豆腐屋さんの研究室

豆乳について

良質の豆乳とは

美味しい豆腐を作るためには、良質の豆乳でなければなりません。
とくに、にがりを使う場合は豆乳が荒れていては、美味しくないどころか、まずい豆腐になってしまいます。

良質の豆乳とは?
にがりによる高温(70度C以上)寄せで、美味しくてなめらかな豆腐ができる豆乳であることを前提とした時のチェックポイント
  1. 大豆の青臭みが少なく、甘い良い香りがして雑味がなく飲みやすい。
  2. 全体に均一でミジン(おからの細かいもの)が混入していない。(平らな板(板ガラス等)を斜めにして豆乳を流してみたときに、粒々が残ったり、豆乳がまだらに付着しない。)、(湯葉が均一に張る。)
  3. 上記の条件を満たした上で、あまりサラサラの豆乳より、少々粘りのある豆乳の方が、なめらかな豆腐になるようだ。
良質の豆乳をつくる

それでは、良質の豆乳の作り方を製造工程にそって説明させて頂きます。
あくまでも、私の経験及び知識の及ぶ限りであります。

1, 大豆を選ぶ

一般的に言えば国産大豆の方が、輸入大豆に比べ、にがりとの反応がゆっくりなため使いやすく、味も良い。
ただ、油分が少ない分、艶、なめらかさが劣る。
最近は、輸入大豆でも、ホンダトレーディング社の「珠美人」や中国産の「白眉」のような、加工特性に優れ味も良い大豆が出まわっているので価格に制限がある場合は要チェック。
大豆の成分は、蛋白質、炭水化物(味に影響。糖質、糖分もこれに含まれる)、脂質、繊維質、灰分、水分からなる。
蛋白質の含有量が高いほど豆腐は作りやすいが、その分炭水化物が減り味が薄くなる。
一口に蛋白質と言っても、色々な性質を持った蛋白質が確認されており、色々と使ってみて、それぞれの大豆の持つ特性を知っておく事が大切です。
また、特に国産大豆の場合、品種、生産地、生産者、畑、その年の気候、等級、粒の大小等により品質が左右されるので、良い大豆が見つかったら早めに確保するのが良いと思われます。

2,大豆浸漬(大豆を水に漬ける)

まず大切なのは大豆の洗浄です。
大豆は農産物ですから泥や土、ほこり、場合によっては、農薬などが付着しています。
実際にやっている人はご存知のように、大豆を洗うと黒く濁った水がでます。
水道水に含まれる不純物は、せいぜい、ppmの単位で現される量です。大豆にをきれいに洗わなくては、どんな美味しい水を使っても無駄な事になります。
また、大豆に付着している細菌を洗い流し、細菌による味の劣化を防ぐ意味でも大切になります。特にセレウス菌は、煮沸においても死滅しませんので、この段階で完全に除去する必要があります。

浸漬時間は、水温5度Cで24時間、25度Cで6時間ぐらいですが、一般的には作業上24時間の浸漬は出来ませんし、6時間の時は寝てる時間がありません。
したがって、冬はぬるま湯(熱いお湯は大豆蛋白が熱変性を起こすので避ける)、夏は冷水を入れて温度調節をします。1度Cの温度差で約1時間の違いになります。
この方法の利点は、使う大豆の種類や粒の大小、使用時間のずれがある場合でも、温度を調整する事で一度の作業で済みます。
ただ、この方法で浸漬する場合、浸漬槽の外側の部分が外気温による影響が大きく、中心部は影響されにくいので、時間の経過とともに、温度差が出来ます。したがって、浸漬槽を保温する工夫を施すのが望ましい。
毎日、大豆をグラインダーにかける前に10粒程度割ってみて、7割程度の豆の中心部にへこみが残るような状態がベストです。

なお、大豆の計量は1バッチ(1回の煮沸)ごとに計量して浸漬することで、大豆の膨れ具合による誤差が無くなり豆乳が安定する。
3,大豆粉砕

大豆粉砕前にもう一度大豆を洗う。

大豆粉砕時の注意事項
  • 温度上昇がないか。夏場は冷水を用いるのが良い。
  • 均一に粉砕されているか。呉を触ってみて大きな粒が混ざっている場合、グラインダーの歯が欠けていないか、モーターの軸受けにがたつきがないか確かめる。
  • グラインダーの呉の出口で呉の硬さが均一でない場合は、上下の石のかみ合わせが悪いので調整の必要あり。
  • グラインダーの石の間隔は毎日点検するのが基本。
  • 粉砕した呉は長時間放置しない。速やかに煮沸作業に移る。
  • 水の計量は精度を高くし、豆乳になった時点での量の誤差を3%程度に押さえることで、製品のばらつきを無くすよう努める。

使用する水については豆腐づくりにおける水についての研究のページ参照

4,消庖剤

消庖剤は煮沸時に吹き零れを防止する目的で使用すると考えられがちですが、呉を均一に煮沸する事を重点に置いた使用をしたほうが良いと思います。
最近では、消庖剤を使わなくても炊ける煮釜が開発されていますが、消庖剤を使って確実に煮沸した豆乳の方が質が良いようです。
現段階では、味を犠牲にして無消庖にするか、味を優先して消庖剤を使用するか、選択が必要です。

もうひとつ消庖剤にはPH調整の利用法もあります。
たとえば、
グリセリン脂肪酸エステル95%・炭酸カルシウム5%の消庖剤と
グリセリン脂肪酸エステル50%・炭酸カルシウム50%の消庖剤が有るとすると、同量使用すると前者はPHが低く後者の方がPHが高くなります。
それは、炭酸カルシウムがPHを上げるからです。炭酸マグネシウムを使用した消庖剤も同様です。
新穀大豆の時に豆腐が、やわらか過ぎる時は、炭酸カルシウムの含有率の低い消庖剤を使いPHを押さえ、大豆が酸化している時は、炭酸カルシウムの含有率の高い消庖剤を使う事でPHを上げてやるようにします。

5,煮沸

豆乳をつくるうえで、もっとも大切なのが煮沸です。
ただ単に、呉を加熱して殺菌するだけでは有りません。(もちろん煮沸殺菌の目的は大きいのだけれど)
大豆蛋白をほぐし、凝固剤と反応しやすい状態にします。
むら煮え、生煮え、煮え過ぎの時は、良い凝固が困難で、寄りむらが出来たり、寄り過ぎ(豆腐屋さん仲間では「散る」と言う)になりやすい。

煮沸時の注意事項
  • ドレンの混入は極力さける。
  • 呉が均一に加熱されるように工夫する。
    • 釜の中で呉全体が対流するようにする。
    • 蒸気による加熱の場合、蒸気の発射管の形状、位置等を工夫する。
    • 発射管の目詰まりには気を付ける。
    • それでも上手く行かない時は、加熱中に櫂などを使ってまぜる。(火傷には気をつける)
  • 蒸気圧は2kg/cm²位に減圧する。
  • 煮沸時間は沸騰までに7分程度かけるように蒸気量を調整する。
  • 沸騰後は、蒸気量を絞り込んで、3分から4分ぐらいの蒸らし炊きをする。

二重釜の優位性
当店では(株)ワイエスピー(旧、中牟田製作所)の二重釜を使用しています。
この釜の特長は、二重になった釜の間に蒸気を通すことで、周りからも加熱します。
この結果、均一で甘みの有るひじょうに美味しい豆乳になります。

6,おから絞り

おから絞りはなるべく過大な圧力をかけずに絞る方が、豆乳にダメージが少ない。
均一に適度の煮沸をした煮呉は、おからの切れも良く歩留まり良く絞れる。
絞りが悪い場合は、煮沸までの行程に問題がある。
ミジンは、確実に取り除く。