「格言・故事成語」講座(3)
漢詩由来の格言・故事成語
(その7) 一将功成って万骨枯る
己亥歳 曹松
沢国江山入戦図
生民何計楽樵蘇
憑君莫話封侯事
一将功成万骨枯
己亥の歳
沢国(たくこく)の江山(こうざん)戦図(せんと)に入る
生民(せいみん)何の計あってか樵蘇(しょうそ)を楽しまん
君に憑(よ)って話すこと莫(な)かれ封侯(ほうこう)の事
一将(いっしょう)功(こう)成(な)って万骨(ばんこつ)枯(か)る
[口語訳]
沢地の多いここ水郷の国々も、すっかり戦乱のために荒らされてしまった。
ひとびとは、いったいどのようにしたら、木こりや草刈りをするといった生活ができるのだろうか。
どうか、お願いする。手柄をたてて出世をしたいなどと口にしないでほしい。
一人の将軍が手柄をたてるかげには、数多くの兵士の尊い命がうばわれているのだから。
(『漢詩・風雅をよむ』・NHK学園)
○一将功成りて万骨枯る
[曹松、己亥歳詩]
一人の将軍が功名を立て得たのは、幾万の兵が屍(しかばね)を戦場にさらした結果である。
功績が上層の幹部のみに帰せられ、その下で犠牲になって働いた多くの人々が顧みられないことを嘆く語。
(『広辞苑』)
戻る→