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第110話 叶わなくてもいい夢

 我が家はみんな甘い物好き。特にシュークリームは物の値段の基準としているくらいだ。子供が小さい頃から、桁の大きいものを換算するときに「一個100円のシュークリームが何個買える」という数え方をしたものだ。例えば外車の値段は「一日毎食1個ずつ三人家族がシュークリームを食べたとして、何年間食べられるか」などという、はなはだ無謀な数学で子供を教育してしまった・・・もう取り返しはつかない。

 当然のことながら、私と娘の死ぬ前に一度はしてみたいこと、第一位は「シュークリームを腹いっぱい食べる」ことである。

 もちろん、あまりにもささやかであるがため、やろうと思えばすぐにでも叶ってしまう。だけれど敢えてやらない。それは「叶えてはいけない、叶わなくてもいいけれど、ずっと持ち続けたい、ささやかな夢」なのである。
 このへん、私と娘の感性は見事に一致し、大量のシュークリームが家にある、という状況は決して訪れない。

 娘がもうひとつ語るのは「大きな西瓜を半分に切ってスプーンですくって一人で食べつくす」という夢であった。これをこの連休についに叶えてしまった。
 週末ごとにあっちの植物園、こっちのお寺、と花を求めて出掛ける親を尻目に、出不精の娘は甚平など着て家で怠惰に過ごしており、「おみやげ買って来てねえ」と言って送り出すのだ。
 スケッチ小旅行の帰り道、目ぼしいお土産に出逢わなかった私たちは近所のスーパーで西瓜を買って帰った。娘はおおいに喜び、アイスノンや氷で冷やし、15分毎に西瓜の体位を換えながら満遍なく冷やすことに全力を傾け、満面の笑みで西瓜を切り2日がかりで西瓜半分を食べつくした。とても楽しかったようだ。

 ・・・だが祭りの後はいつも寂しい。私は娘が新たな「叶えなくてもいい夢」を語りだす日を心待ちにし、かつ、シュークリームの夢は絶対に叶えてはいけない、との決意を新たにするのであった。の憂さを忘れる初夏の宵であった。

教訓

 ささやかな夢はたくさん持とう!!

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たぶん12万