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2011/03/24 地震に際して発生した災害の業務上外について
これを書いた直後に、東北地方太平洋沖地震に係る業務上外の判断に関し、厚生労働省から「詳しめの通達」と「Q&A」が出されましたので、具体的な扱いについては、下記を参照願います。
・平成23.3.24基労管発0324第1号、基労発0324第2号 東北地方太平洋沖地震に係る業務上外の判断について
・東北地方太平洋沖地震と労災保険Q&A

<基本的な考え方>
地震に際して発生した災害の業務上外については、「伊豆半島沖地震に際して発生した災害の業務上外について(昭和49.10.25基収2950号)」において、厚生労働省の基本的な考え方が通達されていますので、まず、その概要を記しておきます。
(1)天災地変による災害は、一般的には、業務災害にならない
「労災保険における業務災害とは、労働者が事業主の支配下にあることに伴う危険が現実化したものと経験法則上認められる場合をいい、いわゆる天災地変による災害の場合にはたとえ業務遂行中に発生したものであっても、一般的に業務起因性は認められない(業務災害にはならない)」とされています。
これは、「天災地変については不可抗力的については不可抗力的に発生するものであって、その危険性については事業主の支配、管理下にあるか否かに関係なく等しくその危険があるといえ、個々の事業主に災害発生の責任を帰することは困難だから」です(労災保険は事業主に災害補償義務がある場合に、その肩代わりをする保険なのです)。
(2)天災地変による災害であっても、業務に伴う危険が現実化したものと認められれば、業務災害になる
しかしながら、「被災労働者の業務の性質や内容、作業条件や作業環境あるいは事業場施設の状況などからみて、かかる天災地変に際して災害を被りやすい事情にある場合には天災地変による災害の危険は、同時に業務に伴う危険(又は、事業主支配下にあることに伴う危険)としての性質も帯びている」ことになります。
したがって、「天災地変に際して発生した災害も同時に災害を被りやすい業務上の事情(業務に伴う危険)があり、それが天災地変を契機として現実化したものと認められる場合に限り、かかる災害について業務起因性を認めることができるものである。前述の業務起因性の反証事由としての『天災地変による』の取り扱いを、単に天災地変に再して発生したことのみをもって解し取り扱うべきでないことはいうまでもない」とされています。
(3)大規模な天災地変による災害は業務災害にならない
(1)(2)が基本的な考え方ですが、「その天災地変が非常に強度を有していたため…一般に災害を被った場合(たとえば関東大震災等による災害)には業務起因性が認められない」とされています。
これは、「かかる大規模な天災地変の場合は事業主の支配・管理下の有無を問わず、一般的に災害を受ける危険性があり、業務上の事情が無かったとしても同じように天災地変によって被災したであろうと認められるからであって、かかる場合の災害はその発生状況の如何を問わず全て業務起因性が認められないこととなる」からです。

<今回の「東北地方太平洋沖地震」についての通達では?>
今回の「東北地方太平洋沖地震」については、「東北地方太平洋沖地震に伴う労災保険給付の請求に係る事務処理について(平成23.3.11基労発0311第9号)」が発せられており、「今回の地震による業務上外の考え方については、平成7年1月30日付け「兵庫県南部地震における業務上外等の考え方について」に基づき、業務上外及び通勤上外の判断を行って差し支えない。したがって、個々の労災保険給付請求事案についての業務上外等の判断に当たって
は、天災地変による災害については業務起因性等がないとの予断をもって処理することのないよう特に留意すること。」と通達されています。
また、上記の平成7年1月30日付け通達においては、「天災地変による災害に係る業務上外の考え方については、従来より、被災労働者が、作業方法、作業環境、事業場施設の状況等からみて危険環境下にあることにより被災したものと認められる場合には、業務上の災害として取り扱っているところであり、昭和49年10月25日付け基収第2950号「伊豆半島沖地震に際して発生した災害の業務上外について」においても、この考え方に基づいて、個々の事例について業務上外の考え方を示したものであること。したがって、今回の地震による災害についても、従来からの基本的な考え方に基づいて業務上外の判断を行うものであること。なお、通勤途上の災害についても、業務災害と同様、通勤に通常伴う危険が現実化したものと認められれば、通勤災害として取り扱うものであること。また、個々の労災保険給付請求事案についての業務上外等の判断に当たっては、天災地変による災害については業務起因性等がないとの予断をもって処理することのないよう特に留意すること。」と通達されています。

<結局どうなるの?>
上記の通達からして、今回は少なくとも「(3)の大規模な天災地変として業務災害にならない」ということにはならず、「(2)の業務に伴う危険性が現実化したと認められる場合は業務災害になる」という扱いになることがわかります。また、「昭和49年10月25日付け基収第2950号『伊豆半島沖地震に際して発生した災害の業務上外について』においても、この考え方に基づいて、個々の事例について業務上外の考え方を示したものであること」としていることから、このときに出された「個々の事例」に沿って業務上外の認定がなされると考えられます(私は、たぶん「甘く」認定されると思います)。
そこで、最後にその「個々の事例」を記しておきますと次のとおりですので、「具体的にどうなるか」は、これを参考に判断するのがいいでしょう。

(1)業務災害の事例
事例1 作業現場でブロック塀が倒れたための災害
ブロック塀に補強のための鉄筋が入っておらず、構造上の脆弱性が認められたので、業務災害と認められる。
事例2 作業場が倒壊したための災害
作業場において、建物が倒壊したことにより被災した場合は、当該建物の構造上の脆弱性が認められたので、業務災害と認められる。
事例3 事務所が土砂崩壊により埋没したための災害
事務所に隣接する山は、急傾斜の山でその表土は風化によってもろくなっていた等不安定な状況にあり、常に崩壊の危険を有していたことから、このような状況下にあった事務所には土砂崩壊による埋没という危険性が認められたので、業務災害と認められる。
事例4 バス運転手の落石による災害
崖下を通過する交通機関は、常に落石等による災害を被る危険を有していることから、業務災害と認められる。
事例5 工場又は倉庫から屋外へ避難する際の災害や避難の途中車庫内のバイクに衝突した災害
業務中に事業場施設に危険な事態が生じたため避難したものであり、当該避難行為は業務に付随する行為として、業務災害と認められる。
事例6 トラック運転手が走行中、高速道路の崩壊により被災した災害
高速道路の構造上の脆弱性が現実化したものと認められ、危険環境下において被災したものとして、業務災害と認められる。
(2)通勤災害の事例
事例1 通勤途上において列車利用中、列車が脱線したことによる災害
通勤途上において、利用中の列車が脱線したことは、通勤に通常伴う危険が現実化したものであることから、通勤災害と認められる。
事例2 通勤途上、歩道橋を渡っている際に足をとられて転倒したことによる災害
通勤途上において、歩道橋を渡っている際に転倒したことは、通勤に通常伴う危険が現実化したものであることから、通勤災害と認められる。

2009/04/01 平成21年度の都道府県単位保険料率の決定過程
協会健保の本年9月から(一般の被保険者については10月納付分から・任意継続被保険者については9月納付分から)の都道府県単位保険料率は、全国平均を8.20%とし、最高が北海道の8.26%、最低が長野県の8.15%として、本年3月末に決定されましたが、この決定に至るまでには、次のような経緯をたどりました。

1.激変緩和措置4案の提示
協会健保の保険料率は、法律上、遅くとも10月までに(遅くとも9月中には)都道府県単位で設定しなければならないことになっているのですが、現状のまま設定すると、保険料率が最大となる北海道(8.75%となる見込み)と最小となる長野県(7.68%となる見込み)とで1.07%ポイントの格差が生じると見込まれていました。
これでは、地域格差が大きくなりすぎることから、保険料率をならす激変緩和措置(5年間)を講じる方向で話が進められ、本年1月28日に厚生労働省は次の4案を提示しました。
A案−上限を8.3%、下限を8.13%に設定する案
この案だと、北海道と大阪府が最高で8.3%、東京都と長野県が最低で8.13%、料率差は0.17%ポイントとなります。
B案−変化幅を本来の5分の1とする案
この案だと、北海道が最高で8.31%、長野県が最低で8.1%、料率差は0.21%ポイントとなります。
C案−上限を8.3%とし、料率が下がる地域は段階的に下げ幅を縮小する案
この案だと、北海道・大阪府が最高で8.3%、最低が長野県の7.99%、料率差は0.31%ポイントとなります。
D案−3番目の案を基本に、料率が8.3%を超える地域も段階的に上げ幅を抑制する案
この案だと、北海道が最高で8.39%、最低が長野県の7.93%、料率差は0.46%ポイントとなります。

注1)激変緩和措置とは、「保険料率を平準化する(ならす)措置」のことですので、これらの措置が講じられた場合は、いずれの場合でも、「料率が高い地域の保険料を、料率が低い地域の保険料で補う」ことになります。

2.結局「変化幅10分の1」で決着
その後、協会の支部の意見交換、運営委員会の会合などが行われ、一定の意見集約が図られたた結果、厚生労働省としては、「B(変化幅5分の1)案」を採用する方向で与党との調整に入りました。
ところが、これを受けた自民党医療委員会等合同部会では議論が紛糾して収斂しなかったため、厚生労働省は新たに「変化幅10分の1」とする案を再提案したところ、この案を採用することで政治決着(了承・閣議決定等)されました。
その後は、この案に沿って、厚生労働省において健康保険法施行令・施行規則の改正(都道府県県単位保険料率の算定方法が規定・3月27日公布)が行われ、この算定方法に沿って全国健康保険協会が都道府県単位保険料率を設定し、最後に厚生労働大臣の認可を受けて、これが決定された次第です。

注2)上記の健康保険法施行令・施行規則の改正内容(都道府県単位保険料率の算定方法)は、あまりに細かい内容ですのfで、ここでは省略させていただきますが、施行規則の改正点を2点だけあげておきますと、例えば、次の規定を追加する等の改正が行われました。
A.都道府県単位保険料率(激変緩和措置を講じた場合は、当該措置を講じた後の都道府県単位保険料率)については、その率に1,000分の1未満の端数が生じたときは、これを四捨五入する。
B.年齢構成の違いを都道府県間で調整する際の「年齢階級」については、0〜69歳までの5歳ごと及び70歳以上とする。

注3)当初厚生労働省が予定していた「B(変化幅5分の1)案」でいくと、抑制幅を5分の1づつ縮小していくことになり、激変緩和措置(5年間と法定)の終了期限である平成25年(2013年)9月にこれが撤廃され、本来の保険料率とされる予定だったのですが、当初に「10分の1」しか変化させないとなると、果たして、この終了期限までに終了するのか微妙になりますが、この問題については(=22年度以降については)、「改めて検討する」ということで決着(先送り)されています。

2009/03/31 健康保険の保険料の構成 [重要]
<健康保険の保険料の構成>
健康保険の保険料は、一般保険料と介護保険料から構成されています。

<一般保険料>
1.一般保険料とは、健康保険(医療保険)の費用に充てるために集める保険料のことで、健康保険の被保険者全員から徴収されます。
なお、協会健保の一般保険料は、都道府県別に設定され、これを「都道府県単位保険料」といいます(平成21年9月より設定)。

2.一般保険料は、特定保険料と基本保険料から構成されています。
A 特定保険料とは、前期高齢者納付金、後期高齢者支援金、退職者給付拠出金など、主として「老人医療費の不足分」を補うために集める保険料で、これは、加入者の年齢が高い(老人が多い)後期高齢者医療制度(長寿医療制度)や国民健康保険における老人医療費にまわすお金(納付金や支援金)を、加入者の年齢が低い(若い人が多い)健康保険や共済組合から集めているということです。
B 基本保険料とは、健康保険の加入者に対する医療給付や保健事業等に充てるために集める保険料で、これは、自分の保険集団の医療費等に充てるためにお金を集めているということです。

注1)「前期高齢者」とは、原則として65歳以上75歳未満の医療保険(一般的には国民健康保険)の加入者をいいます。
注2)「後期高齢者」とは、原則として75歳以上の後期高齢者医療制度(長寿医療制度)の加入者をいいます。

<介護保険料>
介護保険料とは、介護保険の費用に充てるために集める保険料のことで、これは健康保険の被保険者のうち、原則として40歳以上65歳未満の人(「介護保険第2号被保険者」といいます。)から徴収されます。

注3)従って一般的には、例えば25歳の健康保険の被保険者であれば、「一般保険料」のみ徴収され、45歳の健康保険の被保険者であれば「一般保険料+介護保険料」が徴収されることになります。

2009/02/20 出産育児一時金が38万円になる場合と35万円になる場合 [重要]
今年の1月から出産育児一時金(家族出産育児一時金)の支給額が35万円から、原則として38万円に引き上げられていますが、どうもその内容がよく伝わっていないように思いますので、ここで少し確認しておきたいと思います。

1.3万円の加算は、産科医療制度(ごく簡単にいうと、重度脳性麻痺となる出産事故が発生した場合に補償金を支払う制度)に加入している分娩機関の「掛金」に充てられるお金であって、「被保険者の受取額(手取額)」が増やされるというものではありません。

2.3万円の加算が行われる(支給額が38万円になる)のは、次の3つの要件を満たす場合です。
A.産科医療補償制度に加入している分娩機関で(その医学的管理の下に)出産(死産を含む。)すること。
B.平成21年1月1日以後の出産であること。
C.在胎週数が22週以上の出産であること(これは在胎週数が22週以上の場合に掛金の支払いが必要となるためです)。

3.Aのことからして、里帰り出産、転院、緊急搬送などにより、産科医療制度に加入している分娩機関から加入していない分娩機関に移って出産した場合は、3万円の加算は行われません(支給額は35万円になります)。

4.Cのことからして、流産や人工妊娠中絶(在胎週数が22週未満の話であるため)の場合は、3万円の加算は行われません(支給額は35万円になります)。

5.胎児数に応じて支給される点に変更はありません。従って双子を出産した場合は、38万円×2=76万円が支給されます。

6.分娩機関の受領代理制度が利用できる点に変更はありません。従って、出産予定日の1箇月前からは事前申請することにより分娩機関に受領代理してもらうことができます。


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