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ワークシェアリング <ミニ解説>            最新情報(トップ)へ  ミニ解説目次へ


2009/04/06 ワークシェアリングについて−その2
「ワークシェアリング」については、3月初めに一度コメントしたところですが、その後、「トピックス」でも取り上げましたように、3月23日には、「雇用安定・創出の実現に向けた政労使合意」がとりまとめられ、その合意においては、「『日本型ワークシェアリング』とも言える様々な取組みを強力に進める」、「政府は、残業の削減、休業、教育訓練、出向などにより雇用維持を図る、いわゆる『日本型ワークシェアリング』への労使の取組みを促進する」などとされました。

さらに、これも、「法改正(労保)」でお知らせしましたように、上記の政府の取組みの一環として、3月末には、雇用調整助成金の拡充、残業削減雇用維持奨励金の創設なども行われ、再び一定の盛り上がりをみせているようです。

そのような中で、エン・ジャパン(株)が「ワークシェアリング」についてのアンケート調査を行い、その結果を3月30日に公表しているのですが、私としては、これがよく実態を反映しているのだろうと思いましたので、ここでその調査結果を、以下に記しておくことにします。

<調査結果>
1.ワークシェアリングをどのように考えているか尋ねたところ、「これによって雇用問題が解決すると思えない」が60%、「雇用維持に必要」が29%、「雇用創出に必要」が11%となっている。

2.ワークシェアリングの導入を考えているか聞いたところ、「導入は難しい」が66%、「検討はするが導入は難しい」が17%となっているのに対し、「導入を前提に検討中」は5%、「既に導入している」は3%に過ぎない。

3.ワークシェアリング導入が難しい理由を尋ねたところ、「担当業務が切り分けられない」(55%)、「既存社員の給与を下げることができない」(54%)、「業務効率の悪化を避けられない」(48%)、「従業員数増加による社会保険費などのコスト増加の負担が重い」(32%)、「既存社員が望まない」(24%)などをその理由としている。

2009/03/03 ワークシェアリングについて−その1
ワ−クシェアリング(仕事の分かち合い)については、2000年頃の不況期に話題になったことがあり、2002年には「ワークシェアリングに関する政労使合意」がなされるに至ったのですが、その後の景気回復とともにほとんど話題にすらならないようになりましたので、すっかり忘れ去られていたものと思っていました。しかし、このところの不況で、自動車産業などで一部実施に踏み切る動きも見られるようになりましたので、少し解説しておこうと思います。

なお、ワークシェアリングには、多様就業(対応)型、緊急対応(避難)型、中高年対策型、雇用創出型の4種類があるとされているのですが、ここでは、不況期に行われる緊急対応型を念頭においてお話したいと思います。

1.ワークシェアリングの長所と短所
ワークシェアリングの長所としては、
A 企業としての社会的責任(雇用の維持)が果たせる
B 整理解雇などの他の雇用調整策よりは受け入れられやすい
C 優秀な人材の流出を防ぐ(有能な人材を維持する)ことができる
D 労使関係が安定する
E 労働者の余暇が増える
F 雇用保障により安心感が得られる
などがあげられます。

ワークシェアリングの短所としては、
A 労働時間短縮ほど人件費が低下しない(人件費のコスト増につながる)
B 生産性の低下につながりやすい
C 定型的な業務には向くが、企画・専門・管理的業務には導入しずらい
D 責任の所在が曖昧になる
E 労働者の賃金が低下する
F 一律に扱う(能力差を無視する)ことになり、不公平である
などがあげられます。

2.導入する場合の留意点
ワークシェアリングを導入する場合は、次の点に留意する必要があるとされています(「ワークシェアリングに関する政労使合意」より)。

(1)緊急対応型ワークシェアリングの実施に当たっては、個々の企業の労使間で、次の点について十分に協議し、合意を得ることが必要である。
(1) 実施及び終了の基準、実施する期間
(2) 実施する対象範囲(部門、職種等)
(3) 所定労働時間の短縮の幅と方法(1日当たり労働時間短縮、稼動日数削減等)
(4) 所定労働時間の短縮に伴う収入(月給、賞与、退職金等)の取り扱い
 (注)時間当たり賃金は、減少させないものとする。

(2)労使の納得と合意が得られた場合には、労使間の合意内容について、協定を締結するなど明確化することが必要である。

(3)緊急対応型ワークシェアリングの実施に先立ち、労働時間管理を徹底し、残業の縮減に取り組むことが必要である。

(4)緊急対応型ワークシェアリングを実施する場合であっても、労使は、生産性向上やコスト削減など経営基盤の強化及び新事業展開の努力を行うことが必要である。

3.実際には普及しないのかも?
これは個人的見解ですが、ワークシェアリングの一番のネックになるのは「賃金が低下すること」だろうと思います。加えて、今は、かつてのように会社に対する帰属意識や労働者の仲間意識が強い時代でもなくなっているので、あえて「自分が損してまで、会社の仲間(他人)の雇用を(みんなで)守ろう」という気持ちには、なかなかなれないのが現実なのではないでしょうか。

しかも、実際に導入するとなると、ワークシェアリングは、賃金の低下を伴いますので、法律上は「不利益変更」の問題になります。

労働者に対して不利益変更を行うためには、「個々人の同意」を得ればよいということになりますが、それもまた困難でしょうから、一般的には「労働協約の締結」又は「就業規則の変更」によることになるでしょう。

そこで、労働協約を締結したとしても、ワークシェアリングの対象者はその適用を受ける組合員に限られます。もし、従業員全体に適用しようとすれば、一般的拘束力を用いるしかないでしょうから、その労働組合が4分の3以上を組織していないと現実的ではありません。

そこで、労働組合が4分の3未満しか組織していなければ、「労働協約の締結」はあまり有効なものとならず、結局、労働組合がない場合と同様、「就業規則の変更」によることになるでしょう。

しかし、就業規則によって不利益変更をするためには「合理性」が要求されます(労働契約法第10条に定める4要件を満たす必要があります)ので、そのハードルは結構高いものとなる(十分な話し合い、代償措置、経過措置等も要求されることになる)でしょう。

ということで、労働組合が圧倒的多数を組織していない会社でワークシェアリングが導入されるというのは、あまり「ありそうにない話」のように、私には思えます。

むしろ、最近「密かに流行っている」ように思えるのは、「早期退職優遇制度の活用」で、その対象範囲(適用年齢を引き下げる等)とともに、退職金の特別割増・再就職支援を付加するといった手法で、こちらの方が(整理解雇等に踏み切る前の手としては)「現実的(現代的)」なのかもしれません。


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