牧志田美衣の詩集 花よ樹よ草よきいておくれ第1章 桜

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ねぇ 聞いて
私 恋をしたんだ
柔道部のね
とってもダサいヤツなんだ


高校入ったころにさ
先輩の前でさ
「押ッ忍」ってつったってやがんの

いっちょまえにサ
押ッ忍、だって
押ッ忍、だって
笑っちゃうじゃん


でさ
それからも

「押ッ忍」ってつったってやがんの
いつだって いつだって
ちゃんと頭さげてサ

それでサ
友達誘って窓から練習を見たんだよ
笑っちゃったよ
投げられてやんの
それも何回も 何回も
そのたびに皆で笑っちゃったよ


アイツ馬鹿だよ
何日見に行っても
いつも いつも投げられてやんの

だけど 私見たんだ
部活のあとに洗い場で
ヤツは雑巾洗ってた
それからヤツの手が止まってさ
真っ赤な顔して下向いて・・・
にぎりこぶしが震えてた

なんとなく練習みるのもあきちゃって
それからずっと行かなかった


でもさ
あいつはサ
「押ッ忍」ってつったってやがんの

いっつもいつも
先輩の前でさ
いっちょまえにさ
どうせ投げられてるのにさ


また春が来て
思い出しちゃったんだよね

ひとりで練習見に行った
前と同じに窓からね
そしたらさ
投げ飛ばしたんだよ 先輩を

おろした手の握りこぶしが大きく見えた
ちらっと私と目が合っちゃった


あした
デートするんだ
アイツが毎日走ってた
この桜堤を並んで歩いてさ
満開の桜の下に腰をおろすんだ
何を話そかな
ねぇ 桜
何を話したらいいのかなあ
とりあえず
「押ッ忍」って言ってみようかな

掲載詩: 花見  桜堤  八重桜  山桜  しだれ桜  夜桜  さくらんぼ  花吹雪  花よどみ


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