キャロル・モーティマー

父の恋人 R-199 ハーレクイン社  発刊:1982.09.20
ヒロイン:リー・スタントン(見習い看護婦・18歳) ヒーロー:ピアーズ・シンクレア(レーシングカーの設計家・元カーレーサー・37歳) 

あらすじ
深夜、自宅に帰宅してみれば、一人息子のギャヴィンが、強烈なウィスキーの臭いをさせながら居間の床に転がっていた。週末は友人リーと過すと聞いていたのに、その姿が見えない。
「リーは父さんの書斎にいる」
慌てて書斎を確かめてみると大きく見開いたすみれ色の瞳もつ少女とも呼べる若い女性が怯えて立っていた。
ピアーズは、その少女を難なく居間に引きずり出した。
週末を過す相手が男の友人だと思い込ませていたとしどろもどろに説明するギャヴィンと、彼を信用していたのにと怒りを隠そうともしないリーの関係はどうなっているのだろう……?
息子がいつもつき合っている仲間とは違う風情のリーに、ピアーズはどう対処したものか迷うのだった。

将来何がしたいのか決められないままに、ふらふらとしている一人息子ギャヴィン。その遊び仲間だと思っていたリーが実は見習い看護婦というお堅い仕事に就いてることを偶然、知ったピアーズ。
ますます、簡単に彼女に手を出すことが出来ないことに気付きます。
偶然の出会いもありますが、ピアーズがリーの領域に押し入ることの方が多い展開。
年の差、自分の属している生活に無垢なリーを引っ張り込むことへの罪悪感、その他マイナスなことを考え出したらキリがないほど、自分とリーはかけ離れている。
わかっているのに、彼女に会いたくて仕事が手につかないくらいピアーズが、振り回されてます。


イブの赤いばら R-299 ハーレクイン社  発刊:1984.02.20
ヒロイン:イブ・メレディス(人気急上昇中の歌手・25歳) ヒーロー:バーソロミュー・ジョーダン(銀行家・投資家・39歳/通称バート) 

あらすじ
有望な歌手ばかりを集めたショーを見に来ていたバートは、舞台上で艶やかに歌うイブ・メレディスに一目ぼれすることになった。なんとか、繋がりを持ちたいと調べてみたが、マネージャーの守りが堅固で彼女の私生活はうかがい知れなかった。
あとは、財力にものを言わせてマネージャーを落としにかかるしかなく、彼女がスターになるためにはどうしても成功しなければならないショーのただ一人の出資者になるべく、裏から手を回した。
ショーは大成功を収め、舞台であだっぽく歌う彼女に聴衆は喝采を惜しまなかった。その成功の熱気に当てられたままバートは楽屋口に顔を出したが、彼の財力、地位など歯牙にもかけないイブはけんもほろろな態度を取ってきた。
彼女の余りに冷たい態度に我を忘れたバートは、つい侮辱的な態度をとってしまい更に、イブの態度は硬化することになった。こんなはずではなかった……バートは謝罪をこめて大輪の深紅の薔薇の花束を彼女の元に送り届けた。
しかし、イブから届いた電報には、
「ウケトッタ ステタ イブ メレディス」

半年前に、有望株の歌手ばかりを集めたショーで、イブを見初めたバートが満を持してアタックを開始。
けれど、過去に受けた傷がいまだ癒えていないイブ(恋人だと思っていた男性が妻子持ち、無理矢理体を奪われるという体験をします)は、バートをけんもほろろに拒絶します。
それでもあきらめきれないバートが食い下がっていく内に、イブが過労でダウンしてしまい……。
冷徹な銀行家であるバートが、イブに関しては冷静に判断できないようで、感情、言動が右往左往。
バートの絶大な自信がイブの拒絶で粉々となるんですが、かなり打たれ強いです。
ようやく、互いに思いが通じ合ったところで、イブの過去が波乱を起こしかけるのですが血相を変えて部屋に飛び込んできたバートの背水の陣に近い告白が、切羽詰まっていて素敵です。


ふたつの結婚 R-377 ハーレクイン社  発刊:1985.03.20
ヒロイン:ローラ・ジャスミン(秘書・19歳) ヒーロー:ギデオン・メイトランド(次期社長・36歳) 

あらすじ
バハマ諸島での休暇を終えて出社したギデオンは、仕事の話をしに、社長室にいた。そこにコーヒーを持って現れた秘書は、ギデオンが初めてみる顔だった。名前を尋ねたギデオンに、その女性は
「ローラ・ジャスミンです」と、顔を真っ赤に染めながら、落ち着かなげに答えるのだった。
生真面目で年のいった秘書が着用するような服に身を固めた新人秘書だったが、その幼い顔立ちとほっそりとした肢体にギデオンはどうしようもなく惹かれた。
それは、「ジャスミン」という姓がもたらす過去のしがらみを、無視するほどの強い感情だった。

初めて、取り憑かれるほどの恋に落ちてしまったギデオン。職権乱用までして、ローラの履歴書を調べ上げ、退社後、自宅までこっそりつけていったりという行動に出ております。
ローラとの間に、なんとかきっかけを掴もうとしていたところ、会社に流感が蔓延。秘書がダウンしたため、代わりの秘書としてローラがやってくることとなって、ほっくほく。
夕食に誘ったりと頑張るわけですが、
「何故、自分のように取るに足りない小娘にギデオンが興味を示し始めたのか」、皆目見当がつかないローラの尻込みにあって苦戦。
それでもなんとか、彼女を手に入れかけた時、「過去のしがらみ」がその脆い絆を粉砕することとなります。ローラの兄マーティンが、ギデオンの亡くなった妻の不倫相手だったという過去の出来事に、混乱してしまったローラはギデオンを追っ払ってしまうのでありました。
まー、ギデオンがかなり粘り強くというか執着心丸出しで、その後もローラに食いついてます。美味しいなぁ。
ギデオンの後妻におさまろうとしていた女性の暗躍もあって、緩急のある作品となってます。


サラの帰国 R-402 ハーレクイン社  発刊:1985.07.20
ヒロイン:サラ・ハミル(モデル・20歳) ヒーロー:ドミニック・ソーン(実業家・35歳/愛称ニック) 

あらすじ
サラは、6ヶ月前の自動車事故で母と義父を一度に亡くした。彼女自身も、頭と脚に重傷を負い、半年経った今、ようやく傷も癒え始めていた。しかし、事故前までしていたモデル業に戻るにはまだ早く、母の故郷であるイギリスでゆっくり静養することにしたのだった。
1歳の時に、母達とともに渡米して以来の帰郷で、母の姉にあたるスーザンの元に身を寄せることになった。伯母夫妻には子どもがなく、サラは手厚く歓迎された。
しかし、ロンドン観光をのんびりと楽しむつもりだったサラは、行く先々で見知らぬ男性から、
「マリー」という女性に間違えられ、落ち着かない気分に陥るのだった。

自分にそっくりの「マリー・リンドレイ」とサラの関係は、双子の姉妹であることが早々に判明。そして、マリーの婚約者であるドミニックとの間に禁じられた恋が燃え上がることとなります。
サラがドミニックに恋してしまうことは、致し方ないとしても、ドミニックの態度がなー。訳ありとはいえ、マリーという婚約者がいる身でありながら、サラとベッドを共にしよう虎視眈々のドミニック。サラがバージンでないと思い込んでいるので、初めてでないから抱いてもいいと思っている彼の倫理感が、ごにょごにょ。
まぁ、恋に落ちた男の暴走と言ってしまえば、許せるかも知れないんですが……。うーむ、引っかかるー。


二百ポンドの報復 R-432 ハーレクイン社  発刊:1985.12.20
ヒロイン:ダニエル・スミス(売れっ子の肖像画家・26歳/愛称エリー) ヒーロー:ニコラス・アンドラカス(石油王・38歳/愛称ニック) 

あらすじ
この一年、援助し続けてきた女優オードラが舞台で主演をすることとなった。ニコラスは宣伝も兼ねて舞台衣装をつけたオードラを、今一番の売れっ子肖像画家であるダニエル・スミスに描いてもらおうとしていた。
こちらの名前と気前の良過ぎる代金を呈示すればすぐにでも追従してくると思っていたが、ダニエルのエージェントからは色よい返事は戻ってこなかった。
ようやく、会う段取りをつけたニコラスは、オードラを従えてダニエルのアトリエの戸口をくぐった。
出迎えてくれたダニエルは、淡い黄色の髪と緑色の瞳をもつ印象的な女性で、彼女と話を進めている間、ニコラスは、隣にいるオードラの存在を忘れがちだった。

「いつでも無いものねだりをする。仕事のみならず、女もだ」
ダニエルの父親が、ニコラスに対して正鵠な人物評を辛辣に下してます。
7年前、泥沼の離婚騒動の真只中にあったニコラスは、親族の催したパーティで一人の若い女性ダニエルをフラットに連れ込み、ほぼ力技でベッドをともにします。酔いのままに、ダニエルを娼婦と決めつけ新札で二百ポンドをベッドにばらまき、自分がシャワーを浴びている間に出て行けと罵るんですよ。彼が避妊しなかったために、ダニエルは妊娠。早産の末に生まれた赤ちゃんは十日間で命を散らすという結末に行き着きます。娼婦扱いをされたこと以上に、その後、なんの配慮もしようとしなかったニコラスに、ダニエルは絶望と恨みを抱くこととなります。
2人が再会し、ニコラスが傲慢にもダニエルに強く迫っていったために、心の澱が吐き出されます。7年前のニコラスの過去の所業を有耶無耶にせずに、糾弾していくダニエルがひどく切ない。
そして、突き付けられた真実に戦慄くニコラスの憔悴ぶりが際立ってます。


氷のようなシャナ R-438 ハーレクイン社  発刊:1986.01.20
ヒロイン:シャナ・ローガン(女性雑誌の編集長・24歳) ヒーロー:リカルド・ダルモント(実業家・37歳/愛称リック) 

あらすじ
生まれてこの方、リックは、付き合っている女性に対して、永続的な関係を決して求めてこなかった。飽きたら一方的に別れを告げる関係を結んできたのだ。
付き合い出してまだ日も浅かった、売り出し中の若手美人女優を唐突に切り捨てたのも、その酷薄な情の現れだと世間は見なしていた。しかし、それは真実の一端だった。
2週間前に、どうしても、手に入れたい女性が、リックの前に現れたのだ。
シャナ・ローガン
6ヶ月前に、カーレーサーだった夫を事故で亡くしたばかりの女性だった。
「何としてでも付きあいたい」
リックは、あらゆる手を尽くしてみたものの、素気なく退けられるばかりという、今までに無い体験を強いられるのだった。

1年前に、夫ペリーが事故を起こして背骨を損傷し、レーサーを引退せざるを得ない状況になってから、シャナとペリーの仲がこじれることとなります。夫婦仲は暗礁に乗り上げたまま、とうとう6ヶ月前にペリーは飲酒運転の上、事故死。同乗していたシャナだけが生き残ってしまいます。
アメリカからロンドンに会社買収のためにやってきたリックは、憂愁を身にまとい、夜ごとパーティに出席するシャナを一目見て、自分のものにしたいと妄執にも似た強い思いを抱くのでありました。
もう、シャナを手に入れようと、あらゆる手段を繰り出してくるリック。彼女が出席するパーティを調べ上げて同席したりと健気に頑張るものの、全くなびく気配をみせないシャナに業を煮やして、大人げないことまでしてます。
余りに強引過ぎたため、シャナの態度を硬化させ、諦めかけたり(他の女性と付き合ってみたり)もするのですが、やっぱり彼女が欲しい……。運良く、性質の悪い風邪に罹ったリックの看病をシャナがしてくれたことから、2人の仲が好転していくのですが、ここで「難病発覚!!」という王道展開へと、突き進むのでありました。
メモ:難病(心臓疾患)もの。


結婚コンプレックス R-450 ハーレクイン社  発刊:1986.03.20
ヒロイン:ジェシカ・バクスター(主婦→ スーパーのレジ係・25歳) ヒーロー:ジョン・マシュー・シンクレア(会社経営・36歳) 

あらすじ
経営する会社の従業員と親睦を深めるパーティだからといって、出席するのに義理以上の感情が、マシューには湧いてこなかった。執務室にこもって仕事をしていたのは、会場に入るのをできるだけ遅らせたかったからだ。
カチャリ。
ノックもなしに扉が開かれた音に、マシューは顔を上げた。
正面の窓ガラスには女性が映っていた。マシューが36歳まで独身を貫いていたのは、この女性のためだったのだと気付かせるほど、心惹かれる姿が窓ガラスに浮かび上がっている。
出会えた衝撃に我を忘れたマシューは、余りにも性急にジェシカと名乗ったその女性に迫りすぎていた。
マシューに対しての怯えを隠しきれていないジェシカを、何としてでも自分のものにしたい。
決意を固めて、ジェシカの肘をとってパーティ会場に向かった先で、まさか夫に紹介されるとは思いもしなかった。
社内の女性のほとんどに手を出しているアンドリュー・バクスターの妻が彼女だったとは……。
その上、ジェシカはそんな見下げ果てた男を、心底、愛し抜いている様子なのが、マシューにはたまらなくつらいことだった。

幼児期に両親を事故で亡くし、厳しい叔母に育てられたジェシカは、男性に対して免疫が全くありません。
叔母が亡くなり、心細くて仕方のない時に出会ったアンドリューに、気持ちが急速に傾き、18歳という若さで結婚することとなります。けれども自分勝手なアンドリューとの結婚生活は、彼の浮気癖と金遣いの荒さで、心安らぐ暇もありません。そんな中、生まれた一人娘ペニーの存在だけが、ジェシカの拠り所となっています。ペニーの親権をアンドリューにとられることが怖くて、身動きのできないジェシカ。
そんな時、アンドリューが愛人を同乗させたまま事故に遭って、亡くなります。
最大の障害物であるアンドリューが亡くなって、マシューは堂々とジェシカの身の回りの世話を焼きたがります。
夫に不感症だと結婚当初から詰られていたジェシカは、かなり萎縮気味。萎縮しているジェシカの様子を、アンドリューのことを未だに深く愛しているからだと思い込んだマシューがひたすら悩んでいくのが後半の展開となります。


ファースト・ラブ R-474 ハーレクイン社  発刊:1986.07.20
ヒロイン:ローレン・プレスコット(タイピスト・17歳/愛称ローリ) ヒーロー:アレクザンダー・ブレア(会社経営・34歳/愛称アレックス) 

あらすじ
3週間以上に渡る長期出張を終えて、アレックスは運転するロールスロイスを経営する会社の専用駐車場にバックで入れかけていた。
しかし、その瞬間、側面に古びたスポーツカーが追突してきたのだ。運の良いことに怪我を負うことはなかったが、車体は見事な凹みをくらっていた。
その損傷を苦々しい気分で眺めていたところ、相手の車の運転席から年若い女性が飛び出して来て文句を言い始めた。
「あなたのせいですわ!」

歳の差17年ですよ、このカップル。
ヒロインであるローリは、ほぼ誰彼構わずきゃんきゃん、楯突いてばかりいて幼さ全開!!
それをなだめるというか、口を閉じさせるのに、キスばかりしているアレックス……。彼は一応、歳の差を気にしているのですが、火のついてしまった恋心は消せないと気づいた途端、開き直った行動を取り始めます。
ランチデートをこそこそ隠れてしようとするローリに、自分と一緒にいるのがそんなに不本意かと、ムッとしてしまうアレックス(笑)
2人のロマンスは、複雑な家族関係と過去の因縁をからめて、進行していくこととなります。
ローリが達者な口で反抗してばかりなので、ロマンスの仕上がりは、騒々しくて情緒に欠ける感じ。


ガラスの靴 R-556 ハーレクイン社  発刊:1987.09.20
ヒロイン:ダーシィ・フェイバシャム(秘書) ヒーロー:リード・ハンター(投機家) 

あらすじ
リードが、目の前で、青筋を立てて怒りまくってる。
リードのお母様モードを見失ったのは、そりゃ、私の落ち度かもしれない。その怒りは正当かもしれないけど、どうして私の過去の失敗を引き合いにださなきゃいけないの? 私が靴を右足分ばかり1ダース紛失しているからって、それがリードに迷惑をかけたかしら?
失敗をあげていくリードに律義に「無くしたのは左足1ダースです」って抗議したのがまずかったのかしら……やだ、青筋がふえているわ。
リードがモードを探しに行くと息巻いてる中、なんとか自分のオフィスに戻ったダーシィは、ほっと息をつこうと……息をつくヒマもなく、共同経営者のマークがダーシィに今晩のデートの誘いをしにやってきた。なんて、タイミングが悪いの、こんなキスしてる所をリードに見られたら、私は首だわ。
ダーシィは、マークを必死に追い出そうと躍起になっていた。

ダーシィの物忘れとモードの上の空がとっても素敵な雰囲気と掛け合いを醸し出してます。モードがダーシィに向ける微笑みを
「ぼんやり者同士へのなれ合いの微笑みと思えて仕方がない」と自嘲するくらい、二人でリードの神経をぼんやり攻撃で逆撫で(笑)してます。リードの投機に対する情報を「親しい間柄の人間達の中の誰が漏らしているのか?」、ダーシィの「意識が一つに集中できなくなるとぼんやりしてしまう」のは何故か?の二つの謎解きとともに、ダーシィがくり出す軽妙な(?)「ぼんやり攻撃」に心底、惚れ込んでいるリードが読んでて楽しい作品。


花開くとき R-618 ハーレクイン社  発刊:1988.07.20
ヒロイン:ブリナ・フェアチャイルド(モデル斡旋会社経営・元トップモデル・24歳) ヒーロー:ラファティ・ギャラハ(実業家・39歳/愛称ラフ) 

あらすじ
ブリナに初めて出会った時、既に彼女の横には親友のコートがいた。ラフは、仕事の打ち合わせをしていた2人の間に、強引に割って入った。
コートがブリナに一方ならぬ感情を抱いているのは、見て取れた。その上、彼女の方もコートに好感を寄せている……。
2人が親密な関係になる前に、なんとかしなければならない。
ラフは、何としてでも自分を印象づけようとブリナのオフィスに赤いバラを贈った。彼女がデスクに戻るの待つようにバラを一本。その30分後には二本。更に30分後に三本。そして、30分ごとに三本ずつ。
夕方、食事に誘い出すためにブリナの会社に出向いた時、昼間、コートとの仕事上の席をかき回したことで抱かせてしまった敵意が彼女から消えていることにラフは、ホッとするのだった。

互いに、胸にたぎる熱い思いを隠してしまったためにこじれていく2人の関係。
特に、ラフはブリナが親友のコートとも付き合っていると思い込んで鬱々の日々。そんなラフの態度に、もうすぐ捨てられてしまうんだわ……と、絶望的な気分に陥っているブリナ。
そんな時に、ブリナが妊娠。彼女は一生、子どもが産めないと思っていたところに宿った命に、茫然自失……。
ラフに捨てられても、この愛しい存在が支えになると、自ら別離を決意していくのですが、ブリナにご執心のラフが簡単に引き下がるわけもなく食らいついてくることとなります。
親友コートに嫉妬して、大人げない態度をとるラフの描写に、読者はニマニマ。
どう考えてもラフに心底愛されてるとしかいえないと思うのですが、少し長く続いた愛人の立場でしかないと思いこんでいるブリナ。ラフが目一杯振り回されてます。
ラフとコートとの友人関係の結末が、やり切れなかった作品でもあります。


たそがれの訪問者 R-1862 (株)ハーレクイン  発刊:2003.04.20
ヒロイン:ジョアン・ディレイニー(美容院経営者/愛称ジョーイ) ヒーロー:ドミニク・メイスン(大手スーパーチェーン店の後継者/愛称ニック)

あらすじ
大手スーパーが進出することになり、建物の家主から店の立ち退きを言われているジョーイは、立ち退き期限のぎりぎりまで店を開くつもりだった。別にスーパーの建設に抵抗してるわけじゃないわ……工事車両を通すのにうちの店が邪魔なのは確かだけど、シングルマザーは稼げる時に稼がないと何があるかわからないんだもの。
娘リリーと一緒に暮らすというそれだけが、今の彼女の生き甲斐だった。しかし、男性とのデートも、とんとご無沙汰なジョーイが、突然、もてだしたのだ。立ち退きを命じたスーパーの後継者ニックと、リリーの父親の兄あたるデイヴィッド。強引な二人の誘いに、ジョーイの腰は引けがちだった。

家から独立するまで、酒癖の悪い父親に怯えて暮らしていた割に、ジョーイ、根っからのお人よし。デイヴィッドが、本性を隠してにこやかに接し出した途端、
「娘のために結婚した方がいいのかも……」と本気で悩み始めるんだもん。ニック、気が気でなくて牙をむき出した番犬のようにジョーイの周りをうろうろ。財布を忘れるようなドジな姿を見せるので、そのギャップがちょっとおかしい。


復讐は大胆に R-2348 (株)ハーレクイン  発刊:2008.12.20
ヒロイン:ロビン・イングラム(出版会社役員・27歳) ヒーロー:チェザーレ・ガンブレリ(高級ホテルチェーン経営者・37歳)

あらすじ:ガンブレリ家シリーズ
妹カルラが、26歳という若さで亡くなった。いや、殺されたのだ。
見通しの悪い急カーブが続く坂道を運転していたカルラの車に正面衝突してきたサイモン・イングラムに。
3ヶ月の乳飲み子であるマルコを遺していかなければならなかったカルラのいたましさに、チェザーレの心は荒れ狂っていた。
イングラム家から届けられた悔やみの手紙を破って突き返すだけでは、この憤りはおさまらない。
チェザーレはあらゆる伝手と、資金を注ぎ込んでサイモンの行状を調べ上げた。
……サイモンは、ギャンブルで身を滅ぼしていた。事故を起こす前夜もルーレットにのめりこみ、イングラム家の誇りまでもすってしまっていた。
サイモンの無謀な運転は自殺で、それにカルには巻き込まれたとしか思えない状況だった。
イングラム家に、復讐しなければカルラも浮かばれない……。
チェザーレは、サイモンの負債を掻き集め、イングラム家を完膚無きまでに叩きつぶそうと動き出し始めた。

3ヶ月前、チェザーレの妹カルラと、ロビンの兄サイモンが見通しの悪い急カーブで正面衝突事故を起こし、この世を去ります。
カルラは不倫の果てに、サイモンはギャンブルで負った借金地獄という問題を抱えていたことが、読者には初めに語られてます。
責められるのはサイモンの行状だけではないという設定の元、チェザーレが復讐へと突き進んでます。最初は、イングラム家の家業である出版会社を乗っ取る計画を立てていたようですが、慈善パーティでロビンに出会ってから、彼女を自分の妻にして甥のマルコの世話をさせようと画策しだしてます。
……憎い相手を妻にしても溜飲は下がらないような、それに大事な甥マルコの世話をさせるって、安全上、おかしくない?
ロビンは3年という短い結婚生活のあと、昨年離婚したばかり。離婚の理由は、原因不明の不妊ですが、チェザーレが入手した情報ではロビンが子どもを持ちたがらなかったからというもの。
独身生活を謳歌しようとしている彼女を自分の妻に、マルコの母親として縛りつけてやるという復讐を考え出すチェザーレ。
いやいや、イングラム家の家業である出版会社を潰す復讐の方が、ダメージが大きいよね?
一目惚れしてしまった男が自覚のないままに、復讐を金科玉条に掲げて、ロビンをものにしようする物語り。
メモ:チェザーレの父親が先代ガンブレリ伯爵の弟、母親がシチリア人。


伯爵家の呪い R-2355 (株)ハーレクイン  発刊:2009.01.20
ヒロイン:アンゼリカ・ハーパー(議員補佐官アシスタント・26歳/愛称エンジェル) ヒーロー:カルロ・ガンブレリ(イタリアの伯爵・36歳/愛称ウルフ)

あらすじ:ガンブレリ家シリーズ
アンゼリカは、5歳の時にできた義父やその後、生まれた双子の妹達に何の不満もなかった。愛情の満ちあふれた中で、育ったのだ。
だから、12歳の時に、自分の実父がスティーヴン・フォックスウッドだと知った時、さほど興味がわかなかった。けれどスティーヴンが30年連れ添った妻を亡くし、2人の間に子供がいなかったと知った時、名乗り出ても良いのではないかと思った。彼女の気持ちを家族も後押ししてくれた。
それが1年前の出来事だった。初めて会った時から、スティーヴンは、ぽっと出てきたアンゼリカに夢中になった。
持てることの無かった愛娘が現れたから。
しかし、2人で絆を作り上げていこうとしていた矢先、スティーヴンの心臓の具合が悪くなっていることが判明した……。

手術をしなければ余命幾ばくもなく、手術に失敗すれば、遺されることになるアンゼリカの行く末を心配するスティーヴン。1番、頼りになる人物に愛娘を託そうとウルフをロンドン郊外の地所に招くこととなります。
アンゼリカの夫として相応しいのは、ウルフだと思ったから。そのスティーヴンの思惑にまんまとかかってます。
一目会ったその時から、抗い難い互いの魅力に取り憑かれてしまったお二人さん。
ことあるごとに絡みあってます。
特に、ウルフがなー、手を出しまくり。落馬した彼女に何をやってんの。
そして、アンゼリカの抵抗は口だけ。アンゼリカ、そうも簡単に流されるなー。
アンゼリカのことを長年の友人、スティーヴン・フォックスウッドの愛人と勘違いしているくせに、ちょっかいだしてるし。
他人のものに手を出したらアカンやーん。
アンゼリカが、スティーヴンの庶子だと判明した後も、その財産に目が眩んだ妖婦扱いで、やっぱり手を出してるし。
メモ:スティーヴン・フォックスウッド(アンゼリカの父、58歳)


木曜日の情事 R-2380 (株)ハーレクイン  発刊:2009.04.20
ヒロイン:ダーシー・ワイルド(医者・28歳) ヒーロー:ルチアーノ・ガンブレリ(映画プロデューサー・イタリアの伯爵家次男・34歳/愛称ルーク)

あらすじ:ガンブレリ家シリーズ
新進映画寛徳グラント・ワイルドと組んで制作した新作映画は、大ヒットの予兆を感じさせる出来栄えだった。機を嗅ぎつけろマスコミが試写会後のパーティを賑わしているのがその証拠でもある。
しかし、ルークの今の関心事は映画に向かっていなかった。
グラントが、連れてきた印象的なモスグリーンの瞳に、見事な赤毛を背中まで垂らした美女に、釘づけだったのだ。
何としてでも、グラントに紹介してもらおう。
ルークが、自分になびかない女性がこの世に存在することを思い知るのは、このあとすぐ……。

グラントが連れてきていたのは双子の妹ダーシー。医者を生涯の仕事と選んで、人生のほとんどを注ぎ込んでる女性。そして、親友のメリーが告白してきた、ルークに玩ばれて捨てられたという言葉を信じ切って、彼に復讐しなければと思い込んでます。
一方の言い分だけに肩入れして、足下をすくわれる展開のお話し。
互いに相手に対して、スコーンと欲情しあってます。ところ構わず、盛ってます。ま、一線を越えないままハッピーエンドなんですけどね。
メリーが何故、嘘をついたのかは、中盤で明かされて、そのことでルークに謝罪する事態にダーシーは陥ってます。
非をちくちくと責められて、結婚相手をこれでもかと紹介してくる母親を欺きたいルークに丸め込まれたというか、ほぼ力技?で偽装恋人をする羽目へ。
恋人のフリだけだと宣言しつつも、あわよくば、彼女の身体も手に入れたい下心丸見えのルークであります。


クリスマスは愛のとき I-1720 (株)ハーレクイン  発刊:2004.12.05
ヒロイン:エリザベス・フェアファックス(法律事務所の秘書・27歳/愛称エリー) ヒーロー:パトリック・ティモシー・マグラス(実業家・名家出身・38歳)

あらすじ
部下のトビー・フェアファックスから、姉エリーのために、週末のクリスマスディナーのエスコートをして頂けないかと頼まれたことに、パトリックは全く異存はなかった。
エリーの別れたばかりの元恋人が、ディナーの席上で現在付き合っている女性と幸せを振りまく中、支えてやって欲しいというのだ。
そのクリスマスディナーに正当な理由で出席したい事情がパトリック側にもあったし、何よりもエリーのエスコートができるのだ。
5ヶ月前、初めて彼女を見た時から、パトリックの思いは定まっていたのだから。

マグラス兄妹、どうも扉をノックをしないというか、忍び寄るのが特技なのか。その度に、エリーがばつの悪い思いをすることしきり。トップレス姿でいるところを目撃されたり、聞いて欲しくないことを聞かれたりと、恥ずかしさの余りエリーが悶えてます。
名家の出である上に、自身の力で巨万の富を築いている実業家が、自分に興味を持つ筈がないと思い込んでいるエリーと、本気モードでいろいろと気を惹こうと頑張っているパトリック。
パトリックの惚れっぷりは、行間からも滲み出るくらいとなってます。
パトリック側の事情が障害となって、なかなかその思いをエリーに信じてもらえなくて(気付いてもらえなくて)、手をこまねいている彼の焦燥感とか、そりゃーもう美味しい作品でした。