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第85話 美味しかったら美味しい顔をしよう

家族に大人気の青椒牛肉絲
チンジャオロースー
本当はこっちがメインだった麻婆豆腐
マーボードウフ
 パートナーの実家に帰省する。パートナーのお義母さんにとっては、子供夫婦が帰ってくるとなると、もてなしの準備もそれは大変であるが、反面、楽しみでもあるらしい。わが家ではあげ物をしない。パートナーの実家に帰省する。パートナーのお義母さんにとっては、子供夫婦が帰ってくるとなると、もてなしの準備もそれは大変であるが、反面、楽しみでもあるらしい。こんなことでもなければ、白髪の増えた老夫婦だけではとても食べ切れない手作りケーキ、その腕を振るう絶好のチャンス、ということ、らしい。しかもこのホームページのお話を読んでは、
「あなたが作れるならば、私の方がもっとうまく作れるはず!」
と、いやに挑戦的なお義母さんだったりする。
 挑戦はともかく、我らケーキ大好き一家は、お義母さんの制作上のポイントなどを聞きながら、お手製ケーキを口に運びつつ、いつも上手だなあ、美味しいなあと、単純に喜ぶ。
「あなた達は、美味しい美味しいと言って食べてくれるから、作った甲斐があるねえ」
と、ニコニコとメガネ越しに丸い笑顔を見せる。

 さて、ある日のこと。
 パートナーが麻婆豆腐を食べたい、しかも、本格的な作り方は豆腐をお湯にしばらく入れて半熟にするのだとかと、ご託を並べる。麻婆豆腐なんて、市販の本格中華合わせ調味料を使えば、お手軽に出来がるではないか。それどころか、普段はこれが本格だと思っているくらいだ。だけんどもしかし、本当に本格なのだろうか。ふと、そんな思いがよぎる。
 さっそく、本格中国料理本を広げてみる。小間切れ豆腐に調味料をぶっかけるだけとは、違っていた。へなちょこ料理人の血が沸騰する。

 トロリとした合わせ調味料には、醤油と辛い豆板醤、それにトリガラスープが入っている。挽肉には醤油となんと甘味噌甜麺醤(テンメンジャン)。2つの味付けが、麻婆豆腐の甘辛旨味を作りだしているのである。挽肉を炒めて甜麺醤で下味を付け、豆腐を加えて合わせ調味料をかける。これらを合わせ、ジャジャジャッと操る中華鍋も小気味よい。ふふふ。ついでの勢い、甜麺醤・ピーマン・牛肉で青椒牛肉絲なんかも作っちゃったりなんかする。

 パートナーの反応やいかに。もちろん、絶品の麻婆豆腐に舌鼓をうちつつ、美味い美味いの連発に違いない。
「むう!」
いつもの市販品とは違うことが、すぐに分かったらしい。
「美味い美味い」
ふふふ。
「麻婆も美味いけど、青椒牛肉絲が美味い」
あらららあ、まいっか。そのうちお酒も進み、デザートでお腹も十二分に膨れてくる。満足そうな家族の顔。美味い美味いと喜ぶ顔、満腹・満足な顔。たとえピーマン嫌いの子供にまで、自信作の麻婆豆腐より青椒牛肉絲の方が美味しいと言われても、この顔が見たくて作っているようなものだから、充分に幸せである。

 私の実家に帰省する。親は、
「孫の顔が見たいんだ。お前の顔などは見ても見なくてもいい」
などと、子供を子供とも思わない発言をする。だけんどもしかし、こんな言い草とは裏腹に、普段は作らない私の好物のおいなりさんを山のように作って待っていてくれる。実家でしか食べられない懐かしい味である「けの汁」なる津軽の七草粥をさりげなく出してくれたりする。
 美味しい美味しいと言う子供の顔、孫の顔、家族の顔、これが料理を作る原動力、なのかもね。

パートナーのひとこと

 なのかもね。

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