あらすじ
数週間前に事故に遭ったと、母親からの電話で口を滑らせたときは、こんな事態を呼び起こすとは思いもしなかった。
都会以外で暮らすことなど全く考えてもいない母親が、テネシー山中に慌てて駆けつけてきたのだ。
それも、5年前にカーンの元を去っていた妻ティシュを付き添わせて。
キャンプ場を開設するために、彼女には辛酸を舐めさせた。新婚生活がキャンプ場の開墾だったのだ。
都会育ちの彼女が、泥まみれになりながらも本当によくやってくれていた。
テネシーの雄大な自然に、彼女が馴染んでいくのを息を潜めていつも観察していた。
結婚初夜に、溢れ出した恋情を抑え切れずに無理矢理、身体を開かせて、ティシュの心に傷を残してしまったから。
夫として愛想を尽かされかけている恐れをひた隠しにして、がむしゃらに働き続けたことが、さらに彼女を追いつめていたのだと理性的に考えられるようになったのは、彼女が逃げ出して2年も過ぎた頃だった……。 |