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裁判員制度 <ミニ解説>                 最新情報(トップ)へ  ミニ解説目次へ


2009/08/16 裁判員制度Q&A−その3
最高裁判所のホームページに掲載されている「裁判員制度Q&A」から、2つとりあげてみましょう。


Q 有給休暇を取って裁判に参加して日当と給与の両方を受け取ると、報酬の二重取りになり、問題ではありませんか。

A 報酬の二重取りにはなりませんので、問題ありません。
裁判員の方には1日1万円以内、裁判員候補者の方には1日8000円以内の日当をお支払いすることになっています(旅費は、日当とは別にお支払いします。また、遠方等で宿泊が必要な方については、宿泊料についてもお支払いします)。この日当は、裁判員としての職務等を遂行することによる損失(例えば、保育料、その他裁判所に行くために要した諸雑費等)を一定の限度内で弁償・補償するものです。したがって、日当は、裁判員等としての勤務の対価(報酬)ではありませんので、日当と給与の両方を受け取ることは二重取りにはならず、問題ありません。

Q 就業規則において、裁判員用の特別の有給休暇を取得した場合に
@ 裁判員として受領した日当は使用者に納付する
A 日当を受領した時はその金額について給与から減額する
などと定めることは問題ないでしょうか。

A 個別の事情によります。
例えば、@のように、裁判員として受領した日当は使用者に納付するという規定を置いた場合、その規定により実質的に労働者が不利益を被るような場合は、裁判員法第100条が禁止している不利益取扱いに該当する可能性があります(例えば、受領した日当が1万円であり、特別の有給休暇に支払われる給与額が6000円である場合には、日当を納付することで4000円の不利益を被ることになります。)。
また、Aのように、特別の有給休暇としているにもかかわらず、給与額から裁判員の日当を差し引くことは一般的に認められません。
なお、例えば、「裁判員用の特別の有給休暇を取得した場合には、1日分に相当する給与額(例えば1万5000円)と日当相当額(例えば1万円)との差額(例えば5000円)を支給する。」というように、給与額と日当相当額との差額を支給するような特別の有給休暇制度にすることは問題ないと考えられます。

【解説】
平たくいいますと、労働者の報酬(収入)面に関しては、「労働者が得する扱いにする分については一向にかまわないが、労働者が損するような扱いにすることはできない」ということになります。

なお、裁判日の休暇の報酬については、有給(特別有給休暇)とする場合と無給とする場合が考えられます(いずれの扱いにしても違法ではありません)が、これまでの統計調査をみる限り、大企業はほとんどの企業が有給(特別有給休暇)扱いに、中小企業では、有給扱いにしている企業と無給扱いにしている企業が半々という感じですので、参考にしてください。

また、無給扱いにした場合は、一般的には従業員に年次有給休暇の取得(充当)を認める扱いになるでしょうが、従業員に年次有給休暇の取得(充当)を「義務付ける」ことはできませんので、念のため。

2009/07/21 裁判員制度Q&A−その2 [重要]
最高裁判所のホームページに掲載されている「裁判員制度Q&A」から、また1つとりあげてみましょう。

Q 従業員に対する有給休暇の付与を使用者に対して義務付ける前提として、全労働日の8割以上出勤することが必要であるところ(労働基準法第39条第1項、第2項)同条第7項によれば、労働災害による休業や育児休業等、一定の事由に基づく休業期間は、同条第1項、第2項の適用に当たっては「出勤したものとみなす」としていますが、従業員が無給休暇により裁判員候補者として出頭したり、裁判員等として職務に従事した場合、同条第1項、第2項の適用に当たって「出勤したもの」として扱うことになるのでしょうか。

A 労働基準法第39条第7項において「出勤したもの」とみなす場合が規定されていますが、裁判員候補者として出頭したり、裁判員等として職務に従事した場合はこの規定に当てはまらないため、この規定によって「出勤したもの」とみなすことはできません。
そのような場合における不就業は、法律に定められた正当な手続により労働者が労働義務を免除されているものであるため、8割出勤の算定に当たっては「全労働日」から除外して扱うべきものとされています。
なお、当事者の合意によって、労働者に有利に「出勤したもの」として取り扱うことは差し支えありません。

【解説】
ここでのポイントは、「労働の義務が免除されているかどうか」です。すなわち、年休の算定における「全労働日」とは、「労働の義務がある日」をいいますので、「労働の義務がない日」については、法律(労働基準法)等で強制的に算入しなければならないとされている場合を除き、これに算入する必要はありません(逆にいいますと、業務災害による休業期間、産前産後・育児・介護休業期間及び年休取得日は、「労働の義務が免除された日」なのですが、法律等に規定がありますので、「出勤したもの」とみなす必要があり、従って「全労働日」に算入することになります)。

では、このように「全労働日」から除外する日にはどのような日があるかといいますと、次の日がこれに該当します。なお、これらの日は、「欠勤扱いすること(欠勤したものとして全労働日に算入すること)」が禁止されるのであって、上記Q&Aの解説で述べているように、「出勤扱いすること(出勤したものとみなして全労働日に算入すること)」は、労働者の有利に扱うことになりますので、差し支えありません。
1.所定休日(その日に出勤しても「全労働日」から除外します)
2.使用者の責めに帰すべき事由による休業日
3.正当な争議行為による休業日
4.公民権行使・公職執行(裁判員の職務等)による休業日
5.平成22年度から施行される時間外労働の「代替休暇」取得による休業日

これに対し、次の日は、「労働の義務が免除された日」と解釈して上記と同じ扱い(全労働日から除外等)にしてもかまいませんが、「労働の義務を免除する性質を持たない日(単に労働義務の不履行の責任を問わないだけの日)」と解釈して「欠勤扱い(欠勤したものとして全労働日に算入)」して差し支えないとされています。
1.私傷病による休業日
2.生理休暇取得日
3.慶弔休暇取得日

2009/10/02 裁判員制度Q&A−その1  
最高裁判所のホームページに「裁判員制度Q&A」が掲載されているのですが、その1つを取り上げてみたいと思います。

Q 就業規則において、1裁判員候補者名簿記載通知を受けたこと、2裁判員候補者として呼出しを受けたこと、3裁判員や補充裁判員に選任されたことについて、使用者に対する報告を義務付けることは問題ないでしょうか。

A 裁判員法第101条第1項では、何人も、裁判員や裁判員候補者等の氏名、住所その他の個人を特定するに足りる情報を公にしてはならないとされています。そして、「公にする」とは、そのような情報を不特定又は多数人の知り得る状態に置くことをいいますから、裁判員等が、休暇の取得のためその他の理由から、自分が裁判員等であることを他人に話したとしても、この規定に違反するものではないと考えられます。
したがって、就業規則において、従業員に対し、1裁判員候補者名簿記載通知を受けたこと、2裁判員候補者として呼出しを受けたこと、3裁判員や補充裁判員に選任されたことについて、使用者に対する報告を義務付けた場合であっても、それが、1から3までに該当する従業員が一定の期間不在となることに伴って、従業員の勤務体制の変更等を行う必要があるなど、合理的な必要性があることに基づき、その必要性の範囲内で、報告を義務付けるものであるときは、その義務付け自体が裁判員法に違反することとはならないものと考えられます。


【解説】
このような問題を考える場合のポイントは、「公にする」に該当するかどうかということです。

上記にも述べられているように「公にする」とは、「不特定又は多人数の知り得る状態に置くこと」を言いますので、会社に対する報告義務を課したり、本人が上司や家族や知人に話したりすることは、基本的に問題ありません。
逆に、本人や話を聞いた上司等が、あたり構わず話をしたり、ブログに書き込んだりすると裁判員法第101条第1項に違反すると思われます。

なお、従業員が裁判員候補者名簿通知を受け取った場合に、どのように回答するか(辞退するかどうか)を上司と協議することとしても差し支えないでしょうが、参加の意思を持っている従業員に辞退を強要するようなことは、労働基準法第7条(労働者が労働時間中に公の職務を執行するために必要な時間を請求したときは、拒んではならない)に違反しますので、当然できません。

また、従業員に対し、通知を受けたこと等の報告を義務付けることに加え、裁判員等として職務に従事した場合に裁判所の発行する証明書の提出を義務付けても全く問題はありません。


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