gallery2


「逃げるようにして、浅い眠りを眠った」


それぞれの絵をクリックすると大きく表示されます。





(new!)

さて、キミは何者になりたかったのだろう。
晴朗な昼と明晰な夜。
それらの隙間を満たす曖昧さと、ぼんやりとした困惑のなかで、
じわりと。ただ、じわりと年をとりながら。





身動きできない微睡の中で、
内と外の両方から、同時に自分を眺めていた。
深いブルーの闇と鉱物のような静寂が、
宙に浮かんだ身体に、残響のようにまとわりつく。






最初の"完全なる人間"をつくろうと、
夢の専門家たちは
完成したヒトガタの
収縮する心臓の音に耳を澄ませた。





鼻先をかすめ、水脈を曵いていった匂いのせいだろうか。
とらえどころのない、入り組んだ夢をみた。
"始まり"の可能性を携えた人びとが
わたしを取り囲み、口々に何かを告げようとする。
外では雨が上がり、座を占めた月が梢を照らしていた。







夢見ることが
通行証を手にする唯一の方法であると知り、
三日月の明るい金曜日の夜に
細心の注意とともにそれを夢見た。






眠りは、
身を潜めていることのできる
深く暗い洞窟のようだ。
その中で、世界は容易に姿を変える。
     





自身の夢の中に入りこもうとする人物。
そして、
偶然それを目撃した人物にも、
何らかの役割が課せられる。




不安定な空気。
それでも今は座っている。
そしてただ、逃げるようにして、
再び浅い眠りを眠った。

「いいわけなど2. 働くこと」へ