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第79話 煮玉子の謎

 ゆで玉子は、水に玉子をポチャリと入れて火にかけて煮るだけという、とても簡単なものであるが、食べては今ひとつ物悲しい。ツルツルプリッとした白身はともかく、パサパサの黄身は何とも、こう、う〜ん、物悲しい。もっとしっとりした感じが欲しい。
 これを劇的なまでに変身させたのが煮玉子、ラーメンのトッピングとして登場するやつである。白身のツルプリ感はそのままに、黄身をパサパサどころかトロリとジューシー、一般的にはチャーシューと同じ甘辛醤油味までしみ込ませてしまったのだから、驚きである。
 簡単に作り方を紹介すると、生温かい漬け汁に、まだ生温かいゆで玉子をつけ込んで一晩寝かせるという単純なものである。

 この煮玉子にはふたつの謎がある。
 ひとつめはトロリの黄身。煮玉子が劇的変身なのは、黄身がトロリとしているからなのだが、もうひとつ別の劇的変身に温泉玉子がある。ところが、温泉玉子は固まった黄身にトロリ白身、黄身の固まる温度は白身よりも10度くらい低いのだから、温泉玉子は理屈に合っている。煮玉子は逆。注射器で味付けトロリ液を中に注入しているのではないか、とずっと考えてきたものだが、煮玉子用注射器および替え針セットなんてものは、スーパーにも売っていない。う〜む。
 ふたつめは殻むき。ゆで玉子の殻をきれいにむくには、ゆでた玉子を冷水で完全に冷やす。だけんどもしかし、それでは漬け汁の味がしみ込みにくい。生温かいところから冷める時にしみ込むのだ。やはり、煮玉子用注射器なのか。

 注射器は手に入らないので、注射器なしで作ることにする。
 まず漬け汁。お酒に醤油がベースで、風味付けのための秘伝の材料が入る。唐辛子・八角から、名前も知らない怪しい材料まで。これで味が決まる。ラーメン屋さんなら秘伝のチャーシューの煮汁に入れれば簡単なのだが、さて我が家はというと、秘かに伝わっているものも特にないので、お手軽にそばつゆを使うことにした。細かいことは気にしない。ざるそばより少し濃い目のつゆに、ニンニク・ショウガ・唐辛子を入れてグツグツッと煮る。ニンニクたちの風味が溶けだして、香ばしい匂いが漂って来る。ピリッと辛みも効いたうまい味である。火を止めて、玉子が入るのを待つ。

 つぎはゆで玉子。黄身をトロリにするには、沸騰後5〜6分で取り出す。冷水に入れ、殻をむく。だけんどもしか〜し、じぇんじぇんきれいにむけない。むくたびに白身がはがれてきてボコボコ、むけばむくほどボロボロになってしまう。おまけの涙までポロポロ出てきそうだ。それでも生温かいうちに漬け汁に漬けなければならない。泣いている時間はない。すぐ漬け汁に投入、冷蔵庫で就寝して頂く。

 翌日。昼食は当然ラーメン、メインの具はもちろん煮玉子。冷蔵庫からお目覚め頂き、切ってトロリをラーメンに載せて、さっそく頂く。あむっ。
 うんまい。
 思ったより唐辛子の辛さは出ていないが、十二分にしみ込んだ香ばしいそばつゆの味と香りが、ツルプリ白身とトロリ黄身の食感と相まって、美味すぎる。ほ〜っ!

 ラーメンで体も温まってきたところで、再び謎が頭によみがえる。なぜ黄身が先に固まらないのか。なぜ殻がきれいにむけないのか。
 調べていくうちに、黄身の方は、どうやら外側から少しずつ白身が固まっていき、黄身が固まる手前で止める、その時間が沸騰後5〜6分だと分かった。理屈が分かれば謎でもなんでもない。コロンブスの時代からそうなのである。がはははは。
 だけんどもしかし、殻の方は、ぶ〜む・・・ちゅうしゃき。

パートナーのひとこと

 煮玉子じゃなくて、漬け玉子と呼べ!

ひとことへの反論

 ちゃんと煮てあるから!

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