矛盾

 楚人に楯と矛とをひさぐものあり。之を誉めて曰はく、「吾が楯の堅こと、能く陥す莫きなり」と。又其の矛を誉めて曰はく、「吾が矛の利なること、物において陥さざる無きなり」と。或るひと曰はく、「子の矛を以て、子の楯を陥さば何如」と。其の人応ふること能はざるなり。

 註: ひさぐ=売る  誉めて(ほめて) 陥す(とほす) 莫き(なき) 何如(いかん) 応ふる(こたふる)

 [口語訳]
 中国の楚の国に、楯と矛とを売る人がいました。これを誉めていうには「私の楯の堅いことといったら、陥(とお)すものはありません」と。またその矛を誉めていうには「私の矛の鋭いことといったら、陥(とお)さないものはありません」と。或る人が言いました「あなたの矛で、あなたの楯を刺したらどうなりますか?」と。その人は答えることができませんでした。

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