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第71話 アボカドの食べ方

 親子だとすぐ分かる同じ体型の父親は、田舎で果樹栽培をやっている。20年以上も前の事であるが、突然アボカドを買って来た。ゴツゴツの黒緑色、大きな種の回りに、薄緑色の洋ナシのようなネットリした果肉があるこの果物というか野菜。今でこそスーパーでも見かけるが、20数年前に買って来たのであるから、新し物好きというか、珍し物好きというか、とにかく好奇心旺盛である。

 アボカドを果物として買って来たからには、まず生で食べてみた。だけんどもしかし、ネットリと青くさく、甘みとか酸味とかは全くない。ありていに言うと、とてもマズイ。マズイとみるや父親は、いきなり醤油で煮始めた。鰹節とかコンブとかのダシを使ったかどうかは忘れてしまったが、結果はご想像の通り。アボカドはこのようにして我が家の歴史から姿を消していった。

 さて、最近になって、仕事も英語もできる純日本風の部下に、アボカドを熱心に支持するやつが現れた。お酒を飲んだ帰り道、とあるハンバーガー屋の前を通りかかったところ、ここのアボカドバーガーがうまいというのだ。しかもこのハンバーガー屋はハワイに本店がうんぬんと、そのありがたみを熱く語る。さらには、カリフォルニアロールという、アボカド、マヨネーズ、マグロの手巻き寿司もうまいのだとたたみかける。やり手の化粧品販売員のような縦横無尽な説得である。
 そういえば、カリフォルニアロールという単語は時々耳にするなあ、と思いながら、我が家のアボカドの歴史をかくかくしかじか話すと、
「それは、アボカド嫌いになる典型的なパターンだ」
と、とどめを刺されてしまった。

 自分はアボカドを正当に扱ってこなかったのかという、後ろめたさも少しあって、家に帰っていきさつをパートナーに話すと、実はパートナーもアボカドをまともに食べたことがないと言う。なあんだ。しかも、ドリアンと並ぶいかがわしい果物かナッツの類と記憶しているようだ。幸いにして私のような不当な扱いはしてこなかったらしい。それどころか、次の日にはさっそくカリフォルニアロールの準備をしてくれた。アボカドをワサビ醤油で食べると、トロマグロのような味になると言う怪情報まで仕入れている。またしてもアボカドは我が家の歴史から姿を消すのではないかと、不安がよぎる。
 目の前にずらりと並ぶアボカド、カニカマボコ、マヨネーズ、レタス、海苔に酢飯。レタスとアボカドだけが、違和感を醸し出す。とにもかくにも、海苔に酢飯やらアボカドやらカニカマやらをのせ、カリフォルニアロールを豪快に巻いては、あんぐりと頬ばる。
 うんまい!

 マヨネーズの酸味が効いて青くささがない。アボカドだけ巻きとか、カニカマだけ巻きも食べてみたが、今ひとつ爽快さに欠ける。やはりこれらの組み合わせというか、ハーモニーが爽やかな味を醸し出しているのだ。仕事の出来る和風の部下の話は、本当であった。

 物にはおいしい食べ方がちゃんとある。それを知らずにマズイというのは、食わず嫌いと同じなのかも知れない。これまでのアボカドへの仕打ち、取り返すことはできない。せめて、これからは心を入れ替えてアボカドと接することにしよう。

 さて、ワサビ醤油で食べると、トロマグロの味がすると言うが、本当だろうか? アボカドを海苔で巻いてっと・・・。この好奇心は、父親に似たのだろうか。

パートナーのひとこと

 種を植えるのはやめてくれ!

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