ジャクリーヌ・ギルバート

さそり座にご用心 I-91 ハーレクイン社  発刊:1983.09.05
ヒロイン:フランシス・ヘロン(女優・25歳) ヒーロー:フェリックス・ラヴェンスカー(テレビディレクター・36歳)

あらすじ
フランシスは、舞台で共演していた俳優マークと、いい仲になりかけていたが、彼が妻帯者であることを知り別れを決意した。妻とは別れるつもりだと言い募るマークに、やり直したほうがよいと諭し、未練を引きずるからと役を降りてロンドンに戻ったのだ。
端役で凌いでいたところ、ルームメイトのゾーイがフランシスにうってつけの役があると教えてくれた。
しかし、コーンウォール訛りのあるヒロイン役のオーディションを受けるために急いでいたフランシスだったが、行き道で心臓発作を起こしていた年配の女性を助けて自宅まで送り届けたり、会場のビルでエレベーターの故障に見舞われたりというトラブルに遭うのだった。
閉じ込められたエレベーター内の同乗者は、自分の容貌を鼻にかけたどうにもいけ好かない男性で、フランシスはますます自分の運が見放されたとしか思えないとため息をつくしかなかった。

誤解もの。
物語の展開が、上手いです。
故障したエレベーターに同乗していた男性がフェリックスで、実はフランシスがオーディションを受ける予定だったドラマのディレクター。そして、心臓発作で苦しんでいた女性の息子であり、彼の双子の妹の夫がマークだという設定。
フェリックスの頭の中には、フランシスが妹夫婦の仲を壊そうとした希代の悪女という思い込みがずっしりと植え付けられてます。
フランシスに対するフェリックスの態度が、事あるごとにひどくなったりする理由が明かされた時、
「なるほど!!」
だからと言って、一度放たれた暴言は消えないもので、誤解していたことを謝罪しても、寛大でユーモアのあったフランシスが、自分の謝罪に冷たく対応するだけという現実を突き付けられて、顔色を失うフェリックスに溜飲が下がるのであります。
「僕と同じくらい君にとっても大事なことにちがいないと思い込んでいたなんて……僕に失望しても、母のことまで同じように考えないでくれることを祈っているよ」 (←フランシスに親切だった母親を出してくるところが策士だわー)
メモ:業界の影響力を駆使して色々と画策・自動車事故に巻き込まれて失明の危機


恋芝居 I-143 ハーレクイン社  発刊:1984.05.05
ヒロイン:オリビア・ダーシー(舞台女優・25歳/正式名称ビアトリス・オリビア・ダーシー) ヒーロー:マシュー・レイノア(演出家・次男・34歳/正式名称マシュー・ベネディック・レイノア/愛称マット)

あらすじ
舞台主演した役は、オリビアにとって当たり役だった。
このまま順風満帆に女優としての道を歩むかに見えたが、たった一人の身内だった父が亡くなり、気を張っていたものがぽっきりと折れてしまった。喜劇俳優だった父は、オリビアが女優としての道を進みはじめるために援助を惜しまなかったし、誰よりも喜んでくれたのだ。
唯一と言ってもよい、理解者の父がいなくなってオリビアは、このまま女優としてやっていくかどうか迷っていた。しかし、迷っていても稼がないと暮らしていけない身分だから、一時、女優を休業し人材派遣会社に登録しタイピストとしての職に就くのだった。
父が亡くなって一年近く、そうやって暮らしていたオリビアの元に新しい職場が紹介された。
医者をしているレイノア家で、タイピストを求めているとの紹介に、オリビアは大粒の雨が急に降り出した中、ずぶ濡れで到着するのだった。

誤解もの。
有名芸能一家だったレイノア家。女性ファンやのし上がろうとする女優たちが、なんとか一家に入り込もうといろいろとしでかしたおかげで、マシューの人間不信は相当なものとなってます。
そんな中、何も知らずにやってきたオリビアは、マシューの疑り深い詰問にカッチーン。
マシューの父は有名俳優であるチャールズ・レイノア。次男のマシュー自身、演出家として名を馳せ、三男も足元を固めつつある俳優、そして医者である長男。
誰に取り入っても、美味しいだろうと言い続けるマシュー。オリビアがどんどん、マシューに対して頑なになっていくのは当然なのでありました。
オリビアの真面目な就労姿勢や、裏表のない人間性、面倒な雑用も嫌がらずにこなしていく姿に、自分の考えは間違っていたと気付いた時には、もう遅い状況に陥っています。
弟がオリビアと仲良くしているのに嫉妬したりと自業自得の感情に翻弄されるマシュー。
それでも、やせ我慢をしている姿に哀愁が溢れております(笑)


君にアンコール I-194 ハーレクイン社  発刊:1985.02.05
ヒロイン:イモージェン・アデア(舞台女優・25歳) ヒーロー:ナット・ボーモント(演出家・大地主の跡取り)

あらすじ
3年前、心の底から愛して結婚したナットは、イモージェンに要求するばかりだった。
幼い頃に母親は亡くなっており、親しい身内は父親だけという彼女に対して、ナットは何が何でもオーストラリアに進出する自分についていくのが当然だと言う態度を崩さなかったのだ。
愛娘を手放す立場にある父に猶予をあげて欲しいと懇願するイモージェンとナットの話し合いは溝が深まるばかりで最後には、醜い大げんかになってしまった。
一緒に住んでいたアパートを飛び出したイモージェンは、それでも、オーストラリアに出立する2日前に、仲直りのきっかけを作ろうとナットを訪ねた。しかし、イモージェンが見たものは、酒瓶が散乱した荒んだ部屋と彼のガウンを身体にひっかけて出てきた女性だった。
ナットは、そのままオーストラリアに旅立ち、毎月、小切手が送られてくる以外は音信不通という間柄になってしまっていた。
その彼が、イギリスに帰国し、イモージェンが主役をする舞台の演出をするのだという……。

別居夫婦の再会もの。
ナットが低体温系の描かれ方というか、冷気をまとったヒーローというか。自分の不出来を棚において、相手を詰問してばっかり。狭量な男はダメっす。
3年前、イモージェンをその父親と奪い合って、負けても当然のような度量の狭さから成長が見られません……。父親と和解しようという態度も薄いし。
大げんかして、憂さ晴らしに酒を痛飲して、その勢いのまま浮気したという過去を持つナット。そのことを心底悔いて3年前に出した手紙の中で謝っていたようですが、内容が読者には知らされてません。本文中で、理屈をこね繰り回して頭を下げないままだからか、スッキリしない読後感。