エリザベス・ローウェル

華やかな運命 IM-16 サンリオ  発刊:1984.08.05
ヒロイン:キャサリン・コクラン(カメラマン・29歳/愛称キャット) ヒーロー:トラビス・H・デンバース(船体設計士)

あらすじ
前夫ビリーからひどい扱いを受け、男性に対して不信感をもつキャット。不妊であることで、女性として欠陥商品であるかのように扱われたのだ。酔ったビリーから逃れるためにヨットから真夜中の海へ飛び込み、7キロも沖合に向かって逃げ泳いだ恐怖は忘れることなどできはしない。その時に助けてもらった「天使さん」ロドニー・ハリントンが、今ではカメラマンとして成功し出したキャットのエージェントをしてくれている。
フリーカメラマンとしてのキャットの生活は、請求書との戦いといっても過言ではなかった。医学部で頑張っている双子の妹弟の学費及び生活費、金銭感覚が出鱈目な母が切った小切手の清算、そしてカメラマンとして必要な支払いは次から次へと湧いてくるのだ。睡眠時間が毎日5時間を切る生活を、このところずっと休みなしで続けている。男性が入り込む隙間のない生活の中、夜明けの海で力強く泳ぐ彼が気になっているキャットだった……

トラビスが前妻から受けた不信感なんてさー、金持ちのお坊ちゃんの甘ったれをつけこまれただけ。その後、金と権力にしか興味の無い女性ばっかりとつき合っていた彼の女性の嗜好って一体……と首を傾げざるを得ない(苦笑)
キャットがトラビスから彼女自身には全く覚えの無い侮辱と非難に晒されて、本当に流産するに至るまで怒濤の展開。生き生きと動き回って怒りまくってと活発すぎる程に精神の高揚があった彼女が、流産後の虚無感に漂っている姿はなんかもう、読んでて涙ぐんじゃいます。……傷つけたことを自覚しながらも、トラビスが「ぼくたちの子どもは、またできるよ」と慰めるところが彼女が受けた傷の深さを理解してないわ〜とため息が出ちゃった。どれだけ貴重なものをその手で、粉砕してしまったのかトラビスが理解するのは、キャットの感情を失った底知れない虚無感に触れてからというわけで、彼女が元気にカメラを構えられることさえ可能になるなら、その後、自分の側を離れていっても構わないと強引に尽くし出すトラビス。深い悔悟と愛情が甦ってくれればと万に一つの奇跡を求めてキャットが抱え込んだ傷に寄りそう姿は、胸を打ちます。


もういちど愛の歌を IM-65 ハーレクイン社  発刊:1985.08.20
ヒロイン:アラーナ・ジリアン・リーブス(歌手) ヒーロー:ラファエル・ウィンター(元軍人・特殊部隊/愛称ラフ)

あらすじ
アラーナは、一ヶ月前、故郷で登山中に仕事のパートナーであり夫であったジャックを遭難事故で亡くしていた。偽りの結婚生活に耐えきれず、ジャックに離婚を突きつけた矢先の彼の事故死だった。彼女自身も命が危ぶまれるほどの低体温症にかかっており、身体中が傷だらけだった。そして彼女の記憶から、ジャックが亡くなった前後の6日間の出来事が失われ、新たに男性に対する抑えようのない恐怖が植え付けられていた。
4年前に婚約者だったラフの死を国防省から伝えられ、歌うことだけを生きる支えになんとか、踏ん張ったアラーナ。デュエット歌手のパートナーであるジャックの執拗な求婚に形だけの結婚を挙げた後、ラフが生きていたことを弟ボブから伝え聞いた。ジャックとの結婚の経緯を記し、弟に託した手紙は、開封すらして貰えず突っ返され……。
そのラフが、ジャックの死後、初めて故郷に戻った私を迎えに出向いてくれている。幻ではないか、本当に自分は狂ってしまったのではないか、アラーナの身体が揺らいだ……

アラーナの失われた6日間の記憶を取り戻させる為に、ラフの元部下であるスタン(ジャックのそっくりさん)が首を絞められたり殴られたりと受難の物語。アラーナに対するラフの優しくて寛大な態度は、スタン曰く、中南米のジャングルで鬼のようだったウィンター大尉とはまるで別人のようだとか。信じられないくらい激甘らしいです(笑)
今回がラフにとったら背水の陣だから、アラーナと一生共にできるのなら、何でもする気満々。4年前は軍務で、アラーナと生き別れ。死地を脱して米国に戻ってみれば、アラーナが他の男と幸福そうに結婚している。そして、アラーナが死んだかもしれない遭難事故があって、この世に彼女がいなくなる可能性に気付いたラフが、彼女を取り戻す為に頑張るんです〜。自分の恋情とか衝動をひたすら抑えて、尽くす彼の真摯な態度はピカイチ♪


夏の恋はミステリアス IM-77 ハーレクイン社  発刊:1985.11.20
ヒロイン:ローレイン・チャンドラー-スミス(馬場馬術競技オリンピック選手・25歳/愛称レイン) ヒーロー:コード・エリオット(諜報部員・36歳?)

あらすじ
障害耐久レースのコースを下見に来ていたレインは、木立から音もなく忍び寄ってきた男に、いきなり後ろから突かれて地面に倒された。コード・エリオットと名乗ったその男は、彼女に危機意識の低さを指摘するのだった。
国際情勢専門の政治家を父に持つレインにとって、父のように危険な世界に住む男性は絶対にお断りの存在だった。なのに傷の手当てをしようとするコードの手つき、視線に身体が反応し出すのを止められない……

現状の危機感を嫌というほどレインに叩き込むコード。オリンピックの試合を間近に控えているレインを動揺させてどーする? と思うんですが(苦笑) 彼女の動揺につけ込んで、懐に飛び込んでいくコードの手際の良さがなかなかです。自分でもそういうのは、得意だと胸中告白してるし。
恋に落ちたのは、ほぼ同時の2人。でも生きている世界の違いに一線を引いてしまうレイン。その一線を越えさせようと、コードが護衛の名の元に職権を乱用しているように感じてしまうのは、何故なんでしょう(笑) シャンプーとかマッサージとか、とっても楽しそうに仕事してる〜♪
危険な仕事に従事しているコードが、「不愉快きわまりない」コースの障害耐久レースに挑戦するレインの身の安全にやきもき。コードには良薬は口に苦しの状況下で、自分の生き方を見つめ直すというか……あっさり結論を出してます。それが明かされるのは最後の告白でなんですが、「早ッ」と思うくらい(笑)


復讐はキスのあとに D-212 ハーレクイン社  発刊:1987.03.05
ヒロイン:ドーン・シェリダン(タピストリー作家・21歳) ヒーロー:ローガン・ギャレット(牧場主)

あらすじ
敬慕していた兄を死に追いやった女メアリー・スーの娘ドーンを3年前に奈落の底に突き落としたローガン。賭けポーカーでドーンの両親から牧場を奪い取り、初心だった18歳の彼女に生活の面倒を見てやる代わりに愛人になれと強要したのだ。ドーンは逃げるように故郷を離れた。
そのローガンが急性肺炎を患っているにも関わらず、休みもせず身体を酷使しているという。ローガンの妹で親友でもあるキャシーが、兄を助けてやって欲しいと泣きついてきた。彼が自分の助けなど必要とはしないと絶望的な記憶がありながらも、ドーンはキャシーの頼みを断ることができなかった……

メアリー・スーに復讐できなかった腹いせにその娘ドーンに矛先を向けて、故郷から追い出したローガン。それで気が晴れて幸せな牧場生活を送ったわけでなく、ひたすら自分を痛めつけるような荒んだ私生活。なんかなー、ドーンにも指摘されてるように酒に溺れた兄と同じで復讐に溺れた生活。それだけ思い込んだら一途ということなんですが、思い込まれた方は大迷惑としか言いようがない〜。心象でひたすらドーンを求めてることを吐露し、惹かれるのは身持ちの悪いメアリー・スーの血を引いてるからだ見当外れの理由をつけて……本当に、ちょっとどころでないくらいイカレタヒーローぶり。
……薄っぺらいデザイア作品で良かったわ〜。エディションの厚さで延々とドーンを痛ぶっていたら最後まで読めなかったかも(苦笑)


旅する男 N-204 ハーレクイン社  発刊:1987.07.05
ヒロイン:シェリー・ワイルド(インテリアデザイナー〈美術品のレンタル〉・27歳) ヒーロー:ケイン・レミントン(地質学者・資源開発会社経営)

あらすじ
爬虫類学者(専攻は蛇)である父の研究は、世界中の砂漠が対象だった。物心ついた時から、両親に連れられてあちこちを放浪していたシェリーは、18歳の時に定住することを望み親元を離れた。それから、ほぼ十年。離婚も経験したシェリーは、ロサンゼルスでインテリアデザイナーとして活躍していた。
顧客から紹介を受けてやってきたジョリン・カミングスの屋敷は……自分なら絶対、くつろげない、住みたくない家の見本だった。人間味のある部屋は一つだけで、それはどうやらジョリンの息子の居室のようだった。
お金は入るけれど、面白くない仕事の始まりだわとジョリンがいる居間に戻ってきたシェリーの後ろに、足音も立てずに佇んだ男ケインに、彼女は心が騒ぎ出すのを感じた。

ケインの甥ビリーが飼っている1メートル程の蛇スクイーズ、シェリーのペットである猫のナッジ。2匹が良い味を出してます。ビリーも負けてないし(ペットと同格に扱かってはイケマセン)
根無し草だったシェリーの自分の家に対する愛着は、切ないものがあります。言葉の通じない砂漠地帯で母と共に熱病に罹り助けを呼べなかった心細さは、心に深い傷を残してます。
落ち着いた暮らしを望んでいるシェリーの前に現れたのが、鉱物資源の調査で世界中を飛び回っているケイン。惹かれあう2人ですが、ケインの方が自覚が早かったみたいでかなり、シェリーの感情を急かしてます。
別れた夫から女性としての自信を根こそぎ削り取られたシェリー。その自信をつけさせるための労力を惜しんでないケインの姿勢はかなりの我慢とアッチチで展開されてます。
うーーっと思ったのが、
自分についてくるのが当然というケインの態度……。
シェリーの仕事とか、全然、言及しないんだもん。彼女の根底に世界を見て回ることにたいする憧れがあることに気付いてるからなんだろうけど。


残酷な遺言 HT-2 (株)ハーレクイン  発刊:2006.07.20
ヒロイン:ララ・チャンドラー(大学生・22歳) ヒーロー:カーソン・ハリントン・ブラックリッジ(条件付きの牧場主・31歳)

あらすじ
愛なんてくそくらえだ。
義父が病の末、亡くなり、受け継いだ広大な牧場には、忌まわしい過去のしがらみが幾重にもからみついていた。
莫大な資金の提供を受ける代わりに押し付けられた年上の妻を毛嫌いし続けた義父。そんな夫妻の元に養子として引き取られたカーソンは、温もりのある親子の愛情を知らずに育った。
義父が求めたのは、愛人が産んだ私生児のララ・チャンドラー、ただ一人だった。
妻との契約が理由で認知できない一人娘を、義父は唯一の後継者だとカーソンに公言して憚らなかった。
カーソンはララを慰みものにすることで、義父達に復讐を果たそうと計画を練った。そして、復讐は成功するところまでいったのだ……純真な彼女を、薄汚れた過去の犠牲にすることに後ろめたさを感じて、カーソンが身を引きさえしなければ。
愛情と素肌をさらけだしてくれたララに、冷酷な言葉を投げつけて立ち去った思い出は、4年経った今でも、カーソンを苦しめていた。
「君はまさにあの母親の娘だ。だが、僕はあの父の息子じゃない。小娘を利用するのは僕のやり方じゃない。ほかの方法を見つけて、父に復讐してやる」

4年前、ララを抱かなかったことを後悔しない日はなかったカーソン。
自分のやり方が、間違っていたことに気づいた彼は、何とかララともう一度やり直したいと願うのですが、ララに避けられて叶わず。
祖父が亡くなった時のお悔やみの際もとっかかりを得られず、彼女にとっては父に当る義父が亡くなった時は帰郷すらして貰えずと手詰まり状態の中、牧場の歴史調査を承諾することを餌に、ララを故郷に呼び寄せます。
ララが故郷に足を向けようとしなかった理由が、4年前のカーソンの拒絶にあったことを知った彼は、彼女の信頼を獲得しようと努力を重ねることとなります。
義父の遺言を知れば、ただでさえ危うい状況の絆を、ララは即効、断ち切ってしまうに違いないと考えたカーソンは、過去を捨て去ることで2人の新しい関係を築こうとします。
でも、ララは歴史を掘り起こすことに長けている研究者で、カーソンが隠したいと思っている過去にどんどん近づいていき、とうとう……。
カーソンのブラックリッジ家の血筋に対する憧憬と憎しみの描写にぐっとくるものがあります。
ララの天性の優雅さを知るにつけ、自分の不器用さがたまらなく……義父達から受けた心の傷を癒せるのは、ララだけだという設定が本当に生かされている作品。


珊瑚の海に抱かれて HT-4 (株)ハーレクイン  発刊:2006.08.20
ヒロイン:サマンサ・ブライス・キャメロン(非営利団体OCCの職員・海洋学の博士号をもつ・28歳/愛称マンディ) ヒーロー:デイモン・マッケリー・サッター(非営利団体OCCの海外事業部局長/愛称サッター)

あらすじ
ここ数年、まともに休暇をとっていなかった。
叔母のアンシアが運営する非営利団体OCCの海外事業部の局長として、紛争地帯や、ジャングルの奥地、地球上のあらゆる場所に派遣され続けてきたのだ。
サッターをこき使っていたそのアンシアが、3週間の長期休暇を取りなさいと言ってきた。
何か裏があると、危惧したとおりだった……。
3週間の休暇には、邪魔な存在が付随するらしい。
OCCが主催するチャリティバザーで、独身男性オークションが行われ、その目玉商品としてサッターと過ごす3週間の休暇が掲げられている。
「サッターとの休暇」を競り落とした人間と、3週間も顔を突き合わす?

2年前に、夫アンドリューとお腹にいた赤ちゃんをセスナ機海難事故で亡くすという過去を背負っているマンディ。利己的で浮気性だったアンドリューが亡くなったことは、マンディに大きな傷を遺してません。けれど、流産してしまった赤ちゃんへの哀しみは増すばかり。
「ときどき……自分が死んでいる気がするの」
心の傷は癒されておりません。
今作は、マンディが再生していく物語となってます。大好きだった海はもちろんのこと、バスタブに足を浸すことでさえ、気分が悪くなったりパニック障害を起こしてしまうマンディ。そんな彼女が再び、海に潜れるようになるのか?
あと、最初の方に、独身男性オークションの様子が生き生きと描かれ、物語に引き込まれます。
マンディの粋な軽口に、ニマニマ。