ジェイン・A・クレンツ
バラエティの飛んだ設定が多く、ヒロインがとっても魅力的。おきゃんな性格のヒロインが多いように思います。
別名義に、ステファニー・ジェイムズ、アマンダ・クイックジェイン・キャッスル名義の作品があり。

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運命のいたずら P-12 ハーレクイン社  発刊:1987.12.20
ヒロイン:ハナ・ジェシット(大学の進路指導カウンセラー) ヒーロー:キデオン・ケージ(投資会社の経営者)

あらすじ
大学の進路指導カウンセラーが、いかさまカードをすることになるなんて……でも、弟ニックの会社を救うためなら、いかさまカードのひとつやふたつ、ためしてみる価値はある。
のるかそるかの賭けにギデオンが、ついてくれるか、ここは説得のしどころとばかりに、ハナはキデオンの「進路相談」をし始めたのだった……

キデオン、ハナの「進路指導」を受けさせられてから人生観は変わるし、ハナに譲られた遺産を巡っての騒動に自分から首を突っ込んでいくしで、とっても生き生き(笑)
ギデオンとニックの会話も軽妙だし、ハナに遺産を残した伯母さんの「超弩級」の嘘が最高。
私の上のあらすじもへなちょこだけど、裏表紙の「あらすじ」……全部読んだ人が書いたのかしら?って思いましたことよ(苦笑)
読書欲をそそらないし、なんせ、ニックの会社は「無事」じゃないんだもん。その上でのハナとキデオンの「ああ言えばこう言う」会話が面白いのに……あらすじだけで判断しないで、読んで欲しい作品。 


不安な関係 T-11 ハーレクイン社  発刊:1985.12
ヒロイン:アビー・リンドン(サプリメントの卸業者・29歳) ヒーロー:トール・ラティマー(先物取引のディーラー・39歳)

あらすじ
週一回、開かれる生け花教室に通うのは、トール・ラティマーにとって存外の楽しみとなっていた。なぜなら、教室にアビー・リンドンが通っているからだ。
3週間前、アビーが生ける花の衝動的な形に、トールは目を見張った。それ以来、彼女の動向が気になって仕方がない。抑制された美のなんたるかを知るために通いだした教室で、一番心惹かれたのが自由奔放な彼女だとはおかしなものだった。
しかし、3回目の受講である今日、アビーの生けた花はどことなく精彩を放っていない。本人自身も、いつもと様子が違うことに、トールは気付くのだった。

何事にも動じず、抑制のとれた言動をするトールは、自分がユーモア精神に欠ける性格だと認識済み。
人生を謳歌し、少しばかり衝動的な言動に走るアビー。
性格的に極地の二人であるが故に、惹かれあいます。
今日はディナーを一緒にとって、その夜はベッドを共にしたいと思ったトールは、アビーを誘うわけですが……いきなり、
「ベッドへさそっているんだ」は、直裁的すぎ(笑)
サプリメントの卸という仕事が忙しい上に、アビーの周囲に、何やらきな臭い状況が見え隠れ。
誰かから脅迫を受けているようなアビーの様子に、
「俺の女を守って何が悪い」論理で、トールは首を突っ込み始めます。
トールの押しの一手で、ロマンズが進展していくこととなります。


疑惑のコラージュ T-47 ハーレクイン社  発刊:1987.06.20
ヒロイン:ジェイミー・ガーランド(個人秘書・29歳) ヒーロー:ケイド・サンティーリ(釣り船の船長・元会計士)

あらすじ
妹夫婦が投資詐欺の被害者になった。虎の子の預金をだまし取られた妹夫婦のために、ケイドは大掛かりな詐欺事件を引き起こした中心人物と目されるハドリー・フィッッジェラルドを内偵するのだった。
ハドリーの姉である画家イサベルに取り入る過程で出会ったのは、秘書ジェイミー。彼女の豊かな表情は、ケイドの心をとらえて放さなかった。
2カ月余りの付き合いの後に、ようやくベッドを共にした翌日、思いもかけない事態が2人を襲った。

ハドリーが逮捕される時には、その場と混乱からジェイミーを遠ざけていようとケイドは完璧な計画を立てていたのに、その目論みは木っ端みじん。
情報を得るために、利用されたと怒り心頭なジェイミーに、ケイドは対峙することとなります。物事を対処するには、冷静に分析して、最短距離での的確な判断で動くのが一番だという信条をもつケイド。
そんな彼だからこそ、情報源として利用されたとジェイミーが思い込んでしまうのは当然な設定となってます。まぁ、ジェイミーも思い込みが激しかったりするので、どっちもどっち(笑)


お願い、探偵さん T-229 (株)ハーレクイン  発刊:1995.01.20
ヒロイン:マーガレット・グラッドストーン(宿屋の経営者・もうすぐ30歳/愛称マギー) ヒーロー:ジョシュア・ジャニュアリー(調査会社の共同経営者・私立探偵・もうすぐ40歳/愛称ジョシュ)

あらすじ
身体中にできた打ち身と左足首のひどい捻挫は、顧客である会社社長の令嬢誘拐事件を解決したからだった。
私立探偵として、仕事一筋に生きていたジョシュは、共同経営者に指摘されたように、精神的にも疲労がたまっていた。
怪我の療養も兼ねることができる仕事があると勧められたのが、田舎の宿屋で頻発しているトラブルの解決だった。
朝食夕食付きで、宿泊代金1ヶ月無料にするから、ここ最近見舞われている騒動の原因を調べ上げて欲しいというのだ。
この際、療養も兼ねて以前からしたいと思っていたミステリー小説の執筆をしようとその宿屋にジョシュは出向くのだった。雨の中、到着した宿屋でジョシュを迎え出たのは、好みのタイプとは正反対の、素朴で無邪気な雰囲気をもつ女性だった。

マギーは好みのタイプでは全く無いのに、一目みて気に入ってしまったジョシュ。そして、宿屋に滞在して、
「わずか1週間ばかりの間に、いつのまにかマギーは自分のものだ」という気になっています。
だから、マギーの友人である不動産屋のクレイが、彼女をディナーに誘い出した日には、帰宅するまで起きてまっているという入れ込みよう。
マギーに信用して欲しいと願うジョシュは、血液型を初めとしてありとあらゆる照会の書類を用意しようとするのですが、
「そんなもの、どうでもいいわ、ジョシュ。私、あなたを信じる」
職業上、世知辛いものばかり見続けてきたジョシュにとって、マギーのその誠実さは、至宝のような存在となるわけです。自己抑制をしてマギーのペースに合わせようと努力するジョシュと、勇気をかき集めてジョシュを誘惑しようとするマギーの言動は、微笑ましい限り。


誇り高き御曹子 HA-2 (株)ハーレクイン  発刊:2007.01.05
ヒロイン:プルーデンス・ケニヨン(農業開発研究基金の広報担当員・27歳/愛称プルー) ヒーロー:ケイス・マコード(農業開発研究基金の重役研究員・36歳/愛称マコード)

あらすじ
プルーが後ろを振り返りもせず、マコードから去った。
出会ったのは6ヶ月前。一緒に暮らし始めてから3ヶ月。2人の仲が、順調だと思っていたのはマコードだけだったらしい。
付き合う時に、結婚には興味がないとマコードは、はっきりとプルーに告げていた。
それを承知の上で、付き合い出したのに、彼女は、結婚を望んできたのだ。
結婚を拒否したマコードに、プルーは、別れを告げた。
最後通告を突きつけても、結婚などしない、駆け引きをしようとしても無駄だと言い放つマコードに、
「傷が浅いうちに手を引いて出ていきたいだけ。あなたといても未来がないから」
マコードは、彼女がすぐに戻ってくると高を括ろうとしていた、しかし、届いた1通の請求書の封を開けた時、彼女の決意の固さに気づくことになるのだった。

この作品、結婚を望むプルーをマコードが排除してしまう場面から始まります。
というより、プルーが彼に見切りをつけるという苦渋の選択。
恋人としての仲も深まっていた時期に、プルーが何故、マコードに強く結婚を迫ったのかはすぐに明かされます。
それにしても、マコードに対するプルーの揺るがない信頼が良かったー。
「どうしてそこまで僕のことを信頼してくれるのか不思議だよ」
マコードとその両親の断絶している仲をプルーが取りもっていく展開も好き。
3年前、マコードの婚約者が命を落とした無謀な運転による衝突事故は自殺ではないかと目されています。妊娠していた彼女をマコードが捨てたことで、自暴自棄になっての事故。そのことで、家族はマコードを有無を言わさず断罪し、彼もそれ以上の言い訳を口にせず……家族の仲が途切れたままの3年間。
そのこじれてしまった絆をプルーが解きほぐすこととなります(マコードの弟カールの妻がしかけてくるイケズもキッパリいなして素敵)
原作が丁度、20年前に出ているんだけど、どうして今まで翻訳発刊されなかったのかしらん?


涙の相続人 HA-8 (株)ハーレクイン  発刊:2007.03.05
ヒロイン:レベッカ・ウエイド(社長補佐・30歳) ヒーロー:カイル・ストックブリッジ(商業不動産会社経営)

あらすじ
3世代に渡って諍いを続ける原因となった土地を相続したレベッカ・ウエイドを、いち早く探し当てたのはカイルだった。
そのカイルが、レベッカから土地を譲り受ける算段をとる前に、彼女のひととなりを把握しようと雇うことになったのが、2ヶ月前だった。
レベッカが社長補佐としてカイルの仕事にかかわるようになってから、社内の仕組みも雰囲気も劇的に変わり、そして何よりもカイル自身が変化を遂げた。ひどい癇癪持ちの男性という見方しかされていないカイルが、レベッカだけには本気の癇癪を落としていないのだ。
こんなにもベッドに連れ込みたいと思った女性は、レベッカだけだった。 土地の問題について、早急にレベッカに相談しなければいけないのは重々承知であったが、ようやく2人の間に築き上げてきたこの関係を潰して仕舞いたくなかった。

カイル自身これ程までにレベッカに対して恋情が沸き起こるとは思いも寄らなかったわけですが、そこはストックブリッジ家の男。
欲しいものは、はったりをかましてでも、手に入れていく性分なので、レベッカもカイルの手の中に落ちていくこととなります。
でも、土地の問題が2人のでき上がったばかりの親密な関係に、楔をはなっていくのは当然のことで、レベッカが憤りながら、過去の因縁へと立ち向かってます。カイルと宿命のライバルであるグレン・バラードが、レベッカとグレンの妻ダーラそれぞれにプールに突き落とされる場面が好き。
題名が「涙の相続人」となってますが、レベッカが悲しみに暮れて涙するヒロインではないので、題名が浮いた感じがしてなりません。
ちなみに原題は
「A Woman's Touch」


薄情な花婿 HA-42 (株)ハーレクイン  発刊:2008.02.05
ヒロイン:ケイティ・ランダル(旧家の令嬢・馬の繁殖専門家・28歳) ヒーロー:ギャレット・コルトレーン(農業、牧場の経営コンサルタント会社経営・35歳)

あらすじ
父が経営していた牧場が立ち行かなくなってから、ギャレットの人生はどん底だった。両親を失い、どうしようもない不良となった少年を雇ってくれたのは、ハリー・ランダルだけだった。
名家であるランダル家が所有している厩舎で、ギャレットは牧場についてのイロハを身体で覚えた。そして、若かったから自分の力を試したくて、ロデオ大会の狂騒に飛び込んでスターの地位を獲得もした。しかし、自分の命をかけて得るスターの地位にいつまでもしがみついていく人生は、ギャレットの本望ではなかった。
豊かで堅実な生活をおくりたかった。
だから、農業や牧場の経営コンサルタント会社を起こし、ひたすら成功を目指した。
その結果、有り余るほどの富を手に入れることが出来たのだ。
どうしようもない人間だったギャレットを最初に受け入れてくれたハリー・ランダルに、今の成功した自分を見てもらいたかった。
ハリーを訪ねたギャレットは、そこで美しく成長したケイティと再会した。ハリーの愛娘であった幼い彼女を、何度、小型の鞍に乗せてやったことか。
ケイティが、ギャレットを眩しそうに見上げてくるその視線は、あの当時のものと変わりはなかった。

結婚初夜に
「心から愛しているわ」と、告げたケイティに言葉で返さなかったギャレットは、翌朝、離婚をつきつけられることとなります。
結婚生活は深い愛情を土台に営みたいと夢見ていたケイティにとって、ギャレットの結婚観(ケイティの血筋、アラブ馬の繁殖家としての手腕、その穏やかな性格などを鑑みて妻にふさわしいと決断)は、とてもつらい現実となります。
愛のない結婚生活を送るよりも、離婚して違う人生を歩み出さなければと決断したケイティは、ギャレットに離婚を初夜の翌朝に申し出てます。
もう一度、ケイティを抱く気満々だったギャレットはびっくり、青天の霹靂。
結婚生活をあきらめてしまったケイティと、絶対に継続させてみせると粘りをみせるギャレット。
ギャレットの、策略的なようでいて、全くスマートでないやり口が勝手だなーと思いつつ、笑える。
亀裂の入った結婚生活の立て直しを主軸に、新居で雇われている家政婦の不穏な動きをからめて物語りが進行していくこととなります。


情事という名の罰 HA-53 (株)ハーレクイン  発刊:2008.05.05
ヒロイン:ヘザー・デヴァニー(建設会社のファイリングマネージャー・30歳) ヒーロー:フリン・ラメージ(建設会社の共同オーナー・38歳)

あらすじ
8ヶ月前、離婚とそれに伴う一人息子の親権争いで敗訴の痛手で被った怒りと鬱屈を、フリンはヘザーにぶつけた。
彼女が差し出してきた愛情を、つかの間の情事以下という扱いで叩き落とした過去をなんとか、償い、共に未来を歩みたいとやってきたが、状況は思わしくなかった。
以前、住んでいた居心地の良いアパートを引き払い、どう見ても廃屋に近い一軒家に居を構えたヘザーを訪ねてきたフリンに対して、門前払いを食らわせたがっている。
強引に、家の中に押し入ったフリンを、彼女が冷ややかに玄関を広く開けたまま、見据えていた。


ヘザーが怒り心頭なのは、当たり前。
彼女に再度、振り向いてもらうために「紳士的」な態度で「食らいついていく」フリン。
ヘザーの耳の痛い糾弾を馬耳東風で聞き流して、どれだけ、彼女と共に歩む未来を渇望しているかを滔々と述べてます。
その押しの強さが身勝手だなぁと感じつつ、必死なんだと思えば可愛い。
うむ、紙一重。
口をつぐんでいた一人息子のジェレミーの存在が、早々にばれて、それも一波乱の要因となりかけるのですが、運の良いことに(?)親子で胃腸風邪にかかり、ヘザーから手厚い看護をもらうという僥倖に。2人の仲の修復に励むフリンと、様子見のヘザー。
そういえば、ヘザーの住んでいる古屋に不法侵入があったりとミステリー要素もあるのですが、それはまあ、オマケみたいな位置づけとなってます。
あと、ヘザーの友人たちがコミカルに評する「離婚した男性達の言動と対策」が辛辣で笑えた。


連れ戻された婚約者 HA-62 (株)ハーレクイン  発刊:2008.07.05
ヒロイン:デボン・エルウッド(派遣社員・27歳) ヒーロー:ガース・サクソン(大規模牧場主・36歳)

あらすじ
両親亡き後、弟2人の面倒をみ続けいてたデボン。
そんな彼女を親身に支え続けたいとうずうずしていたガース。しかしその願いはなかなか叶えられずにいた。親しくなろうとガースが近づいても、デボンが穏やかに身を引いてしまうのだ。
しかし、彼女の一番下の弟リースが問題行動を起こした時、初めて頼られた。彼女の肩にかかっている重荷を少しでも軽くしてやりたい。
何としてでも彼女を妻にしたいとガースは願っていたが、デボンが自由を欲しているということも何とか理解して1年間、都会で暮らすことを「許し」たのだったが心配でならなかった。
案の定、1年後、サンフランシスコに迎えに行ったガースを出迎えたデボンは、素敵に垢抜けていて、その上、帰郷することを渋ってきた。

ガースに押し切られて帰郷することになったデボンは、かなり憂鬱気分。ガースが求めている牧場主の妻という立場に立つ気がおこらない。色々と2人の合わない理由をデボンが述べるのですが、馬耳東風のガース。
あろうことか次の土曜日に身内だけ招いた結婚式を挙げるつもりだと言われ、 デボラ、ムムムムムッ。
きっちりとしたスタイルで招待客は200人程の結婚式を挙げるし、ハネムーンもちゃんと行くからと、デボンが意見を述べてます。
押しの強さでデボンを寄りきっていくガースですが、彼女とて頑張って主張してます。
男らしさ、機能重視のサクソン家を、デボンが遊び心と暖かみのある家庭へとチェンジ。
今までのままでいいと思っていたガースが何かと抵抗するのですが、その件に関しては押し切られっぱなしでありました。


ジェイン・キャスル
やさしい海賊 E-9 ハーレクイン社  発刊:1985.02.05
ヒロイン:カーステン・マロリー(図書館資料室の司書・28歳/愛称プルー) ヒーロー:サイモン・ケンドリック(経営顧問&ワイン醸造化・37歳)

あらすじ
雇われたからには、淡々と仕事をこなすだけだ。採算のとれていない部署は削減していくのが、サイモンの仕事だった。だから、小さな会社に不釣り合いな図書資料室もまた、その対象にあがっていた。
しかし、資料室の司書カーステン・マロリーを呼び出したサイモンは、目前に座った彼女が冷静に反論してくる様子に魅入ってしまうのだった。
そして、雑談の果てに彼女が住まうアパートの住所を聞き出し、ホテル暮らしとはおさらばすることをにおわせた。

会社の業績をあげるために雇われたサイモンは、利潤の追求のために削減できる部署を物色。
そのやり玉に図書資料室が挙げられたのは仕方のないこととカーステンは割り切ってます。
でもまあ、唯々諾々と従うのも職業意識が許さないと、図書資料室の必要性を説いた資料をサイモンに提出。
小柄な彼女が、大柄で威圧的なサイモンに物怖じを見せずに対応している姿に正に一目ぼれ。
「きょうきみを初めて見たときから、気持ちを打ち明けようと思っていた」
交通事故で亡くなった夫ジムに度重なる浮気とひどく殴られた経験を持つカーステンに対して、他の男にとられたくない一心で押せ押せで迫っていくサイモン。
いけ好かない上司だと思っていた男性が、求愛者に豹変したらカーステンも及び腰にならざるを得ないと思うのですが。
そして、ジムの遺品を巡ってのトラブルも勃発してと、ロマンスと事件が絡み合って物語が進んでいくこととなります。


愛の遺産 SCク1-1
角川スカーレット文庫
角川書店  発刊:1995.12.10
ヒロイン:クレオ・ロビンズ(ホテル経営者・小説家) ヒーロー:マックス・フォーチュン(カーズングループの懐刀)

あらすじ
両親が無理心中で亡くなった後、クレオは人間関係、特に異性との恋愛関係を上手く築けなくなっていた。父と母は、互いに強く愛し合っていたと思っていたのに、父は母を撃ち殺し、その後自殺をしたのだ。両親の間に何があったんだろう? 事件の後、周囲の人間の無神経な好奇心は、クレオの精神状況を追いつめた。故郷を離れ、両親が遺してくれたお金で、海辺のホテルを買い取り、クレオはそこに新しい家族を築きながら自分の心を癒していった。そんな中、マックス・フォーチュンと名乗る男が、先日、亡くなったジェイスン・カーズンの遺産「エイモス・ラトレルの絵画3枚」を受け取りたいとやって来た。
しかし、クレオには、ジェイスンから預かっているものは何も無かった……。

マックスの家族の一員になることへの憧憬が切ない作品。
自分では、強引に策を練ってクレオを追いつめて関係を深めていると思ってるようですが、クレオにすると「捨てられかけた野良犬のような瞳」に刃向かえない〜、つい、「うん」と言ってしまうのよ〜。それぞれの登場人物が、マックスがただマックスであることに、好意や愛情、尊敬の念を抱いて接してる姿が読んでてとっても幸せになる作品。金物屋で、瞳を輝かすマックスが可愛い。きっとこれから、いろんな「ねじ回し」を買い占めて新たなコレクションを作るような予感(笑)
作品前半から、クレオに傾倒していくマックスの嫉妬ぶりがナイス♪


ささやく水 ク4-1☆829
ザ・ミステリ・コレクション
二見書房  発刊:2002.06.25

ヒロイン:チャリティ・トゥルイット(本屋店主・デパート元経営者・30歳)

ヒーロー:エライアス・ウィンターズ(雑貨屋店主・コンサルティング会社社長)

あらすじ
母と継父がスキーの事故で亡くなった後、チャリティは否応もなくデパート経営を引き継ぐ事になった。本来、弟妹に遺されるべき財産なのだから、と5年間、遮二無二、働いたのだ。それは、チャリティにとってかなりのストレスを強いることとなり、婚約発表の直前にパニックに陥った。
デパート経営の一切から手を引いて一年、寂れていた埠頭でチャリティは小さな本屋を経営していた。このまま、この地で穏やかに暮していく予定だったが、書店を含む一帯の大屋であったヘイデンが亡くなり、海外投資家のコンサルタントをしている会社がその資産を受け取ったことで、俄に慌ただしくなるのだった。

「タル・ケック・チャラ」
武具の一つであり、哲学的思考(『水の道』)の道標というか、俗物的な私には理解できない精神修養の言葉なり〜。この教えを盾に、感情の起伏を押さえ込んでいるエライアス。それがチャリティは気に入らなくて、もっと人間味を出して欲しいと願っているわけですが……冷静沈着な筈のエライアスの心情描写がかなり「可愛い」
チャリティへの性衝動を抑制する為にひたすら、自制心の教えを説くこの言葉を唱えてたりするんですもの(笑)
チャリティに「可愛い」とキスされ、ムッとして可愛くない激辛料理を時間をかけて仕込んで意趣返しをするお茶目さん。
至極真面目な「タル・ケック・チャラ」 と対極をなす「宇宙船との交信」を目論む新興宗教集団。
ヘイデンが飼っていたオウムの性格の悪さ。
埠頭で洋服屋を営む男が着るTシャツに印刷されている格言。
クスリと笑わしてくれる小ネタがふんだんにちりばめられています。登場人物が抱えている、どこかちぐはぐなものとなっている人間関係や家族の有りようが、心地よいものに改善されていく過程は、エライアスの孤独を癒す過程とも重なって読みごたえのある作品。
この設定、どこかで読んだわー、という既視感に囚われるかも……「愛の遺産」と「運命のいたずら」の要素を上手く練り合わせてるかなっと。


曇り時々ラテ ク4-2☆829
ザ・ミステリ・コレクション
二見書房  発刊:2002.12.25
ヒロイン:デスデモーナ・ウェインライト(ケータリング会社社長・28歳) ヒーロー:サム・スターク(セキュリティ会社社長・34歳)

あらすじ
前途有望なセキュリティ会社社長で、感情表現は豊かだけど表現方法が微妙なサム。
演劇一族の中で唯一、一定収入をあげているケータリング会社を経営しているデズデモーナ。
2人が出会ったのは、サムの結婚披露宴の進行をデズデモーナの会社が取り扱うことになったから。でも、その結婚式は花嫁が祭壇に現れなかったことで、ご破算。……それは、サムにとって2度目の経験だった。
同情 しつつもデズデモーナは、披露宴にかかった代金の回収を図る為、むっつり黙り込んでいるサムの前に請求書をそれとなく差し出すのだった。

人間関係というか会話を交わすと、どうも微妙な具合になるサムの言動が笑えます。えらく直情的にデズデモーナに迫ってるし……。
デズデモーナもかなりユニーク。彼女は他人の感情とか社会の立場(何の援助が必要か)を汲み取る能力に優れ過ぎていてちょっと(大層)貧乏くじを引いてる状況……が可笑しいんだよねー♪
サムの元婚約者の置き土産である社交上の付き合いの管理をデズデモーナに依頼したことから、ロマンスが動き出します。
登場人物がえらく多いんですが、各人が際立っていて(個性豊かというかキテレツというか)、すんなり人物関係が把握できる作品。読んでてとっても楽しかった♪


優しい週末 ク4-4☆829
ザ・ミステリ・コレクション
二見書房  発刊:2003.06.25
ヒロイン:モリー・アバウィック(お茶スパイス販売店経営・発明家への助成金財団の理事・29歳) ヒーロー:ハリー・ストラットン・トレヴェリアン(科学史著述・発明品の真贋についてのコンサルタント業・36歳)

あらすじ
発明品を作り上げることしか能がなくて、いつも金策に困っていた(本人達より周囲のまともな人間を困らせていた)父と叔父。そんな2人が自作の発明品であるグライダーの飛行事故で命を落としてしまった。2人が遺したのは、ようやく当った発明品から支払われる巨額の特許代金だった。
金欠でいつも悩んでいたモリーは、その莫大なお金を発明家への助成金支給に当てようと財団を設立したのだった。早く発明家達を援助したいとうずうずとしているモリーを腐らせたのは、申請してくる発明品のダメだしばかりするハリーの存在だった。
発明品の真贋を見極めてもらおうとハリーを雇ったわけだけど、100件もある申請からたった一つも承諾しないなんて……これ以上、却下するのだったらハリーはクビだわ。
モリーは、ハリーに招かれたディナーに「彼のクビ」をかける意気込みで出向くのだった。

噛み合わなさそうなモリーとハリーの会話が実は、しっかりかみ合ってるのが楽しい。2人の欲情と愛情の進み具合がかなり好みかも。推理とか全く得意でない私なので、サスペンスの影が薄いのは全く問題なし(笑)
自分が特異であることを気にして、自制心の塊になっているハリーが、モリーの影響でくだけたり、おろおろしたり、安堵したりと七変化♪
ストラットン家とトレヴェリアン家からいいように利用されているとしか思えないハリーの複雑な心情を思いやって、行動するモリーがいいなぁ。
父親が、発明した家事ロボットの数々が羨ましい限りの作品でもあります。その恩恵にどっぷりつかってきたモリーの手料理の腕が、かなり笑えるというか、ハリーの冷や汗の元となってます。


迷子の大人たち ク4-4☆829
ザ・ミステリ・コレクション
二見書房  発刊:2003.12.25
ヒロイン:キャディ・ブリッグス(フリーの美術品仲介業・32歳) ヒーロー:マック・イーストン(行方しれずとなった美術品を追跡する会社を経営)

あらすじ
年を経るごとに似てくると言われ続けていた大おばのヴェスタが自宅のプールで溺死した。水中でパニック発作をおこしてプールサイドにたどり着けなかったのだろうというのが、大方の見かただった。しかし、キャディにはその死がどうしてもしっくりとこなかったのだ。
86歳であったとはいえ、泳ぎの達者であったヴェスタが溺死?
パターンから外れていることはまだあった。
一週間前に遺言が急に書き換えられていたこと。長年の望みで、乗り気だった合併の話しが延期されていたこと。
……ヴェスタは殺されたのではないかしら?
真相を得るために、キャディは前回の仕事の後、喧嘩別れしてまったマック・イーストンを雇おうと決意したのだった。

キャディのたった九日間だけだった結婚生活の相手ランダム・ポストに対するマックの心のさざ波(嫉妬とも言う)の描写が上手いです。血の繋がりもなく、「単なる」幼なじみというだけで、無条件で肯定されるランダムに秘めやかな対抗意識がメラメラ〜。
キャディのいとこであるシルヴィアの夫ガードナーとマックの会話が、絶妙。2人の子供に対する愛情とか、自分の女に対する独占欲がストレートに交わされます。
それが小声だったり、不本意だったりと、ほのぼのとした笑いを誘います。


ガラスのかけらたち ク4-5☆829
ザ・ミステリ・コレクション
二見書房  発刊:2004.12.25
ヒロイン:ユージニア・スゥイフト(ガラス博物館長) ヒーロー:サイラス・チャンドラー・コルファックス(私立探偵・セキュリティ会社経営)

あらすじ
最近、亡くなった資産家から遺贈される予定のガラス工芸品の目録作りも兼ねて、ユージニアは休暇を取るつもりだった。
しかし、 その2年ぶりともなる休暇は、資産家の不審な死に方のために、厄介な代物を同行させられる羽目に陥るのだった。
派手なアロハシャツを着こなす私立探偵サイラスを引き連れて、休暇?
表向きは休暇としていたユージニアだったが、実際のところは海難事故で亡くなった友人ネリー・グラントについて調べようと決意していたのだ。
私立探偵に、周囲をうろちょろされると身動きがとれなくなる。何としてでも同行を断ろうと理由を挙げるユージニアに向かって、サイラスは
「ぼくたちは恋人同士として島に行けばいい」と、言い放つのだった。

派手なアロハシャツを着こなす私立探偵サイラス。
対して、生真面目なユージニア。互いに
「 好みでない 」と結論づけて、腹の探り合いを開始し始めます。
ユージニアは友人ネリーの死の真相を暴くために。
サイラスは「ハデス杯」と3年前自分を虚仮にし、死線を彷徨わせたダミアンを発見しようと行動開始。
言い合いをしながらも、どこか楽しげな2人の会話がとても羨ましい。


鏡のラビリンス ク4-6☆829
ザ・ミステリ・コレクション
二見書房  発刊:2005.12.25
ヒロイン:レオノーラ・ハットン(大学図書館司書/愛称レオ) ヒーロー:トーマス・ウォーカー(個人投資家・40歳目前)

あらすじ
数日前に、自動車事故で亡くなったメレディスが遺したものは、ウォーカー兄弟にとって迷惑な代物だった。
メレディスは、150万ドルもの大金を横領をした挙げ句、デイク・ウォーカーを犯人役に仕立て上げていたのだ。
1年前に、妻ベサニーが亡くなってからデイクはふさぎがちで、彼女の死が自殺であったことを認めようとしなかった。誰かに殺されたのだと公言して憚らないのだ。
そんな状態の弟を刑務所行きにさせないために、トーマスは何でもするつもりだった。
150万ドルの行方の鍵を握るのは、レオノーラ・ハットン。
友人など誰一人いないと思っていたメレディスにも、親しくする人間がいたらしい。
トーマスは、メレディスの遺品を片づけにやってきた、レオノーラにちょっとした圧力をかけながら、協力を仰ぐのだった。

互いに惹かれあう気持ちを隠さずに、おつき合いを深めていくレオノーラとトーマス。
レオノーラは、婚約者をメレディスに寝取られ婚約破棄をしたという過去を持ち、トーマスもまたパートナーと妻が懇ろになっていたために離婚したという過去を持っています。
当分の間、男はこりごりと思っていたレオノーラですが、トーマスの武骨な誘いが彼女の琴線に触れまくり。
いつの間にか、どうやって彼の心を手中におさめることができるのかという恋する乙女の悩みを、祖母の男友達に相談している事態に陥ってます。
デイクの自殺した妻、メレディスの事故死、そして三十年前に起こった殺人事件の真相は?
怪しげなミラーハウスを中心に据えて謎解きとロマンスが進行していくこととなります。


夢見の旅人 ク4-7☆829
ザ・ミステリ・コレクション
二見書房  発刊:2007.06.25
ヒロイン:イザベル・ライト(夢分析の専門家・33歳) ヒーロー:エリス・カトラー(経営コンサルタント)

あらすじ
銃弾が身体をぶち抜かなければ、今ごろは、彼女と少しは親しくなっていた筈だ。
エリスは、一年前から自分が見る夢を的確に解析してくれるイザベル・ライトのことが気にかかって仕方がなかった。八カ月前に彼女がカリフォルニアに住んでいるからと、引っ越しまでした。そのあと、事件に巻き込まれ3カ月前に重傷を負った。だから、直接、彼女と話したことはないままだった。
彼女が提出してくるお堅い分析書に紛れ込んでいる私見は心遣いとも呼べるのでは?
こちらのことを気にかけてくれているからだと、自惚れてもいいのだろうか……?

イザベルとエリスは、夢の中で、事件の状況を再現して見落としたものを発見する能力をもちます。
付きあっていると思っていた男性から、かわいい妹扱いをされるか(このまま年をとればやさしい伯母さん扱いに昇格?してしまうのは目に見えている)、専属の相談相手もしくは占い師というポジションを与えられ続けていたイザベル。
エリスは、12歳の時に両親を銃の乱射事件で亡くしてます。それまで愛情に溢れた家族の中にいたのに2度とそこには戻れない喪失感を今でも強く感じているエリス。
2人のアプローチのぎこちなさが、読んでて楽しい。
ただ、長々と書かれてる夢解析部分を読むのが、ちと大変。


すべての夜は長く ク4-8☆829
ザ・ミステリ・コレクション
二見書房  発刊:2008.04.25
ヒロイン:アイリーン・ステンソン(地方新聞の記者・32歳) ヒーロー:ルーク・ダナー(ロッジ経営者・元海兵隊員?)

あらすじ
アイリーン・ステンソン
2泊の予定で、この湖畔のロッジに泊まった客だが、初春にもなりかけていない今、こんなところにやって来るのは季節外れとしか言いようがない。携帯を何度もチェックしているのは、待ち人との連絡がとれないのか……。
ルークは、彼女がチェックインにやって来た時からその動向が気になって仕方がなかった。彼女は暗闇を恐れているのか、持ち込みの常夜灯が泊まっているキャビンの室内を煌々と照らしていた。
10時25分
都会では遅い時間ではないが、この寂れた湖畔の町でドライブするのにはおかしな時間帯だった。彼女には手助けが必要となる事態がおこるかもしれない。
ルークは、アイリーンのあとを追跡する為に、ジャケットを着込んだ。

17年前に両親が痴情のもつれから、心中した事件の真相を掴む為に2度と踏み込みたくない故郷に戻ってきたアイリーン。
彼女が取りあえず宿泊した先のロッジの経営者がルークという設定となってます。
宿泊を希望する客に対しての態度が、宿屋の亭主ではなく、海兵隊の上官モードであるルーク。ロッジ経営者として、それはあかんやろうという態度をとりまくっているんですが、客足が途切れてません。リピーターは来ないんじゃないかとのアイリーンの弁ですが。
アイリーンの行く先々で、殺人事件や放火が引き起こされ、益々、両親の心中は殺人事件だったに違いないという確信を得ていく展開となります。
互いに心に深い傷を持つ者同士であるアイリーンとルークが、落ち着いた大人同士ということで華やかさはないんですが、読みごたえがありました。


許される嘘 ク4-9☆829
ザ・ミステリ・コレクション
二見書房  発刊:2009.01.15
ヒロイン:クレア・ランカスター(求職中・人の嘘を見抜く能力者・32歳) ヒーロー:ジェイク・ソルター(ビジネスコンサルタント/本名ジェイク・ソルター・ジョーンズ

あらすじ:アーケイン・ソサエティ・シリーズ
クレアには、人の嘘を見抜く力が備わっていた。それも極めて強い能力が。
その力のおかげで、異母妹のエリザベスが心身ともに参って本当の助けが必要なのではないかと思い至ることが出来たのだ。
雑誌に掲載されていたエリザベスの結婚式は、幸せに満ちていた。エリザベスの夫、ブラッドの顔つきを見るまでは、本当に幸せな結婚をしたのだと思っていた。
ブラッドがエリザベスを見ているその顔つきは、クレアから見れば邪悪としか取りようがなかったのだ。 エリザベス宛にメールを送ったクレアへの返信は一言、
「助けて」

ブラッドとエリザベスの離婚を決定づけるために、身を張ったクレアはトラブルに巻き込まれます。離婚を直前に迎えた時、ブラッドが何者かに殺害され、それに伴うブラッドの愛人がクレアだったという噂が撒き散らされ、失職の上に、婚約破棄まで体験。踏んだり蹴ったりな状況に陥るクレアですが、前向きに求職活動中。
能力者として力を発揮出来る会社に勤めようと頑張ってはいるものの、芳しい結果が出せずにいます。生まれてこの方、音信のなかった父との関係とか、ぎこちないながらも絆を築きだそうとしていく過程がいいです。
強い能力社同士の痛みの共有をジェイクとしているのもいい感じ。そして、クレアは、人がつく嘘を見抜けるという極めて稀な能力の持ち主で、その精度もピカイチ。
そんな彼女が人間がつく「嘘」について語るシーンが、なるほどなぁと腑におちます。


消せない想い ク4-10☆876
ザ・ミステリ・コレクション
二見書房  発刊:2009.10.20
ヒロイン:レイン・タレンタイア(コスチュームデザイン店の経営者・残留思念を聴く能力者・32歳) ヒーロー:ザッカリー・ガブリエル・ジョーンズ(調査員・アーケイン・ソサエティ宗主の後継者/愛称ザック)

あらすじ:アーケイン・ソサエティ・シリーズ
1ヶ月前に、叔母のヴェラが収容されていた精神病院で、心臓麻痺が原因で亡くなった。 59歳だった。
叔母が、精神に支障をきたし始めた32歳という年齢に、レインも達していた。
欲望や怨嗟にみちた 「声」が聞こえてしまうこの頭は、いつか社会生活をおくることもできなくなるのではないか……。
叔母が、精神病院に入る前までの20年間暮らしていた家の片づけをそろそろしなければならない。レインは、なけなしのやる気をかき集めて、向かうのだった。

叔母ヴェラが心の歪みに苦しむ生活をおくることになった原因が、ザックのおじであるワイルダー・ジョーンズ。彼は、ヴェラの兄でレインの父であるジャドソン・タレンタイアがアーケイン・ソサエティが禁じた研究に没頭していたことを掴み、その行方を探すためにヴェラに近づき恋人となって情報を入手。
ジャドソンは不審な交通事故死、研究所は一切合切の研究結果とともに放火爆発という徹底ぶり。その破壊現場に、ヴェラとレインは立ち合うことになり、2人の心に深い傷痕を残します。
その破壊の夜から、ヴェラは以前の彼女に戻ることなく、ひどい精神障害を抱えて生きることに。そして、ワイルダーは生涯の相手だったヴェラの人生を破壊したことで、3ヶ月後、無謀な任務に突っ走り死亡してます。過去の恋人達が描かれている頁は少ないのに、強烈な存在感。そのやりきれなさ(ワイルダーのやり口がどうにも好きになれなくて)を引きずってしまい、レインとザックのロマンスにまで、気が回らず仕舞いとなりました。
アーケイン・ソサエティがらみの犯罪と、レインが関係することになった娼婦連続殺人事件の2つをからめて読ませてくれるんですが……ザックの高みから人を操ろうとする態度もあまり好きになれず。


珊瑚礁のキス ク1-1
ラズベリーブックス
(株)竹書房  発刊:2007.02.17
ヒロイン:アミーリア・スレーター(新進のSFファンタジー作家・27歳/愛称エイミー) ヒーロー:ジェディディア・グレーズ(エンジニア・趣味は鳥かごづくり・30歳半ば/愛称ジェド/諜報活動員

あらすじ
「悪いんだが迎えに来てくれないかな?」
飛行機に乗り込む前に、ジェドは、3ヶ月前に知り合って「友人」となったエイミーに、電話をかけた。
任務に失敗したおかげで、傷だらけとなった身体と大量の鎮静剤は、空港から自宅まで運転する気をジェドから殺いでいた。
彼女に新しい「友人」ができていたら、今まさに、彼女に隣にいてるかもしれない等と、考えるだけで激しい怒りを覚えるのだった。。
数週間に渡る任務の後、エイミーに会うこと考えるだけで、ジェドは気分が安らぎ、そして下半身が熱くなる。
そんなジェドに対して、エイミーの態度は「友人」以上の域から出ていなかった。

8ヶ月前、引退した両親が住む島に休暇にやって来たエイミーが、そこで取り憑かれたのは悪夢。
ダイビング仲間だとばかり思っていた男性が、立ち入り禁止となっている洞窟ダイビングをしてそこに置いてあった小箱を持ち去ろうとしている場面に遭遇。男と死闘を繰り広げることになったエイミーは、8ヶ月経った今でも悪夢に悩まされ、不眠症に苦しみます。島に行くことを何とか延ばしていたエイミーですが、両親の再三の誘いに断りきれず、3ヶ月前に友人となったジェドを伴って訪ねることにするのでありました。
「エイミーの不眠症の原因は?」から謎解きが始まり、ロマンスは「友人」の域から恋人へと昇格するのかしないのかというじれったい展開で進みます。
「友人」という心地よい立場から一歩を踏み出そうとしないエイミーを、じれじれする思いで待ち続けていたジェド。
「エイミー、エイミー、ぼくがどんな思いでいたかきみは知らない……」
メモ:小箱の中身(エメラルド、写真、手紙)・核となる部分のお話しが小っちゃいので、こじんまりとした作品の出来上り。


ダークカラーな夜もあれば ク2-1
ライムブックス
(株)原書房  発刊:2007.03.20
ヒロイン:エリザベス・キャボット(投資会社経営/愛称リジー)

ヒーロー:ジャック・フェアファックス(経営コンサルタント)

あらすじ
仕事と私生活を一緒くたにしないのが、ジャックの信条だった。
エリザベス・キャボットに出会う前までは。
信条を無視してまで、彼女とのお付き合いにのめり込んでいたジャックは、昔の因縁に足をすくわれることになった。
ジャックが2年前に血も涙もない乗っ取りをした会社の経営者一族とエリザベスは旧知の間柄だったのだ。
そのことがばれないことを祈っていたのだが……。
昨晩、ようやくベッドを共にするところまで行き着いた関係が、きれいさっぱりと崩れ去ったのは、彼女から発せられる怒りで思い知らされた。
彼女の怒りに満ちた言い方にはまだ、自分を抑えることが出来たジャックだったが、昨日の夜も含めて自分たちの関係が彼女にとって何の意味もないことだと言い捨てられたことで暴言を吐くことになった。
公衆の面前で、彼女のことを不感症だと言い放ってしまったのだ……。

エリザベスは、ジャックと半年で仕切り直すなんてことをせずに、彼をもう少しじらした方がいいと思う(笑)
ジャックが自分の行動ばかり正当化していくのが、ちょいと鼻につくんで、エリザベスにはもうちょっと踏ん張って欲しかったのが正直なところ。
悶々しているジャックの足掻きというか、いじいじした態度が愛らしくていいのにさー。
彼女が住んでいる大邸宅を双眼鏡で、覗かずにはいられない(寝室は植物が邪魔して明かりしか見えないとわかっていても)執着ぶりがイカレてます。
盗まれてしまったサンプル品を取り返すために、インディーズの映画祭りが行われている高級リゾート地まで行く事になったエリザベスとジャック。
ジャックを目の敵にしているヘイデン・ショーとの因縁など、家族関係の複雑さをからめてロマンスが展開していくこととなります。


愛は砂漠の水のように JK01-06 MIRA文庫  発刊:2007.05.15
ヒロイン:アレクサ・チェンバーズ(アール・デコ美術品の鑑定家・模造品店経営・29歳)

ヒーロー:ジョン・レアード・トラスク(リゾートホテル経営者・35歳/愛称JL)

あらすじ
亡くなった母が弟の進学費として遺したものまで使い込んだ父ハリーの死に様は、崖からの転落死だった。雨に濡れた路面に運転を誤ったというのが警察の見解だった。しかし、事故死として片づけられたその真相を、ジョン・レアード・トラスクは暴くつもりだった。
夢想家だった父が、手がけようとしていた大規模プロジェクトは、資金繰りが焦げ付いて頓挫しかけていた。それでも、そのプロジェクトに固執していた父のことを、疎ましく思っていた人間があの頃、大勢いたのだ。
父を殺してから12年間、何の罰も受けずに、のうのうと暮らしている輩を、どんな手段を使ってでもあぶり出してやる……。

トラクスが12年前、父の「事故死」の真相を得るために、乗り込んだ先で出会ったのは少女の域を出ようとしていたアレックス・チェンバーズ。
彼女は、不法侵入しようとしていたトラクスに毅然と立ち向かってきます。
「ミスター・トラクス、いますぐこの家から出ていかなければ、警察を呼びます」
その彼女と再会した途端、強烈に惹かれあう何かを2人は感じることとなります。
トラクスとアレックスが「事故死」の真相を得るために協力しだした途端、事件が頻発。とうとう事故死する人間まで出てきてと、トラクスの主張する他殺説が有力となっていくこととなります。
父親の死の真相を、妄執のように追い求めるトラクスの罪悪感(転落死する寸前にひどい言い争いをしてしまい、父を自殺へと追いやったのではないかと悔やんでいる)なども搦めて、謎解きとロマンスが進行。
数字を何よりも重んじるトラクスの前に立ちはだかる、「精神的なもの」や、コーヒー中毒者なのに紅茶系しか美味しくない飲み物事情など、クスリと笑えたり。
でもまー、可もなく不可もない作品でありました。


黄昏に眠る記憶 JK01-07 MIRA文庫  発刊:2007.12.15
ヒロイン:ゾーイ・ルース(インテリアデザイナー/本名サラ・ゾーイ・ルース・クレランド)

ヒーロー:イーサン・トルアックス(私立探偵)

あらすじ
前途洋々だったセキュリティ会社は顧客が一気に離れたことから、清算するしかなかった。会社が潰れてしまったことに後悔はなかった。殺害された弟の仇をうつと決意した時から、覚悟はあったのだ。
心機一転、再出発をはかったイーサンは、叔父が経営していた探偵事務所と住んでいた屋敷を安く譲り受けた。事務所を使い勝手のよいように改装していた真っ最中に、この地、初めての依頼人がやってきた。
ゾーイ・ルースと名乗ったその女性は、新規顧客メイソン氏の身辺調査を依頼してきた。彼の出奔した妻が元気かどうか調べて欲しいらしい。

ゾーイは最愛の夫を、イーサンは弟を殺害されるという過去を持ってます。
最愛の人を奪われる無念さをとつとつと語り合う2人のやりとりが心に残ります。
便宜上とはいえ、4度めの結婚をすることになったイーサンの結婚にたいする自虐的な見解というかユーモアはなかなか理解されないだろうなーと。
殺された夫の親族が、ゾーイの不安定な精神を悪用し、病院に送り込むという非道なやり口に対して、もっと怒り狂ってもいいと思えたり。ゾーイの特殊能力(並外れた強い残留思念を読み取ってしまう力)をからめて物語が展開してます。
続編(「Truth or Dare」)があるらしいので、その翻訳が楽しみ〜。


月夜に咲く孤独 JK01-08 MIRA文庫  発刊:2008.05.15
ヒロイン:ゾーイ・トルアックス(インテリアデザイナー)

ヒーロー:イーサン・トルアックス(私立探偵)

ヒロイン:アルカディア・エイムズ(ギフトショップ店主) ヒーロー:ハリー・スタッグ(用心棒)
ヒロイン:ボニー・トルアックス(未亡人・2児の母・イーサンの義妹) ヒーロー:シングルトン・コブ(稀覯本を取り扱う書店主)
ヒロイン:ダーリア・ラドナ(ネルソンの妻) ヒーロー:ネルソン・ラドナ(セキュリティ会社経営)

あらすじ
弟が殺害された11月はただひたすら滅入る。未だ自分の中で折り合いがついていないし、成し遂げた復讐で一線を超えてしまった暗い感情に引きずり込まれるのだ。
完全に不眠症となっているイーサンを、ゾーイが気にかけてくれることが一筋の光明かもしれない。イーサンの身を案じて、安全グッズ、健康グッズ、健康食品をそっと差し出してくるのだ。

アルカディアの元夫(スキー事故で生死不詳)が暗躍しはじめたことに端を発して、イーサンもまた探偵業に勤しむ事となります。弟が殺害された月、復讐を成し遂げた月ということで11月は精神的に不安定な時期となっています。なんとか、ゾーイに迷惑をかけないておこうとするイーサン。そんな彼を支えようとする、ゾーイの包容力がいいんですよー。反対に、自分の特殊能力に不安定になるゾーイをイーサンがしっかり抱きとめて本当に素敵なカップル。
アルカディアとハリーのカップルも魂の片割れだと互いに言いあってて素敵だし、ボニーとシングルトンのゆっくりと積み上げていく関係も読ませます。
ボニーの子ども、長男ジェフとシングルトンとの心の交流場面もオススメ。
あと、イーサンの商売敵(?)であるネルソン・ラドナが、妻の浮気を疑って迷走しかけ、その顛末を教えてもらっている様子が可愛くて、すごく好きな場面です。


緑の瞳のアマリリス SFク12-1 ハヤカワSF文庫  発刊:2007.09.15
ヒロイン:アマリリス・ラーク(クラス10のプリズム能力者・30前後?)

ヒーロー:ルーカス・トレント(クラス9の超能力者・ロードスター開発社長・30代半ば)

あらすじ
わが社の部長が機密事項を、漏洩していることに対しての動機が知りたかった。
そのために、べらぼうに高い契約料を払う気満々でいるルーカスに、まったをかけようとしているのが正面に座っているアマリリス・ラークだった。彼女は、プリズム能力者だった。それも最高位の。
ルークの超能力である探査能力を効率良く発揮させる力を彼女は持っていた。今回の会社のごたごたを早急に片づけてしまいたいルークは、情報漏洩のことだけに意識を集中させるべきだ。
アマリリスの優美な手に、結婚指輪がないことを気にするのではなく……。

SFと能力設定が頭に入りさえすれば、あとはもう、ルーカスの心情をひたすら拾い読んでニマニマする作品となってます。冷酷無情な実業家と世間では評判のルーカスが、実は義理人情にひたすら熱い男で、アマリリスにのめり込んでいく切羽詰まった感には、切なさとか可笑しみとか展望とかがいっしょくたに詰め込まれてます。
結婚仲介業を通さずに結婚することがタブー視されている社会での恋愛という制限が、アマリリスとルーカスに課せられています。その制限をルーカスがどう打破していくのか。
事件の推移は、ルーカスの会社の情報漏洩事件から始まり、その後、アマリリスの恩師の死の真相究明へと進んでいきます。