トップページへ

第77話 幸せのリクエスト

 毎年決まって子どもの誕生日がやってくる。そしてまた、ホームパーティーで何を作るかと頭を悩ます時がやってくる。これは、とても贅沢な悩みである。多少の波風はあっても、子どもが順調に成長し、ホームパーティーができるくらいに生活が安定しているということなのだ。

 それに最近、変化が現れた。子どもからメニューのリクエストが出るようになった。海苔のスープ。
 初めて食べた時に、よほど感動したらしい。一番のお気に入りスープになってしまった。ところが、こいつも贅沢な悩みの種である。
 誕生日。ケーキにロウソクを立て、薄暗い中でハッピーバースデーを歌い終わって吹き消す、親はワインで乾杯。こういう情景の中にどうやって、ナンプラーとゴマ油・海苔のアジア的香りが爆発的に漂う海苔のスープを組み込めばよいというのか。

 リクエストはこれにとどまらない。シフォンケーキ。
 これも初めて作った時にふわふわに成功したものだから、感動があったようだ。ところがこいつも、贅沢悩みの種の2倍なのだ。
 シフォンケーキはドーナツ形のケーキで、これを扇形に切り分けて出す。誕生日。ケーキにロウソクを立てようにも、とても立てづらいのだ。しかも、わざわざ膨らみにくいチョコレートシフォンを畳みかけるようにリクエストする。ふわふわでえ、しっとりしててえ、なんてニカニカしながら挑戦的な注文まで付けてくれる。まったく。

 そこまで言われると、親のメンツもある。取り合わせがどうとかはおいといて、とことん子どもの好きな料理にしてみたい。メインの料理を探しに、料理本を眺める。お肉系の甘辛旨味、豪快さとお手軽さ、牛タンのデミグラスシチューに決まりである。もちろん、タコのサラダイタリアンドレッシング添えも欠かせない。一部の隙もない、完璧な子ども誕生日料理である。

 と、その時。子どもが言い出す。えっとお、チョコレートシフォンケーキじゃなくてもいいや。おや〜? モンブランシフォンケーキがいい。おやや〜? 贅沢な悩みかもしれないが、モンブランに載せるマロンクリームだって、絞り袋から絞りだすのに骨が折れるのである。でも、子どもの頭は、マロンクリームで満たされ、モンブランがぐるぐると回っているのである。
 パートナーとふたりで、マロンペーストをスーパーで探す。ない。栗の甘露煮を買ってきては、潰して牛乳でのばす。口当たりを良くするために、裏ごししてあげる。なんでまあ、ここまでしてあげないといけないのかとも思う。

浮かれものイメージ
うかれもののイメージ図

 それでも、海苔のスープを口にしては美味しいと喜び、牛タンをつついては柔らかいと驚き、タコを噛みしめてはうまいと顔をほころばせ、モンブランシフォンケーキをほおばっては目をきらきらさせる。
 挑戦的な注文をいつの間にかひっくり返したことなどすっかり忘れ、幸せそうな子どもの顔を眺めながら、パートナーとふたりで幸せにワインを飲みながら、親ばかにどっぷりとひたるのである。

パートナーのひとこと

 トータルでオッケー かなあ。

トップページへCopyright (C) 2003 k-ogasa. All Rights Reserved.

たぶん12万