アマンダ・クイック
この名義では、ヒストリカルものを書いてるのかな? 
ジェイン・アン・クレンツの別名義です。


禁断のリング    WAVE出版  発刊:2000.07.31
ヒロイン:ベアトリス・プール(未亡人・司祭の娘・ホラー作家・29歳/作家名アメリア・ヨーク) ヒーロー:レオ・ドレイク・モンクレスト(伯爵・39歳/代々、怪僧の呼称を受け継ぐ)

あらすじ
伯父が心臓発作で亡くなった場所は、いかがわしさに磨きがかかっている売春宿「鞭の館」だった。亡くなってから判明したことに、ベアトリスはショックが隠せなかった。さほど多くなかったもののそれなりにあった財産の全てが、「禁断のリング」と呼ばれる骨董品アフロディーテ像の購入代金に充てられ、その上、それ自体が盗まれてしまったのだ。
今年、社交界デビューを飾った従妹が受け継ぐべき伯父の遺産が一文も無いというのは、彼女の将来を狭める結果しかない。なんとしてでも、「禁断のリング」を探し出すためにベアトリスはある人物の助言を仰ごうと決意した。
その人物モンクレスト伯爵が「怪僧」 と呼ばれ社交界から秘かに恐れられていても、伝説と骨董について、彼ほど知識と伝手のある人はいないのだから。

高貴な血筋の割に、由緒正しきやじ馬根性が勝ってしまうのか、ついつい自ら厄介事に首をつっこんでしまう伯爵。2人の息子が19歳、18歳と成人して親元を離れたこともあって、自分の時間が有り余ってるのも原因かと。
ベアトリスは女流のホラー作家として成功を収め、微力ながらでも売春婦の更生の手助けをする女性。
相手を亡くしたということで、幸福な結婚生活を数年しかおくることができなかったと、ベアトリスと伯爵は世間的に思われています。しかし、2人にとって結婚生活は満ち足りたものではなく、苦い思いで一杯だったと告白し合うあたりから、寄り添い出す心情描写が素敵です。
「この年になって欲望に身をまかせることになるとは」と口元をゆるめる伯爵。かなりの特技の持ち主で、開けられない鍵はないし、追い剥ぎ狩りを田舎での趣味(?)とし、銃で撃たれること2回という身を張ったやんちゃぶりが、楽しかったです。
エルフと名付けた狼に見紛うばかりの大型犬がいい味を出してます。


エメラルドグリーンの誘惑 F-ク3-1  ヴィレッジブックス  発刊:2002.08.20
ヒロイン:ソフィー・ドリンク(貧乏貴族の娘・薬草学に詳しい・23歳) ヒーロー:ジュリアン・シンクレア・レイヴンウッド(伯爵・妻を水難事故で亡くす・34歳/悪魔と陰で呼ばれる)

あらすじ
嫁きおくれのソフィーに結婚を申し込んできた人物が現れた。その人物である近在に広大で裕福な領地を持つレイヴンウッド伯爵は、5年前、惨憺たる結果に終わったソフィーの社交界デビューの中で唯一華やかな思い出を持たせてくれた男性だった。たとえ伯爵の眼中にソフィーはいなかった上に、お義理で踊ってくれただけのことであっても。
憧れていた伯爵からの求婚は、この3年間憑かれたように思い悩んでいたいたことが解決できるかもしれないという希望をソフィーに抱かせるに充分だった。
最愛の妹が未婚のまま妊娠し、自ら命を断ったのが3年前。伯爵の亡くなった妻が周囲に侍らしていた愛人の一人が、どうやら妹の相手だったのだ。
必ず、妹を見捨てた男を見つけ出し、償わせてやるんだから……

そろそろ再婚しようと伯爵が思ったのは、跡継ぎと従順な妻が欲しかっただけ。自分にとって都合の良い女性と思って選んだソフィーが、一筋縄でいかないとは夢にも思わず振り回されてます。
求婚を受けるに当って伯爵に守ってもらいたい3箇条の約束を示したあたりで、そこらにいる女性とはちょっと(かなり?)違うと感じていたようですが。その3箇条の一つ、結婚後3ヶ月(最初、6ヶ月と提案され断固として交渉した結果)はベッドを共にしないをしぶしぶ了承させられたり。
「今日こそは」と決意した夜に睡眠薬を盛られて致すことがかなわなかったり、
以前の愛人と妻が決闘する場所に駆けつける羽目になったり。
存外にモテモテの妻が心配で、周囲を番犬のようにうろうろとして、まるで落ち着かない伯爵。ソフィーの言動が、頭でっかちの理論に基づくものなんですが……真理をついてるから、絶句するしかない彼の憤りがとっても楽しい。
ソフィーとの約束を何一つ、果たせてないと落ち込む伯爵の姿は、彼女への傾倒ぶりを発露していてお気に入りの場面デス。


隻眼のガーディアン F-ク3-2  ヴィレッジブックス  発刊:2004.07.20
ヒロイン:オリンピア・ウィングフィールド(外国の習慣、伝説に関わるもの全てに興味を持つ・3人の甥っ子を半年程前から引き取る・25歳) ヒーロー:ジャレッド・ライダー(チルハースト伯爵・フレームクレスト海運経営・34歳)

あらすじ
15年前、両親を海難事故で亡くしたオリンピアは、親戚中をたらい回しにされ、最後にソフィー叔母さん達に引き取られた。ソフィー叔母さんとその同居人のアイダおばさんの2人は、オリンピアを大事に育て彼女の知的好奇心を伸ばすように愛情を注いでくれたのだった。
だから、両親を亡くしてから2年間、親戚中をたらい回しにされていた3人の甥っ子達を引き取る事になった時、彼らにせめて安心感を与えてやりたいと願った。引き取って半年経った今、以前の穏やかで静かだった生活が思い出せないぐらい、騒々しい日々であっても彼らに笑顔が戻ってきているから……寝酒のブランデーが手放せなくなったとしても、オリンピアはなんとか頑張るつもりでいた。
だから、3人の家庭教師が2週間と持たずに辞めていった中、叔父が送り込んできてくれた家庭教師ジャレッド・ライダーの秩序を取り戻す手腕には目の見張る思いだった。

華麗な超変人一族に生れ育ったにも関わらず、退屈な実務家として大成したジャレッド。曽祖母が残した日記に記されているお宝を探すためなら、どんなことでもやりかねない超変人一族を何とかしようとジャレッドが渋々、乗り出す事になります。
その日記を探し当て買い取ったのが、オリンピア。ジャレッドはオリンピアに実情を話して、日記の買い取りをしようと予定していたにも関わらず、彼女を一目見て思考の一切合切が、彼女の側に居るためにはどうすればいいのかに向かい
「新しい家庭教師だ」と宣言してしまいます。
自分が世事に通じていると信じて疑わないオリンピア。
本当に世事に通じていて誰からも頼りにされてしまう割に報われていないジャレッド。
そんな2人のロマンスが、宝探しとフレームクレスト海運内で行われている大規模な横領とジャレッドの元婚約者を絡めて、進展していきます。

ジャレッドは、最初からオリンピアにメロメロで、「振られたらどーしよーッ」という心情アタフタが可愛くて、オリンピアの「私がジャレッドを守らなきゃ」も素敵。


雇われた婚約者 F-ク3-3  ヴィレッジブックス  発刊:2006.05.20
ヒロイン:エリノーラ・ロッジ(義父の無謀な投資で全財産を失う・コンパニオン・26歳) ヒーロー:アーサー・ランカスター(セント・メリン伯爵)

あらすじ
駆け落ち結婚した両親が宿屋の火事で亡くなった時、アーサーは6歳だった。亡くなるまで、多分、亡くなった後も両親のことを許そうとしなかった祖父は、自分の跡継ぎがアーサーだけしかいないという一点のみで、孫を引き取り徹底的に責任と義務をたたき込んだ。
それは、息子がしでかした無責任な行状を繰り返されたら叶わないという妄執ともいえる教育だった。
アーサーは祖父の教えに忠実であり、それ以上に優等生であった。
爵位を継いだ後、 伯爵家に連なる一族が引き起こす面倒を手際よく捌き、雇っている者たちの暮らしを守りと、アーサーの肩には途方もない重責がのしかかっていた。
アーサーの日常は、しなければいけないことが山積みであった。けれども、我が儘を押し通してでもやり遂げたいことがロンドンにある。
しかし、この社交シーズン真只中にロンドンへ出向けば、結婚相手探しに鵜の目鷹の目となっている輩の餌食になってしまう。爵位を持つ上に、莫大な財産を有するアーサーに娘を嫁がそうとする輩の御託になど煩わせられたくない。
今すぐにでも、アーサーには、周囲を煙に巻くほどの度量をもつ婚約者が必要だった。

義父の無謀な投資のおかげで、無一文となったエリノーラは、ロンドンに出てコンパニオンの職に就くこととなります。しかし、現在、雇ってくれている女性が旅行に出る為、次の職場を探さなければならなくなり、職業紹介所へ。そこで、出会ったのがセント・メリン伯爵であるアーサー。
彼から申し出られた「雇われ婚約者」という職を、吟味して受けることとなります。そこから、エリノーラが頑張ります。アーサーが居住している陰気くさい屋敷で不正を働いている人物と真っ向からやり合い、屋敷に光を取り戻していくこととなります。
「婚約者」としても大発奮し、機知の富んだ会話で、社交界の人気者の地位を獲得。そうこうする内に、アーサーの真の目的を知ることとなり、その捜査にまで首を突っ込むことになるのでありました。
明るくて、賢明な助言をしてくれて、何よりも自分を怖がらないエリノーラの魅力に急速に惹かれていくアーサー。
慇懃無礼ともとれる丁寧な会話を交わしているにも関わらず、「なんだかとっても仲良しさん」の雰囲気を醸し出している2人の関係がいい感じ。
彼がヘマをする度に発せられる「ちくしょう」にニマニマ〜。
顔見知りの犯行を思わせるような筆致で話が展開するのに、実のところは、日常生活に全く接点のない人物が犯人というなんだか肩透かし感、漂う結末がおしいなぁ……。


黒衣の騎士との夜に F-ク3-4  ヴィレッジブックス  発刊:2006.11.20
ヒロイン:アリス(叔父に弟が受け継ぐべき領地を奪い取られる・自然科学の分野の研究に打ち込む・23歳) ヒーロー:ヒュー(スカークリフの新領主・30歳/異名『非情のヒュー』)

あらすじ
死の床にあった祖父から託されたのは、復讐だった。リヴェンホールの一族への恨みを晴らすすべを見つけるまで、休んではならいと、命じられた時、ヒューはまだ8歳だった。
祖父は、愛娘をたぶらかし、非嫡子のヒューを産ませた男とその一族に対する復讐の一念しか、持ち合わせていなかった。 治めていたスカークリフを手放してしまうほど、あとのことなどどうでもよいほど、祖父の精神は復讐に凝り固まっていた。
祖父が亡くなってから二十数年の歳月を経て、ようやくリヴェンホールの一族に鉄槌が下されるまであと僅かの状況となっている。主君エラスムスが復讐を禁じたために、リヴェンホールのヴィンセントに対して直接、仕掛けることができずにいるのがもどかしい時もあったが、今は待てば良いだけだった。
祖父が手放した領地スカークリフの新領主となったヒューは、隣のリーヴェンホールなど歯牙にかけぬほどの豊かな実りをもたらす地にするつもりだった。
そのためにも、領民達の心を掴まなければならい。
必要なのは、先日盗難にあった『スカークリフの石』と呼ばれている緑の石をもう一度、この地に取り戻すこと。
現在、かの石を所持しているのは、リングウッド荘園に住むアリスという女性らしい。
何としてでも石を取り戻そうと、荘園にヒューは出向くのだった。

緑の石を取り返そうと出向いたリングウッド荘園で、ヒューはアリスに出迎えられることとなります。石をすぐに手渡せと命じるヒューに、アリスは怖じ気づく素振りも見せずに、石は既に盗まれていること、そしてその行方を知っていることを伝え、ある提案をしてきます。
石を探し出す手伝いをする代わりに、弟の学費の支援と、修道院に入るための持参金を貰いたいと。
それに対して、ヒューは学費も持参金も支払う用意があることを伝えた上で、婚約者としてスカークリフの領地にきて貰いたいと自分の意見を押し通すのでした。
領地への道中、親密な雰囲気になっていくヒューとアリス。
アリスとの結婚を本当のものにしようと深謀遠慮を練るヒューですが、アリスも一筋縄ではいかない性格なので、うまく丸め込まれてくれません。
三晩前に求婚をあっさりと退けられたヒューが、痛いほど彼女を求めてしまう理由を考えております。その心情は、アリスに対して失礼なことを言ってるんですが、なんとも言えない味わいのある可愛いらしさとなってます。
「いつも変わったものに引かれるたちであり、アリスはどう見ても変わった女性だ」
緑の石の謎解き、リヴェンホールとの確執などを搦めて、物語が展開していきます。
自覚していないだけでヒューがアリスに対して深い愛情を抱き出しているのが、そこかしこでだだ漏れです。
赤毛の鼻っ柱の強いヒロインは苦手だなぁという方は、巻頭でアリスが、ヒューに対してキーーーッとなる場面をぐっとこらえて乗り越えたら一気呵成で読了してしまうかと。オススメ。


真夜中まで待って F-ク3-5  ヴィレッジブックス  発刊:2007.09.20
ヒロイン:キャロライン・フォーダイス(小説家・未亡人・27歳/本名キャロライン・コナー・未婚 ヒーロー:アダム・ハーデスティ(実業家/偽名アダム・グローヴ)

あらすじ
……ミセス・フォーダイスは一体、何を書きつけているのだ?
前夜に行われた降霊会で霊媒を務めていた女が殺害された。女霊媒が持っていた日記を追っていたアダムは、手がかりがないかと、降霊会に参加していた女性を翌日、早朝に訪ねたのだ。
門前払いをくらうかと思っていたアダムは、居心地のよさそうな書斎に通された。机の向こうには、好奇心に満ちた美しいはしばみ色の目をした女性がいた。
女霊媒が殺害されたこと、どうしても手に入れなければならない日記の行方のことをアダムが順に話している間、ミセス・フォーダイスのペンが時折、動いていた。
怪しく思ったアダムは紙をとりあげ書かれているものに目をやった。
『男らしい活力がみなぎっている』『濃い灰色の上着とズボン』『荒々しい顔立ち』『エメラルドのような目。暗く輝く?』
「これはいったいなんですか?」
アダムの声はますます、冷たさを帯びた。
しかし、相手から返ってきた言葉は思いもよらぬものだった。小説家である彼女は、現在、新聞で連載中の小説に出てくるエドマンド・ドレイクなる重要な登場人物の造形にアダムの風貌を取り入れようとしたらしい。
思うように日記を手に入れられなかったことも苛立ったが、それ以上に、アダムは、自分が「エドマンド・ドレイク」という、悲惨な最期を遂げなければならないと巷で思われているほどの悪役をふりあてられことが、不愉快でならなかった。

自分も含めて弟妹の出自が書かれている日記を、手に入れようと動いているアダム。自分のことは、どうにでもなるけれど、社交界デビューを控えた妹や、学問の道に入っていく弟に肩身の狭い思いなど絶対にさせたくないとの決意が格好いい。
日記をもっていた女霊媒師が殺害され、その手がかりをえるために訪れた先で出会ったのが、小説家のキャロライン。2人は急速に惹かれ合っていくのですが、守られるだけの存在でないキャロラインがとても素敵です。
殺人の疑いをかけられそうになったアダムのアリバイを、ちゃんと主張する場面なんて格好良過ぎるー。
できるなら、キャロラインが、新聞に連載中の「謎の紳士」を読みたいです。発表してくんないかな。


満ち潮の誘惑 F-ク3-6  ヴィレッジブックス  発刊:2008.09.20
ヒロイン:ハリエット・ポメロイ(化石収集家・亡くなった父は聖職者・24歳) ヒーロー:ギデオン・ウェストブルグ(セント・ジャスティン子爵、30代半ば/異名ブラックソーン・ホールの野獣)

あらすじ
ギデオンは、6年前、婚約者であったテオドラを妊娠させた上に破談を言い渡し、自殺に追い込んだと白眼視され続けていた。大男で顔には細身の剣で深く刻まれた傷痕のある彼を、侮蔑をもって「ブラックソーン・ホールの野獣」と、聞こえるように世間は噂している。
そんな彼の元に、一通の手紙が送り付けられてきた。
差出人は、ミス・ハリエット・ポメロイ。先年だったか、亡くなった教区長の娘からの危急を告げるかのような手紙だった。
呼び付けられギデオンを出迎えたのは、おびただしい数の骨と、その中心にいた若い女性がむける安堵の浮かんだブルー・グリーンの瞳。
侮蔑も恐怖も浮かんでいないその視線に、ギデオンは戸惑った。

ハリエットが、化石を一心に掘りだしている洞窟に、値の張る盗品が隠されていることをギデオンに知らせたことから、物語が始まります。その辺り一帯の領地を管理しているギデオンが、ハリエットの「私の洞窟」を守るために動いていくのですが……。
自分の考えや計画を他人に教えたり、一緒に練り上げていくことなど毛頭ないギデオンと、「私の洞窟」や「私の大事な旦那様」に関してつい首を突っ込んでしまうハリエット。ハリエットが危険に遭う度に、肝を冷やすギデオンが徐々に頑固な態度を崩していってます。
ハリエットが危急存亡のときとばかりに雄々しく書き送った手紙に、かけつけてくるギデオンとその父ハードキャッスル伯爵。似たもの親子な2人になんだか、ほのぼの。反目し合ってばかりいた父と子が不器用に歩み寄っていく過程が本当にぎごちなくていいんですよー。
あまりにハリエットが愛でる化石を、真剣にライバル視するギデオンも愛らしくて素敵でありました。


首飾りが月光にきらめく F-ク3-7  ヴィレッジブックス  発刊:2009.01.20
ヒロイン:ルイーザ・ブライス(未亡人/扇情新聞「フライング・インテリジェンサー」記者名I・M・ファントム/本名ジョアンナ・バークレイ ヒーロー:アンソニー・ストールブリッジ(名家の相続人/愛称トニー)

あらすじ
1年余り前にテムズ川に身投げして命を絶った婚約者フィオーナ・リズビー。
彼女の自殺は、婚約を破棄されかけていたことを苦にしてのものだというのが世間の見方だった。
しかし、婚約者だったアンソニーは、フィオーナが自殺したとはどうしても思えなく、ならば殺害されたのであれば、その犯人は誰で理由は何故かと疑問は膨れ上がるばかり。
その上、フィオーナが亡くなった数日後に、エルウィン・ヘイスティングズの妻ヴィクトリアが同じように身投げをして命を絶っていた。
もしかすると、フィオーナとヴィクトリアの自殺に何らかの関係があるのではないかと、一縷の望みをかけてエルウィン・ヘイスティングズの身辺を探り続けていてアンソニーの前に現れたのが、ルイーザ・ブライスという未亡人だった。
彼女は田舎から出てきたばかりという野暮ったい衣装に身を包み、パーティの席上でも壁に溶け込みそうなほどに目立たない立ち居振る舞いをし続けていた。
その彼女が、ヘイスティングズの寝室からそっと出てきたのを目の当たりにし……。

上流階級に属する紳士たちの悪行を暴露するために、日夜、活動し続けているルイーザ。
稀覯書を扱う書店主であった頃、顧客だったギャヴィン卿を殺害してしまった過去を持つ彼女は、上流階級にいるというだけで、法の裁きを逃れる紳士たちに対して憤りを抑えることができません。
対して、婚約者フィオーナの自殺の真相を探り出そうと、執念を燃やしているアンソニー。
そんな2人が出会って、力をあわせて、真相を明らかにしていく物語となってます。
楽しいのは、ルイーザとアンソニーの「人目を忍ぶ情事」のあれこれ。
扇情的な小説や演劇をこよなく愛するルイーザは、「人目を忍ぶ情事」なるものをめくるめく悦楽を得られるものと多大なる妄想に浸ってます。
で、アンソニーを相手に初体験となるのですが……期待していたものとは程遠い結果をえることになり(笑)、その原因が何であるかについてアンソニーととんちんかんな会話を交わしてます。
アンソニーの男としてのプライドは、
「屈辱の重みで地中にめりこんでしまうぞ」
冷静な紳士の仮面をかぶりながら、汚名挽回に精力を注ぐアンソニーが可愛い。


運命のオーラに包まれて F-ク3-8  ヴィレッジブックス  発刊:2009.05.20
ヒロイン:ヴェネシア・ミルトン(写真家・20代後半) ヒーロー:ゲイブリエル・ジョーンズ(アーケイン・ソサエティ宗主継嗣)

あらすじ:アーケイン・ソサエティシリーズ(ご先祖篇)
アーケイン・ソサエティの創設者、シルヴェスター・ジョーンズが息を引き取った研究室を探し当てたのは、その子孫であるゲイブリエルとケイレブだった。
200年前、寝台に横たわったままの姿が、2人の前にあった。肉体は骸骨と成り果てていたが。
このまま放置するわけにもいかず、研究室にある一切合切を梱包して運び出す算段をする。
それで、事は終わる筈だった。
どこから情報が漏れたのか、運搬に関わった男が刺殺され、墓場から運びだした荷物とその目録を確認した結果、手帳が一冊、消え失せていた。
大層な金庫にたったそれだけをしまっていたシルヴェスターの手帳。

アーケインソサエティが収集している古美術品の写真撮影を依頼されたヴェネシアは、人里はなれたアーケインハウスに招かれます。そこで、撮ってもいいと許可のでたものを写していくのですが、一番とりたい存在は、ゲイブリエル。
彼にとても強く惹かれたヴェネシアは、夢見ていためくるめく一夜の情事をしようと頑張ります。
南国、やしの実を想像するヴェネシアがかわいい。
互いに満足する一時を過ごして、さーこれからのことを……というところで、襲撃者がやってきて2人は離れ離れに。
ロンドンにやってきたヴェネシアは、ある朝、ゲイブリエルが死亡したことを伝える記事を新聞で見つけます。丁度、未亡人として写真館を営むつもりだったヴェネシアは、ゲイブリエルとのことを感傷する思いもあって、ミセス・ジョーンズを名乗ることとなります。
死んでなかったゲイブリエルは、襲撃者の大元を燻りだすために、彼女たちの嘘にのっかかってくるという荒技を。ミスター・ジョーンズが新婚旅行先のアメリカで亡くなった顛末と助かって新妻を追ってくるまでの物語りが、王道ロマンス設定で笑えた。
オーラを見ることができるヴェネシアと、捕食者としての能力が格段に優れているゲイブリエル。自分の能力を人類としての退化だと思い至っているゲイブリエルに、そうじゃないと諭していく場面が好き。


炎の古城をあとに F-ク3-9  ヴィレッジブックス  発刊:2009.10.20
ヒロイン:コンコーディア・グレイド(教師・26歳?) ヒーロー:アンブローズ・ウェルズ(私立探偵)

あらすじ
見張っていたオールドウィック城が爆発音とともに燃え上がった。
ロンドンの暗黒街を牛耳っているアレクサンダー・ラーキンが、城に人目を忍んでやってくるとの情報をようやく掴んでこんな田舎にまでやってきたのだ。
2度目の爆発音が、周辺にまで鳴り響く。
城から抜け出そうとする人間がいたら必ずいくであろう厩に、足を向けた。
厩の戸口は、腰の引けた男の仁王立ちで塞がっていた。中で、今にも外に飛びだそうとしている馬がぐるぐると駆けている。馬を何とか馭している妙齢の女性が焦りの表情を浮かべていた。
アンブローズは、邪魔な男に手刀をたたき入れ、昏倒させ
「あなたが先生ですね」

コンコーディアの地に足のついた行動力が素敵。教え子を何としてでも守り抜こうとする姿勢も格好いい。そして、男女の機微に疎くて、アンブローズと交わすその頓珍漢な会話が楽しい。
アンブローズの義賊ぶりも素敵だし。
ただ、アレクサンダー・ラーキンがもっと暗躍するかと思っていたら、あっさりと殺害されたりと、悪党側が今一つ、盛り上がりにかけてます。悪事が小粒すぎるからか。