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第107話 津軽旅行記 第2回 貝焼き味噌編(全2回)

 さて、貝焼き味噌。メニューには、卓上しちりんに、でかいホタテ貝の貝殻がのり、中にクリーム色の半固形物が入っていた。パートナーが、なにやらぐっと引かれたらしい。

お土産に売っていた
貝焼き味噌セット
お土産に売っていた貝焼き味噌セット

「どんな料理?」
と聞くので、
「ホントに頼むの?」
と、答える。しつこく
「ねえ、どんなの?」
と聞かれて、
「食べてみれば分かる。」
と、親切に答えた。

 パートナーの頭の中テーブルには、ホタテ貝の巨大貝柱にホワイトソースをかけてオーブンでこんがり焼いた、バターも香ばしいグラタンかコキールのようなものを、ウェイターが運んできたらしい。しかも、頭の中シェフは、マッシュポテトを絞り袋から絞ったこじゃれた飾り付けまでしてくれたらしい。ちなにも、それはメニューにはない。
 貝焼き味噌定食一人前ご注文。私は・・・ざるそばだったかなぁ、郷土料理でなかったことだけは確かだ。

 レストランには、結構お客さんが入っていて、にぎやかだ。先ほど聴いた東京出身の津軽三味線演奏者も、次のライブのための腹ごしらえに来ていた。この距離感が、なんとなくいい。
 しばらく席で待っていると、やってきました貝焼き味噌。メニューで見たとおりのものだ。さっそく頂く。
 一口食べ、二口食べ、食べ進むにしたがって、パートナーの頭の中に「???」が増えていく。貝焼き味噌なのだから、味噌味だということは理解したようだ。だけんどもしかし、いつまでたってもホタテ貝が出てこない。ついに「??????」が頭の中でポンと音を立てて破裂したらしい。
「貝柱が出てこない。」
と、私に問いかける。語尾が下がり気味である。
「貝殻で味噌を入れた溶き玉子と長ネギを煮たものだから、基本的に貝柱はないよ。」
と、至極当たり前に答えた。
「え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
パートナーは、だまされた感をレストラン一杯に充満させた。

 だって貝焼き味噌は、長ネギの玉子煮に、貝殻のホタテ風味がついたもの。幼少のみぎりに食べた時には、多分ニシンだと思うが、煮崩れた魚の身が入っているくらい。風邪を引いた時の病人食である。母乳の出が良くなると言って、妊婦さんに食べさせたりもしていたらしいが、なぜ母乳が出るようになるかは、聞いたことがない。
 だいたい、40年以上も前の津軽地方の一般庶民が、ホタテのグラタンだのコキールだのを普段気軽に食しているはずがないことくらい、想像できそうなものだが、パートナーの想像力は、マッシュポテトの絞り袋に使われたらしい。

 調べてみたら、最近の貝焼き味噌には、ホタテ貝や豆腐等の「具」を入れるらしい。パートナーと同じく、だまされたと思った人が多数いたようだ。どうも、パートナーには、現在の豊かな食文化を基準とした誤解があったらしい。確かに、いずれの郷土料理も、今の豊かな食生活からは、とても美味しいとは言えないだろう。ただ、子供の頃の記憶と共に甦る懐かしい味で、ねりこみは今だに遠慮しているが、褻の汁は毎年正月に、少しだけ食べることにしている。それも、津軽弁訳と同じく、郷土の文化への誇り、なのかもね。

パートナーのひとこと

 だまされた。

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