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第81話 回想付きチーズケーキ

 小学校1年生、初めての小学校、初めての給食、何が出てくるのかとドキドキして待っていた。豆パン、牛乳、バナナ、6Pチーズ。薄暗い木造校舎で、全員黒板の方を向いた、授業の時そのままに座って食べていた。今から思うと、大したことのないメニューだし、4〜5人グループで机を寄せ合うのが普通なのに、前を向いたままというのも異様だ。でも、その時は初めての給食に、とてもわくわくしていたのであった。
 6Pチーズは、赤いテープでアルミホイルの包装を切って開けるプロセスチーズで、その後何回も給食に登場したものだった。そして、小学校の頃から、チーズが好きな人と嫌いな人がいたように思う。

 パートナーはマニアではないが、わりとチーズは好きな方で、クリームチーズ・カマンベールなど甘めのクリーミーなタイプ、とりわけラム酒入りのものが好みだ。そんなパートナーのために、デパートの食品売り場なんかに寄っては、お酒のつまみにちょこちょこと買ってやろうなんて思ってしまう。私は積極的には食べないが、時々パートナーに付き合って食べる。
 そんな私も、チーズケーキは大好き・別格・別腹である。そこには、あこがれのようなものがある。子どもの頃からケーキと言えば、イチゴショートかモンブランで、なかなか食べるチャンスがなかったし、塩味のチーズでどうして甘いケーキが作れるのだろうかという好奇心もあった。
 学生の頃にケーキ屋でアルバイトしていた時でさえ、食べられなかったように思う。街でも1、2の美味しいお店で、終わった時にケーキがもらえるとか、ケーキ大好きの女の先輩に言われて始めたが、毎日イチゴ洗いだの、バケツいっぱいの生クリーム作りだのばかり。一度だけ、オーブンから出てきたばかりのチーズケーキを見た時には、感動した。ひよこ色、湯気と共に甘酸っぱい香りが立ち昇る。切れ端でも食べさせてもらえないかと思ったが、だめだった。

 社会人になってからは、食べる機会も増えた。舌を出した女の子のキャラクターで有名なお菓子メーカーがやっているケーキ屋さんで、チーズケーキ特集と称して5種類のチーズケーキを出した時には、不覚にも全種類を買ってきて、舌鼓をうちながらパートナーと食べたものだ。

 チーズケーキにもいろいろな種類がものがあるが、ふわりとしたチーズケーキを作るのは、結構難しい。重くネットリしたクリームチーズを入れるとどうしても重くなり、入れる量を減らすと、チーズの風味がなくなってしまう。とにかく空気をたくさん混ぜ込まなくてはならないふわふわかるかるのケーキは憧れである。そんなおり、「泡立て器だと膨らみすぎるので、混ぜるときはゴムベラで」なんていうレシピを見つけると、迷わず泡立て器を手に取ってしまう。

 クリームチーズをサイコロくらいに切ったあと、泡立て器で練る。なかなか柔らかくならない。しかも、チーズが泡立て器の中に入ってしまい、マラカスのようだ。めげずに湯煎しながら練る。なんとなくトロッとしてきたところで、グラニュー糖、塩、玉子、レモン汁を加えて練り続け、小麦粉をふるいながら入れて混ぜる。あとは型に入れて焼くだけである。
 不思議なことに、湯煎して焼くとある。水も沸騰する220度のオーブンの中に水というのもしっくりこないが、確かにアルバイトの時に見たチーズケーキも、湯気が出ていたなあと目を細める。

 さて、焼き上がり。湯気が立ち、ひよこ色からきつね色。ふくらみも程良く期待通り。甘酸っぱくチーズの香りもおいしそうである。
 熱いうちにアプリコットジャムを上に塗る。冷めるのを待つあいだに潰れてしまった。ただ、とてもしっとりしたベイクドチーズケーキに仕上がった。

 みんなで切り分けて食べると、想像したとおりのチーズの風味、酸味、甘さ加減。色合い。これよこれ。これがチーズ風味豊かなベイクドチーズケーキなのよ。ややしっとり感が強いが、そこはまあ目をつぶる。

 泡立て器と言わず、ハンドミキサーでまぜればよかったと思いながらも、昔なつかしいノスタルジー回想付きのチーズケーキ作りであった。

パートナーのひとこと

 チーズケーキ好き。山羊のチーズはきらい。しっこのかまりしる。

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