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第94話 あっぱれ、縄文人 第2回 縄文人登場編(全3回)

 山の中の小学校の家庭科室。100人を超える人数のご飯と定義(じょうげ)鍋を準備しなければならない。経験者は誰もいない。
 大鍋に入る大量の野菜類を前にして・・・包丁がない、ザルもない。今から黒曜石の石器を準備する時間もない。家庭科室内の捜索が始まった。椅子取りゲームよろしく、包丁を手にすれば切り出し係に、ザルを手にすれば洗い係にありつける。早くも包丁を発見した人々が、切り出しに取りかかっている。

 椅子取りゲームに負けた私は、古代米の米研ぎ係となった。ひと鍋に白米30合と古代米20合。とんでもない量のご飯、これを3鍋炊くというのだから、合計・・・ええと・・・とにかくたくさんである。ともあれ、米を研がねばご飯にありつけない。この鍋に10合分入れたから、あといくらだっけと、小学校低学年レベルの足し算に苦しみながらも、緻密に白米30合と古代米20合を入れていく。水加減も、ならしたお米に手を広げて置き、くるぶしまででOKと、実に緻密である。そういえば、古代人は米を研いだのだろうか。
 豆腐と、定義鍋の命名の由来となる仙台市定義山名物の三角揚げが、切り刻まれ積み上がる。古代人が三角揚げを食べたとは思えないが、その辺は目をつぶる。白菜大雪山、こんにゃく岩山連峰など、順当に山並みができていく。とりあえず、仕込みは整ったようだ。

 土器焼きの巨大焚き火とは別に、かまどを作る。古代人はガスなど使わないので、調理はかまどで焚き火となる。焚き火ヘタの横好きな私は、かまど係をさっさと引き受ける。今度は乗り遅れない。第3かまど担当で、もう一人縄文人も担当である。この縄文人、とても寡黙である。村をあげてのお祭りだというのに、一言もしゃべらない。数々の古代体験を積んできた達人に違いないのだから、ここは、ドンとお任せしたい。
 そんな達人を前にして失礼かもしれないが、マッチでちゃちゃっと焚き付けに火をつける。縄文人も特にこだわりはないらしく、目をつぶっている。

 なかなか燃え上がらない。焚き付け藁はよく燃えるが、なかなか薪に火が移らない。少し燃えたかと思うと、下火の繰り返し。こんな時に自分の人生の浮き沈みと比べたりしてはいけない。不完全燃焼を示す白い煙が、もうもうと上がる。縄文人を、煙に巻いて、ゲホゲホとむせび泣かしてしまう。あくまで風向きのせいなので、目をつぶってじっと耐えて頂きたい。

 他に4つもかまどが並ぶが、状況は似たり寄ったり燃えたり消えたり。そのうち別の縄文人が現れ、地面の方からあおげの、薪に隙間を作れのと指示して回る。確かに良く燃え始めた。他のかまどにも火のついた薪を分け、順調に燃えだした。かまど係縄文人は、どうも火おこし以外の達人らしい。

 かまどの大鍋は、1時間たっても沸騰する気配がない。お祭りの鍋という物は、グツグツと煮え、もうもうと湯気が立ち昇り、わらわらと人が群がる、そんな物ではないのか。だけんどもしかし、芋はカリカリ、白菜はシャキシャキ、なさけな〜い湯気がゆらゆらっと立つだけ・・・。かまど係の腕も悪いが、野菜山脈が、次から次へと投入されては、沸騰したくてもできない。このままでは、何時に出来上がるか分からない。出来上がりを夢見て、寡黙な縄文人共々、黙々と火を燃やし、モクモクと煙に巻かれる。なんだか、避難生活のようだ。

 しばらくすると、定義鍋はまだでも、古代米鍋の方からいい匂いが立ち昇り始めた。古代米ご飯といえども、蓋を取って見るわけには行かないが、今しばらくの辛抱だ。

第3回 片付け編に続く。

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