テイエムオペラオー
〜王者〜

父・オペラハウス(サドラーズウェルズ系) 母・ワンスウェド
牡・1996年生
主な勝鞍:99皐月賞 00・01天皇賞(春) 00春秋グランプリ 
00天皇賞(秋) 00ジャパンカップ

 覇王。あまりの強さに、いつしかそう呼ばれるようになりました。4歳(当時の馬齢)の時にはGT勝ちは皐月賞のみだったのですが、5歳の時には伝説のパーフェクトイヤー8戦8勝。現5歳時には天皇賞(春)を制し、7冠。実際にレースを見たわけではないのですが、彼のことを語る人々は、まず彼の強さをたたえていました。

 覇王としての彼の重圧は、並大抵のものではなかったと思います。ファンからしてみれば、勝って当然、負ければ「どうしたんだ!?」と騒がれるのですから。かつて「皇帝」と称された7冠馬シンボリルドルフが敗れたときも、新聞のトップ一面で飾られたそうです。圧倒的な力を持つものは、英雄として、偶像として人々の心に衝撃を与えるのでしょうね。映画のスパイダーマンではありませんが、「力を持つものは力の使い方に責任を持たなければならない」という宿命を背負っていたのでしょう。

 前回、アドマイヤグルーヴのところで重圧を平然として気にしない存在を「大物」と呼ぶということを書きましたが、彼こそ「大物」と呼ぶに相応しい存在なのでしょう。正攻法の戦法で、相手に「負け」を感じさせる。勝ち方にブライアンほどの派手さはないものの、立ち向かってくる相手を確実にしっかりと倒す。その姿こそ、覇王を名乗るものの証だと思います。そのあたり、旧4歳時にナリタトップロード、アドマイヤベガらと激戦をしてきて、修羅場を体験してきたからこその強さだと思えます。

 しかし強すぎる彼は、多くのファンを魅了すると同時に、敵も生んでしまいました。終生の宿敵メイショウドトウをはじめとする打倒オペラオーに燃えるライバルたち、オペラオーが勝ちすぎることによって古馬戦線が面白くないと感じている判官贔屓(ひいき)のファンたち。しかし、彼は勝ち続けます。対戦相手にとっては、憎たらしいほどの強さを見せ付けて。

 孤高の王者は、何を感じたでしょう。古馬戦線完全制覇を成し遂げた満足感、充実感は十分に感じていたでしょうが、それと同時に、己の欲求を満たしてくれるライバルを渇望したでしょう。自分と互角・・・それ以上の存在を。その思いは、2001年に実現するのですが・・・。

 宿命のライバルに敗れた宝塚記念、万能戦士アグネスデジタルに苦杯をなめさせられた秋の天皇賞。そして、ジャパンカップ。ダービー馬、ジャングルポケットとの戦いの時がやってきました。絶対的な王者であるオペラオーをジャングルポケットが撃破する瞬間がやってきたのでした。若い新星が王座に座り続けていた王者を撃破する。それは、彼の王朝の終わりを示すと共に、新しい時代の始まりを告げていたのではないでしょうか。若い新星のために、覇王は王座を守り続けてきたというのも、やはり考えすぎですかね。

 自分に取って代わるヒーローを、自分の力を持って試した・・・。という風にも見えなくないんですよね。現に、ドトウもアグネスデジタルも、ジャングルポケットも、さらには有馬記念の優勝馬マンハッタンカフェも、それぞれ覇王を倒した事を誇れる馬たちだったと思うのです。王は去っても、戦いはずっと続いていく。馬たちの戦いは、終わったわけではないのですから。

 強すぎるがゆえに愛されて、嫌われもした王者。「嫌われるのも王の仕事」という言葉もありますが、まさに彼は王として、立派に競馬界に君臨していたように思います。王の血は、彼の子孫にも受け継がれるのでしょうか。彼の産駒がどのような活躍をするのか、とても気になります。

戻る