ネリナ・ヒリヤード
翻訳は4作品のみ。家族思いでユーモアのあるヒロインは、いいですね〜。

黒い星のかげで R-6 ハーレクイン社

 発刊:1979.09.20

ヒロイン:リー・ダーモッド(ルイスの秘書・5人姉弟の長女・25歳) ヒーロー:ルイス・ディエゴ・パレア・デ・アルドレッド(実業家・34歳)

あらすじ
ロマンスに全く無縁の上司ルイスの元で、リーは優秀な秘書として働いていた。彼の癇癪も、慣れてしまえば、それなりに軽く流せるようになった3年だった。
婚約者のブルースとも仲むつまじく何の不安もない生活だと思っていた矢先に、ルイスからはビジネス結婚を申し込まれ、婚約者のブルースは有名女優である妹ステラと懇ろになって愁嘆場を自宅の居間で展開しているし……。
自分さえ、身を引けばブルースと妹の恋愛は成就するんだわ……リーは、はっきりと断ったルイスの求婚がまだ有効か、彼に尋ねるのだった。

若い頃に、祖父の財産狙いのカモにされて女性不信に陥っていたルイス。
その祖父が亡くなり、遺言には結婚しなければ、莫大な財産(金に興味はないけれど、生れ育った館には愛着がある)を受け継ぐことができないという一文があったから、さぁ、大変。
周囲に、結婚を当てにできる女の影も形もない状況の上に、財産を受け継ぐために3ヶ月だけ結婚してくれという、人でなしの頼みごとを引き受けて貰える誠実で人の良い女性なんているわけが………あ、いた、秘書のリー・ダーモッド。
ということで、便宜結婚に踏み出すリーとルイス。
淡々と物語は展開されていきます。
ステラのロクデナシぶりはお見事で、最後にきっちり追い払われてるんですっきり〜♪


魅惑のタンゴ R-71 ハーレクイン社  発刊:1980.12.20
ヒロイン:ケリー・ダーウィン(家事手伝い) ヒーロー:ジョン・デブロン/ジョン・ド・ヴェロニーユ(映画俳優)

あらすじ
近在で映画撮影が行われるということで、主演俳優ジョン・デブロン達、映画関係者が特別ゲストとして参加したため、年に一度の仮装パーティはより華やかだった。そのパーティに、ケリーは双子の弟リックと幼なじみのケルヴィンとともにコサックの扮装で会場に乗り込むつもりだった。颯爽とホール前に馬を乗り入れた3人は、後ろ手に組んだ格好で絶妙のバランスで鞍の上に立ちながら、通りすぎようとした。その瞬間、赤毛をたくしこんでいたケリーの帽子が、風に飛ばされジョンの前に落ち……

男の子のように育てられたケリー。男性にキスされるなんて以ての外!! という彼女に恋してしまったジョンが、頑張ってます〜。鷹揚に構えて、ケリーを見守るように搦め捕る作戦のようですが、如何せん、幼なじみのケルヴィンの存在が脅威となってます。なので鷹揚に構えようとしつつも、性急にことを運ぼうとするので、ケリーが混乱しまくり(笑) 優しくて良い人なんだわと安心したその瞬間に、ジョンの瞳に暗い光りを見せつけられて、きびすを返して逃げかかってます。その繰り返しが、とっても妖しくて、良かったです。映画撮影の為のキスの練習だとか、なんとか理由づけていそいそとケリーを抱きしめたりとか、いちゃいちゃしたくてたまらないジョン。まあ、性急にことを運びすぎて、結婚後にその報い(我慢の数日間〜)を受けたのはご愛嬌♪


バラキーの日々 R-324 ハーレクイン社  発刊:1984.06.20
ヒロイン:トリナ・メリトン(バレエの群舞ダンサー/子供達から命名されたあだ名:豆戦艦) ヒーロー:アンドルー・ダルウィン(電子機器の会社経営/子供達から命名されたあだ名:ゼウス)

あらすじ
友人の忘れ形見である4人姉弟(2組の双子)を引き取ることになったアンドルーは、昔、婚約していた女性ジェニファーの手ひどい仕打ちに、殻に閉じこもった人生をおくっていた。右頬にある長いぎざぎざの傷あとを見たジェニファーは、婚約を破棄しただけでなく、他の男と駆け落ちまでして、アンドルーの元から逃げ去ったのだ。
騒がしい姉弟達の躾と教育係に新しく雇ったミス・メリトン。
出張から帰宅してみれば、静かにさせるために雇った彼女のアパッチの出陣式を踊り狂ってる姿に喜び騒ぐ姉弟達。アンドルーの堪忍袋の緒は、あっけなく切れた……。

前半は、頬に残る傷跡に対するアンドルーの劣等感を癒すのと、恋人だと思っていたデニスが既婚者で騙されていたトリナが、デニスのことをふっ切るまでが描かれてます。
中盤は2人の熱々ぶり。
後半に、最大の山場となる、誤解による別離という試練が用意されてます。
誤解を受けてアンドルーの元から去って4ヶ月。彼が冷静になれば追いかけてきてくれるという希望が叶わないものだったと思い知らされるのに、充分な月日。
傷つけられたことは、一生許せない性格のアンドルー。自分がトリナにしてしまった下劣な言動に、一生許してもらえないと苦しむこととなります。
命を失うかもしれないトラックのスリップ事故に巻き込まれて入院したトリナを見舞うために駆けつけたアンドルー。彼のトリナに対する強い思慕が滲み出ている謝罪の過程が、そそられます。


いまひとたび I-57 ハーレクイン社

 発刊:1983.03.05

ヒロイン:モルガナ・フェイ・キャロル(ロンドンの病院の主任看護婦) ヒーロー:フェリーぺ・マヌエル・ルイーシュ・デ・アリヴィロ・リアルタ(ポルトガル領ジュワマーサ島の領主・侯爵)

あらすじ
婚約して2・3日もしないうちに、手紙で婚約破棄を告げてきたフィリップ。
幼い頃、憧れていたフィリップと長じて出会い、付きあうことになり婚約までした矢先の仕打ちに、モルガナは茫然自失だった。……不注意のまま車道に降り立った結果、車に衝突する事故にあい、余命3ヶ月という怪我を負うことになった。
強打した頭部にできた腫瘍は、除去の難しい箇所で、その時がくるまでは普通の生活を送る事に何の支障もない時限爆弾だった。周囲の好奇な目の中で、生活しなければならない居心地の悪さに辟易していたモルガナに、患者のネスタが救いの手を差し伸べてくれたのだった。
「付添いの看護婦として、ポルトガル領ジュワマーサ島での療養に同行してもらえないかしら」

モルガナに一目会った時から、気になって仕方のなかったフェリーぺ。
1ヶ月という短期間の滞在ですと言い張るモルガナに
「おそらくここに、とどまらなければならないような状況が生じることでしょう」 と、ロンドンに帰す気のない科白を冒頭で宣言してます。
彼女と何とか仲良くなろうと、頑張るんですが、侯爵様の尊大な態度が裏目に出て、反感を持たれるわ、避けられるわ。
自分だけ、仲良くしてもらえないのは何故!?
同業の医師のドイツ語は新しく覚えようとするのに、ポルトガル語はこれっぽちも覚えてくれないのは何故!?
そんなに、自分は魅力のない男なんだろうか……。
彼女の時限爆弾にスイッチが入った所に居合わせて、行使できるだけの金と権力を死に物狂いで使う姿は胸打ちます。