。おさまらないのは子どもである。「今日のご飯、何?」「お魚〜!」という日が続くと、くつくつくつくつ・・・とのどを鳴らし、ハムスター式・不満の表明をするようになった。仕方がない、たまにはイタリアンにでもしてみるか。

 そうは言っても、出かけると目に付くのが安い魚介類。小振りなイカが5杯入って、150円!これを使わない手はない。イカのトマト煮・バターライス詰めとしゃれ込もう!

 これは是非、子どもと一緒に作りたい。簡単で楽しい作業が多い。まずはイカ。うちの子どもは、イカの下拵えが好きである。頭の先を切り、軟骨を抜き、わたや墨が破れ出ぬよう、足を持ってそ〜〜っと引っ張り、内蔵を抜き出す。上手に出来たら目の下くらいで切り取り、くちばしをえぐり取り、足の吸盤をこそげ取る。ねっとりぬるぬるするイカをものともせず、さわりまくれる子どもは、偉いと思う。
 次に、残りご飯にプロセスチーズのみじん切り、パセリのみじん切り、バター、クレージーソルトを加え混ぜ、バターライスを作る。これをイカの胴体に詰め、楊子で止める。
 子どもが作業している間に私はトマトソース作り。オリーブオイルにニンニクのスライスを入れ、熱する。ニンニクがきつね色になったら、タマネギのスライスを入れ軽く炒め、イタリアントマトの水煮を手で潰しつつ入れ、ベイリーフと共に煮詰める。ミートソースほどの状態になればクレージーソルトで味を付ける。
 これにライスを詰めたイカとげそを入れ、軽く火を通す。イカから水が出て、ソースが褐色を帯びる。クレージーソルトとコショウで味を整え、白いお皿に二つに輪切りにしたイカを盛りつけ、緑の野菜と深紅のトマトソースをたっぷり添えれば、見目麗しくボリュームたっぷりのイタリアンの出来上がりである。
「うまそ〜〜〜!!!」
 ついついワインの栓を開け、子どもと乾杯である。イカは柔らかく肉厚で、甘い。バターライスのチーズとトマトソースがマッチする。甘み、酸味、こく。海の幸と野菜、乳製品の、この絶妙なハーモニー!!美味しい素材は手をかけてもやっぱり美味しいのだと実感した。
 スローフードに帰ろう・・・唐突にそんなフレーズの浮かんだ夜であった。

教訓

 食べよう、地のもの、旬のもの。

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