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第96話 はじめての船釣り体験

 「船に乗ろう!」
 堤防でのサビキ釣りで、これ以上ないほどの小物釣りが続き、大物への憧れは如何ともし難くなっていた。「ぐん」とアタリを感じ、「ぐいいん」と引きを感じ、折れんばかりにしなる竿を宥めながらリールをまいて、魚との駆け引きを充分に味わい、観念した大物を「タモ」でもって引き上げたい。

 そうは言っても初心者。いきなり釣り船をチャーターし、沖合に出るのは怖い。ネットで調べて、ファミリー向けの船釣り体験に申し込む。民宿のおじちゃんが船を出して、釣りの指導もしてくれるという。仕掛けは「おもり15号、針13号」である。そんな大きな針は見たこともない。大物への夢が膨らむ。
「家族3人で食べきれないほど大漁だったらどうしよう!?」
 浮かれる私に冷めた目を向けるパートナーと、憧れはあるものの現実的な娘を率い、早朝6時に海を目指して出発だ。レッツゴー!

  7時過ぎに奥松島、大浜に到着。朝の水色の空を写して穏やかな海がキラキラと光る。
「よろしくお願いしま〜す」
 救命胴衣を付けて、釣り船に乗り込む。船が風を切って走り、景色を楽しむ間もなくポイントに到着。
「ここはカレイがいます。イソメを付けて、おもりが底に着いたら竿をちょんちょんと動かしてください」
「は〜い」
 仕掛けとエサを付けて、釣り開始。ゆ〜らゆらと揺れる小舟の上での作業は目眩を起こしているようだ。はじめにおじさんの竿にアタリが来た。大人の手のひら大のカレイである。
「ほら、カレイいますから、どんどん釣ってください」
とおじさんは言う。
「釣りたいのはやまやまなんだけど・・・」
 苦笑しながら竿を揺する。と、娘にアタリが来た。カレイだ! 名の知れた魚を釣り上げるとやっぱり嬉しい!
「お〜〜〜釣れたあ」
 続いてパートナーの針にカレイが食いついた。が、仕掛けが外れてばらしてしまった。おじさんがアイナメを釣る。さらに「タモ」が必要な大物カレイをゲットする。

「・・・来ないなあ」
 同じポイントで同じエサ、それでも釣れないのはやはり腕の差なのか、と寂しく水面を眺めていると、だんだん気分が悪くなってきた。
「まずい、船酔いだ」
 娘を見ると、目の下にクマが出来、表情が死んでいる。
「遠くを見るんだ、深呼吸するんだ!」
 娘より先に倒れるわけには行かない。必死でこみ上げるものを抑えながら巻き上げるとリールが重い。
「あら」
 カレイが食いついている。
「やった、船釣りでカレイを釣った!」
 もう思い残すことはない・・・。

 丁度、エサがなくなったので一旦、岸に戻り、エサを補充することになった。地面に降りても足下が揺れる。
「もういい・・・」
 ギブアップした私と娘は、船着き場から投げ釣りをしてパートナーの「大物」を待つことにした。「えいっ」と竿を振り、おもりの落下地点からくりくりと糸を引き寄せる。すると、魚がかかっている。ハゼだ。
「あれ? ここでも釣れるぞ?」
 娘もアイナメ、ハゼ、小さなカレイを釣った。私の釣ったカレイはと言えば、船で釣ったものよりもでかかった。
「なんだよ、も〜〜〜」
 しばらくして船が戻ってきた。
「大物は?」
 パートナーは首を横に振る。結局、最初にバラして以来、パートナーの竿には二度とアタリが来なかったらしい。
「こっちは釣れたよ! ほれほれ」「・・・げろげろ」

 その日の夕食はカレイの煮付け、カレイとハゼ、アイナメの唐揚げ、アイナメの刺身と新鮮なお魚三昧である。やっぱり釣りに行ったらこうでなくっちゃ。
「食べられる魚が釣れると楽しいよねえ!」
と娘とはしゃぎながら、ふとパートナーの顔色を伺う。
「・・・た、楽しかった?」

教訓

 釣れる場所なら魚は釣れる。

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