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第80話 牛すじ肉の煮込み

 朝から予定のない平日は、煮込み料理に最適である。おでんの大根、モツ煮込み、シチュー。今日は牛すじ肉を火にかけている。100グラム48円也の牛すじ肉だが、スーパーでは滅多に手に入らない。肉屋の店頭で見つけたときには、すかさずゲットして、冷凍保存。時、至るのを待つが良い。一般に、クズ肉と思われているすじ肉である。しかし、手を掛けて煮込むと、ほっぺが落ちるほど美味いのだ。

 まず、大鍋に水と牛すじ肉を入れ、火にかける。沸騰したら、ざるにあげ、余分な灰汁と脂を捨てる。鍋についた灰汁をきれいに洗い流して、また水を張り、同様に茹でこぼすこと計3回。その後、新しい水にショウガとニンニクのスライスを加え、すじ肉をとろ火でゆっくりと煮込む。およそ2時間経過、固かった筋が、もちもちでぷるんぷるんのグミ状になる。これこそ、女性の美容には欠かせないコラーゲンであり、すじ肉の美味さの正体なのである。
 すじ肉が充分に煮えたところへタマネギのスライス、黒砂糖、鷹の爪を入れ、しばらく煮て甘みをしみこませてから、醤油を加えて煮汁が少なくなるまで煮詰めていく。
 これは、ものまねタレントのG氏がテレビで紹介していたレシピだそうで、氏は、酒の肴として作るという。その場合、甘さを控えて、ニンニク、鷹の爪を多めにすると、ぴりっとパンチの効いた味わいで、辛口の日本酒に良く合い、大変美味い。また、煮汁を多めにして甘めにすれば、牛すじ丼となる。煮込みすぎ、かき混ぜすぎると肉がとろけてしまうので、筋がグミ状になるくらいが目安である。
 
 煮込み料理は編み物と似ている。
材料費が安く済むが、時間と手間がかかる。しかし、私は時間を掛けたこうしたプロセスが好きである。さも愛情をたっぷり込めたかのような錯覚に浸れる、究極の自己満足の世界なのである。

 帰宅した子どもが、キッチンから漂う甘辛い香りを嗅ぎつけ、鍋を覗く。そこに好物を発見して、いても立ってもいられずに喜びのダンスを踊り出す子ども。私は、押しつけがましいと思いつつも「朝からじ〜〜〜〜〜っくりと煮込んだんだよ」と追い打ちを掛けずには、いられない。素直な子どもはほっぺにチュウなどして感激を表す。こうやって喜んでくれる人がいるから、作れる料理だと、つくづく思う。料理と言っても実際には殆ど、水と火の番をしているだけなのだが、そこは知らぬが花・・・なのである。

教訓

 着てはもらえぬセーターは、編めない。

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