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第92話 命の鮭はらこ飯

 魚卵は高い。値段も高い。コレステロール値も高い。しかし美味い。

 仙台にやってきて、とあるコンビニで「鮭はらこ飯」というミニ弁当に出会った。鮭入り炊き込みご飯の上にいくらが載っている。仙南の亘理(わたり)町の名物だそうだ。
秋鮭があがる時期になると近隣のスーパーではこぞって生鮭と「はらこ」(生の鮭の卵)を並べ、「作ってみよう、亘理町名物、はらこ飯!!」と扇り立てる。関東地方のスーパーで「はらこ」など見たことはない。仙台にいるうちに一度は作ってみずばなるまい。早速、レシピを調べた。

 作り方は至って簡単だ。コツがいるのは「はらこ」に半熟に火を通すことくらい。レシピ片手にスーパーに行き、200g程入った「はらこ」の小分けパックと生鮭の切り身二切れを買ってきた。材料費は500円。これで鮭、「はらこ」ともレシピの分量の4倍相当である。半端に材料を残しても仕方がない。具だくさんの豪勢な「はらこ飯」をたらふく食べてやろうじゃあないか。
 鮭はらこ飯の作り方。
 米2カップをといで普通の水加減にし、40cc分の水を取っておく。酒、醤油、みりんの出汁を煮立て、「はらこ」を入れてかきまぜたら火を止める。網じゃくしで「はらこ」を取り出して乾かないようにラップする。これで「はらこ」に味がつき、かつ半熟に火が通った。次に、「はらこ」を取った汁に一口大に切った鮭の切り身を入れ、火を通す。そして鮭も汁から取りだしてバットに広げておく。残った煮汁40ccを米に加えて炊きあげる。ご飯が炊けたら、鮭を混ぜ込み、お椀によそって「はらこ」を一面に、これでもかと言うくらいに盛りつける。
 
 炊き立ての温かいご飯から鮭の香りが立ち上る。4倍量の鮭が入ったが思ったよりも臭みがなく、噛みしめるほどに味が出る。そして「はらこ」の粒感。口の中で潰れたときにとろりと広がる脂の甘さ。味。「うまい・・・」
 そして感じる一抹の哀しさ。漁師に捕まえられなければ母鮭は命の全てを懸けて産卵し、ボロボロになって死んでいくのだ。そうして命を繋いでいく卵達を、今、私は食べている。なんと罪深いことであろうか。
「命を頂いている・・・」
 生命の源になる卵の栄養価の高さを「美味」と感じる野生を持ちながら、罪を覚える人間の業の深さに思いを馳せる。そうして割り切れない想いを日本酒で飲み下す、弱虫な私なのであった。

教訓

 罪はときに甘美なものである。

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