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第106話 津軽旅行記 第1回 斜陽館篇(全2回)

 年一度、正月にだけ帰省している。親不孝者である。その年はたまたま親孝行で、夏に帰省した。冬にはなかなか行けない青森県津軽地方の名所・旧跡をパートナーと訪れてやろうと考えた。ジリジリと暑い夏の日、津軽出身の文豪、太宰治の生家である斜陽館に向けて出発したのだった。

 青森県五所川原市(旧金木町)の斜陽館に到着した時には、夏休みということもあり、たくさんの観光客がいた。斜陽館は、黒くなった板張りに木枠のガラス窓、少しでこぼこした土間、土蔵があり、昔の地主らしい大きなお屋敷である。夜には薄暗いだろうこの家での記憶が、人間失格などの傑作を生み出したのである。ゆかりの展示物などを見て回りながら感じたことは、代々百姓である私の実家と基本的な作りが同じであるということだ。部屋の外側を廊下が囲み、縁側のようになっているところや、土間があること、土蔵があることなど、共通点だらけである。違いといえば、部屋数が3倍あるとか、階段の幅が3倍だとか、土蔵が2倍だとか、使っている材料が高級品だとか、洋間のありなしなどの、ちょっとしたところだけである。
 太宰も私も、そんなに違わないなという想いを胸に、すぐ近くの津軽三味線会館で、津軽三味線のミニライブを聴く。バチを叩き付けるように弾く三味線の、あの音の迫力は、ライブならではのもの。ちょっと小太りの東京出身者の演奏だった点がやや気になるが、一度聴いてみることをお勧めする。すっかり津軽三味線を堪能した後、昼食にする。これまた近くに、津軽地方の郷土料理も出してくれるレストランがあるので、そこのメニューを眺める。

 津軽地方の郷土料理といえば、私の中では、褻(け)の汁・ねりこみ・貝焼き味噌である。
 褻の汁は、大鍋に大根・こんにゃく・枝豆・高野豆腐などを細かく切って入れ、昆布のだしと味噌で味付けする。あまり旨くはない、素朴なごった煮である。褻(け)は、晴れ、すなわち、晴れがましい・特別な、の対義語で、普通の・何でもないの意味。晴れがましいお正月が終わり、普通の日に戻る時に食べる七草粥的な料理だと思う。
 ねりこみは、サツマイモや人参・油揚げなどを煮て、甘辛いというか、甘いあんを絡めたもので、褻の汁とは逆に、お祝いの時に出される晴れの料理である。甘いので子供には好評だが、それで酒を飲めと言われる大人には、ちと辛い料理である。

 第2回 貝焼き味噌編に続く。

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