楽しいことわざ教室 第7回(その1)
楽しいことわざ教室3月の例会は、平成14年3月13日に開催され、13名が参加しました。
初めに、私が書いた「山笑う」を読んで、主題の漢詩『春を探る』を鑑賞しました。
主な内容は、
『春を探る』 戴益
「道は近きにあり、しかるにるにこれを遠きに求む」 孟子
春の色は青(青春)
「春山淡冶として笑ふがごとし」 郭煕
「故郷やどちらを見ても山笑ふ」 子規
次に、故事成語シリーズとして、「矛盾」「漁父の利」「四面楚歌」「先ず隗より始めよ」
に続いて、「断腸」を勉強しました。「寸断」ということばも関連しています。
腸(はらわた)寸寸(すんすん)に断(た)つ
桓公(かんこう)蜀(しょく)に入(い)り、三峡(さんきょう)の中(うち)に至(いた)る。
部伍(ぶご)の中(うち)に、猿(さる)の子(こ)を得(え)たる者(もの)有(あ)り。
其(そ)の母(はは)岸(きし)に縁(そ)って哀号(あいごう)し、
行(ゆ)くこと百余里(ひょくより)にして去(さ)らず。遂(ついに)に船(ふね)に跳(と)び上(あ)がり、
至(いた)れば便即(すなわ)ち絶(いきた)ゆ。其(そ)の腹中(ふくちゅう)を破(やぶ)り見(み)れば、
腸(はらわた)皆(みな)寸寸(すんすん)に断(た)つ。
公(こう)之(これ)を聞(き)いて怒(いか)り、命(めい)じて其(そ)の人(ひと)を黜(しりぞ)く。
口語訳
桓公が蜀に攻め入り、三峡の中に至った(時のことである)。(桓公の)部隊の中に、
小猿をつかまえた兵士がいた。母猿は岸を伝わって、悲しげに泣き叫び(船が)百余里
行っても立ち去らない。ついには船中に跳び込んできて、(小猿のところに)たどりつくと、
そのまま息が絶えた。その腹を割いて調べてみると、腸はすっかりずたずたに
断ち切れていた。桓公はこのことを聞くと立腹し、その兵士を退けるように命じた。
腸寸寸断(ちょうすんすんだん)
から「腸断」また「断腸」という成語ができ、「はらわたが千切れるほどの辛い思い」を
「断腸の思い」というようになりました。また、「寸断」という成語もここから出て、
「台風で道路がずたずたに寸断された」などと使われます。
熊日記事や画像はカットしました。
三峡は長江の上流にあって、古来景勝の地として詩にも詠まれ、
また、両岸には猿が多いことでも知られています。
猿の啼き声(猿声)は、喜怒哀楽のうちの「哀」(悲しみ)を表わすといわれます。
この話がもとになっているのかもしれません。
猿声(えんせい)を「哀」としてとらえた詩に、有名な李白の『早に白帝城を発す』があり、
「断腸」を用いた漢詩に、菅原道真の『九月十日』があります。