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「レクイエム」


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「また会いましょう」という電話が、
私に残されたI先生の最後の言葉になってしまった。
穏やかな陽ざしの冬の休日。
何百人もの人々の献花と遺影への拍手の中で、
先生は鮮やかに旅立っていかれた。







声にならないレクイエム。
ヒトの耳に届かない甘美な音楽。
まだ語られない多くの言葉を潜ませて、
星たちは、いっせいに瞬きはじめた。




葬列の儀式。激しく風がうねる。
遺された者の前に、
圧倒的な無力感と惑乱の渦が
嵐のように立ちはだかる。





「イズレハ、死ヌ身」
思うようにならない時、
解き放たれたい時に唱える
呪文のような言葉。
いずれ、私もあなた方の側へ行く。




体温を失った指先の硬さと冷たさ。
すでにモノとなった屍の中に、 もはや死はない。
では、死はどこへいった。
タマシイなどというものがあるとしたら、
それはどこへ向かうというのか。






眼を閉じる。するとどうだ。
いまや、あらゆる労苦から解き放たれて、
内部と外部の境界が失われ
一種の恍惚状態に落ちていった。




闇へのダイヴとスイミング。
薄明に蒼白く光る原形のようなもの。
太陽の不在。しかし、
幻の、あるいは未来からの一閃。

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