3、天然菌と分離培養菌
 天然菌と分離培養菌との違いを比べてみましょう。天然菌には多種多様な菌が含まれていますが、分離培養菌は単一菌がほとんどです。人間社会は老若男女、そしていろんな職業の人たちで構成されており、社会生活を営んでいます。もし、特定の職業の人ばかりになったとしたら、どのような社会になってしまうでしょうか。決してよい社会環境にはならないでしょう。
 パンを選ぶ場合、イーストより天然酵母のパンの方がより安全でおいしいと考える人が多いと思います。パンの天然酵母と分離培養のいわゆる純粋培養された市販のイーストとの違いを比べてみましょう。天然酵母は干しブドウや小麦などに生息している天然酵母を自然界で起る発酵と同じように再現し、天然発酵したものです。イーストは干しブドウなどに生息している酵母菌の中で、特定の1つの酵母を単一分離し、分離培養をしています。自然界では起りにくい現象です。
 天然酵母は、何種類もの酵母菌の他、色んな種類の麹菌や乳酸菌などが生きています。なかには名前がなくてもパン造りに有効な菌もいます。また、パン造りに適さない菌が混入した場合、それを排除する菌もいるのです。一方イーストは、1種類の酵母菌がほとんどで、他の菌はごく僅かしかいません。そのためパンを膨らますことは出来ても、パン独特のおいしい味や香りを引き出すことは出来ず、そこで、マーガリンや香料などを使うことがあります。
 塩の自然塩と精製塩との違いを比べてみましょう。自然塩は色々製造方法の違いはありますが、塩の主成分である塩化ナトリウム以外のにがりの微量成分が何種類も含まれています。それによって塩辛さだけでなく、塩としてのうま味が感じられるのです。一方精製塩は塩化ナトリウムがほとんどで、にがりの微量成分が少ないため塩辛いだけで、塩本来のうま味が感じられません。天然菌が自然塩、分離培養菌が精製塩に例えられるでしょう。
 また、うま味成分の違いを比べてみましょう。かつお節や昆布などで取っただしはグルタミン酸やイノシン酸などのうま味のアミノ酸だけではなく、他の多くの成分が含まれており、それらが絶妙な深い味わいをかもし出しています。一方、化学調味料は、グルタミン酸ナトリウムなどの単一のうま味成分ですから、人工的なうま味です。天然菌がかつおや昆布の天然だし、分離培養菌は化学調味料に例えられるでしょう。
 天然菌と分離培養菌とでは作られた発酵醸造食の安全性の違いは科学的には解明されていませんが、天然菌で作られた食の方がより自然に近い営みであり、味もおいしいと思います。

発酵醸造菌 天然菌 分離培養菌
パン酵母 天然酵母 イースト
自然塩 精製塩
うま味 かつお節・昆布 化学調味料