トレイシー・シンクレア

恋は魔術師 L-39 (株)サンリオ  発刊:1982.07.05
ヒロイン:ロビン・オニール(子守り兼家庭教師・孤児・19歳) ヒーロー:デイヴィッド(下級船員?/本名カルヴィン・キャリントン3世・34歳/愛称キャル

あらすじ
豪華客船の旅のなか、ロビンは信じられないほど、楽しい時を過していた。
腕白なディギーの面倒を見ながらの船旅は、何もかも珍しく心躍るものだった。
ディギーが就寝したあと、外の空気を吸うために甲板に出たロビンは、サロンのドアが開閉されるたびにかいま見えるカップルの夢みるような舞いをうっとりと眺めていた。
「こんなところでなにをしているんだい?」
突然、暗がりの中から聞こえた男の声にロビンは、跳び上がった。海賊みたいな雰囲気を持つ男が、射るような黒い瞳で彼女を見つめている。

生まれてすぐに父を亡くし、身体の弱かった母親はロビンを手元で育てられなくなり、5歳の時からシスター達が運営する孤児院で成長することとなります。
そのまま、19歳になるまで世間の汚さとは無縁の場所で育つロビン。
世間ずれしていないロビンに出会って、彼女との会話が本当に楽しくて、ほぼ一目惚れ状態だったキャル。自分の身分を言うことでその親密さが消え去るのが嫌で 、隠してしまいます。
それでも、旅の最後の日に本当のことを言おうと思っていたら、彼女は早くに下船して叶わず……しまったー、どこに行くのかも聞いてない。
と、焦っていたら、隣の別荘を借りた家族が雇っている家庭教師だとわかります。が、自分の身分もロビンにばれて、身を引かれてしまうのはお約束の展開。
なんとか、自宅に家族ごと呼び寄せたり、食事に誘ったりしてアプローチするのですが……うまくいかず、更に警戒される始末(笑)
いきなり大人の男性に迫られたら、そりゃ逃げたくなるよなーと思うんですが、キャルは最後まで自分のやり方を通してます。傲岸不遜です。


ハリウッドの赤い薔薇 L-293 ハーレクイン社  発刊:1987.10.15
ヒロイン:リサ・ブルックス(テキサス出身・亡くなったばかりの父親の秘書をしていた・デパートの売り子・24歳) ヒーロー:ローガン・マーシャル(映画会社経営)

あらすじ
自宅で気の置けない友人との食事を楽しんでいたローガンは、玄関先で何やら騒ぎが起こっていることに気付いた。その場に顔を出したローガンが見たものは、全身がずぶ濡れになった若い女性が電話を借りたいと、執事に頼み込んでいる姿だった。
また、駆け出しの女優が、捨て身の売り込みにやってきたのか……。
電話ぐらいかけさせてやれよという友人の手前、仕方なく書斎に通したローガンの前で、彼女が被っていたフードを取り濡れそぼったコートを脱いだ。
鳶色の髪からしたたりおちる雫がかかった長い睫毛ごしには、緑色の瞳が心細げに揺れ、寒さのせいか震えているほっそりとした魅力的な肢体にローガンは息を呑んだ。
「きみの名前は?」

3ヶ月前に父親が亡くなり、テキサスの田舎からロスアンジェルスに出てきたばかりのリサ。ローガン達が生きている芸能界のことには、とんと疎かった彼女は「ハリウッドの奇怪な人種」が何を考えているのか、さっぱり理解することが出来ません。
車の故障で助けを求めた豪邸で、とんだ言いがかりをつけられているのですが、それも理解してないほど、彼女は世間の汚れから程遠い存在であり続けます。
風邪をこじらせ肺炎になっていたリサは、ローガンの屋敷で療養することとなります。
欲得ずくでない女性の素晴しさに触れたローガンは、急速にリサに傾倒していきます。
快気祝いのワインで酔っぱらった彼女のその愛らしさにノックアウトされ、そのまま頂いちゃおうという場面で、初めてさんだと知りぐっと我慢をしたりと、日頃の放蕩ぶりが嘘のように紳士になろうとしているローガン。
自分がこれだけ参っているのだから、他の男どもがリサを放っておくわけがないという思い込みで、しなくてもいい嫉妬に苦しむ姿を読むのはなかなか乙なものです。
メモ:海外ロケ地にリサを同伴。


ときめきの初舞台 L-337 ハーレクイン社  発刊:1988.09.20
ヒロイン:ケリー・カーソン(駆け出しの舞台女優) ヒーロー:アダム・デブリン(弁護士・35、6歳)

あらすじ
ニューヨークで成功している弁護士として、アダムは精力的に働いていた。私生活でも、トップモデルから人気歌手まで、派手な女性関係をゴシップ記事に提供している。
そんな乱れた生活を送っているアダムに対して、最近、雇った家政婦ケリー・カーソンが、小言を落としていた。極め付けは、自宅でのディナーデートを邪魔されたことだった。いいムードになる度にミセス・カーソンが顔を出すのだ。
不首尾に終わったデートの最中の彼女の態度のことで、一言、注意をしなければ気が済まないでいたアダムは、ミセス・カーソンが泊まっている部屋へと出向いた。
部屋の中にいたのは、冴えない中年女性ではなく、魅力的な肢体をもつ若い女性だった。

ブロードウェイに立ちたいという夢を叶えるために、田舎から出てきて頑張っているケリー。その夢はあともう少しでかなうというところまできています。
問題は、舞台の役をもらうまで、日々の糧をどうやって稼ぐかということ。
ケリーは冴えない中年女性に変身して、売れっ子の弁護士であるアダムの元で家政婦の仕事を得ることとなります。
この変身が大層見事で、アダムは最初、口うるさい家政婦を雇うことになってしまったという感想だけをもっております。しかし、駆け出しの舞台女優であるケリーの本当の姿を知った時から、アダムは弁護士の手腕を駆使して彼女を口説きまくり。
けれども、今までの派手な女性関係が仇となって、ケリーに「本気で口説いている」ということを信じてもらえません。
アダムが、堪え切れず癇癪を起こすこと数回。つれない態度をとり続けるケリーの側を離れることができずにいるアダムの姿が延々と描かれてます。
大役をつかんだことや、アダムに誘惑されているといことで、ケリーの浮ついた言動が、鼻につく……


パリの花嫁 L-943 (株)ハーレクイン  発刊:2001.04.20
ヒロイン:ニコール・トレント(お針子・デザイナー志望/愛称ニッキー) ヒーロー:フィリップ・ギャラントワ(老舗のワイナリー経営)

あらすじ
弟であるレイモンドが選んだ結婚相手に対して、格下だからとか金目当てに違いないと、フィリップを筆頭に家族は揃って猛反対した。頭が冷えれば、早々に戻ってくると思っていた弟は、そのまま相手の女性とともに姿を消して5年以上の月日が流れることになった。
残されたフィリップ達が、レイモンドの消息を知ったのは、訃報の連絡からだった。
アメリカに渡っていたレイモンドは、一人息子を忘れ形見として残して逝ってしまったのだ。
ギャラントワの血筋をひく、その男の子を引き取り、ゆくゆくは代々続くワイナリーの経営に携わらせるよう教育しなければ……。
フィリップは、甥を引き取って育てているニコール・トレントに電話をかけるのだった。

身分が違うからと姉が拒絶され、勘当までされた義兄たちの苦労を知っているニコールは、甥のロビーを引っ攫いにきたフィリップに対して、悪感情を持っています。
フィリップも金を積めば、ニコールのことを丸め込めると高を括ってやって来ているからぶつかりあうのは必至。
金を積んでの策はニコールの拒絶にあってあえなく頓挫するわけですが、でもなー、本当にもうあっけなく言いくるめられて、フィリップの本拠地パリへと行っちゃうんですよ。
おつむが足りないです。最初から最後まで、足りないまま突き進むニコール。
ニコールに初めて会った時から、彼女に惹かれたらしいフィリップは、押せ押せで獲得作戦を敢行しています。
名目だけの結婚だからとかなんとか言っている割りには、すぐに手を出そうとしているし……。
パリには、フィリップの母親カトリーンが手ぐすねを引いて待っていまして、これがもう、嫌な老婆の典型。散々、嫌みを言われ、金で追い払われかけたりするニコールですが、カトリーンが負傷し輸血が必要となったとき、進んで提供したりとニコールの善さを大アピール。
題材としては、好みの要素満載なのになー……なんだろう、今一つしっくりこなかった作品。