リサ・クレイパス


悲しいほど ときめいて ク1-1 原書房:ライムブックス  発刊:2005.11.24
ヒロイン:シャーロット・ハワード(没落名家の長女・20歳/愛称ロッティー) ヒーロー:ニック・ジェントリー(捕り手・元泥棒の元締め・28歳/本名ジョン・シドニー卿・子爵)

あらすじ:ボウ・ストリートシリーズ3・
ロッティーに婚約者が出来たのは8歳の時だった。
贅沢好みの両親は、収入の当てもないままに浪費を重ね、莫大な借金を築き上げていた。積み上がった借財の支払いと、これからの暮らしの糧を支払ってもらう代わりに、両親は、長女のロッティーを30歳も年上のラドナー卿に差し出したのだ。
ラドナー卿の、ロッティーの成育と教育に対する態度は、常軌を逸している感があった。
寄宿学校のカリキュラムに口を出すのはもちろんのこと、太り過ぎだと感じれば極度の食事制限を強要した。
今まで、援助してくれた恩、そして両親や幼い弟妹たちのこれからの暮らし向きを考えれば、ラドナー卿の元に嫁ぐしかない。
……けれども、どうしても耐えきれなかったロッティーは、卒業を前にして寄宿学校を脱け出し、身を隠すのだった。

家出をして2年。老齢のウェストクリフ伯爵夫人の話し相手としてひっそりと暮らしていたロッティーの消息を掴んだのは、ニック・ジェントリーという捕り手。捕えた獲物は、決して逃がさない非情な人間……だったんですが、一目、ロッティーを見てから、気持ちが揺らぎ始めてます。
ラドナー卿の依頼を受けて、ロッティーの行方を2カ月間も追っていたのですが、彼女を知るにつれ、自分自身のものにしたいという欲求が身の内に膨れ上がり、それを抑えることを早々に放棄してしまうこととなります。
ということで、ラドナー卿から婚約者を略奪♪
ラドナー卿の監視の元で、少女時代を自由に過すことができなかったロッティーを、ニックが甘やかすこと甘やかすこと。熱々の新婚夫婦が描かれるわけです。
ニックが過去の出来事に対して強く抱いている罪悪感を、ロッティーが癒していくのが本筋となるのかもしれません。


ふいにあなたが舞い降りて ク1-2 原書房:ライムブックス  発刊:2006.02.20
ヒロイン:アマンダ・ブライアーズ(人気作家・30歳) ヒーロー:ジャック・デヴリン(出版会社経営・31歳【25歳】/本名ジョン・T・デヴリン)

あらすじ
経営する出版会社を更に発展させるために、どうしても会いたい人が、ジャック・デヴリンにはいた。
売れっ子の女流作家であるアマンダ・ブライアーズ。
彼女の作品を、今あたためている手法で、出版販売することができたなら、出版業界に旋風を巻き起こすことができる。
しかし、彼女に避けられているのか、ジャックはなかなか面識をえることができないでいた。
偶然ながらも、ようやく見つけ出した伝手の紹介で、ジャックは彼女の自宅の門前にたつことができるのだった。

30歳の誕生日を目前にして、アマンダは、今までの自分の人生に欠けているものを自分自身のプレゼントにしようと思い立ちます。
男を知らない身空で一生を過したくないと、男娼を雇うことにしたのですが、仲介してくれた高級娼
館の女主人は、一計を立てます。
「出版業界に旋風を巻き起こしているジャック・デヴリンと、人気女流作家であるアマンダ・ブライアーズはお似合いだわ」
ということで、仕事の話をしにアマンダの自宅を訪れたジャックは、男娼と間違われて、二人は一線は超えなかったものの艶っぽい時を過すこととなります。
ジャックがアマンダの男性に対する警戒心を解いていき、アマンダはジャックが過去にうけた仕打ちで傷ついた心を癒していきます。
とりたてて、大きな事件がおこるわけでもなく物語は展開していくのですが、二人が互いに恋に溺れていく様子がなんともいい感じの作品となってます。


ひそやかな初夏の夜の ク1-3 原書房:ライムブックス  発刊:2006.06.20
ヒロイン:アナベル・ペイトン(没落した名家の長女・25歳) ヒーロー:サイモン・ハント(投資に詳しい実業家・大富豪・肉屋の息子・33歳)

あらすじ:「壁の花」シリーズ1
社交シーズンも終わりに近づいて、アナベルは焦っていた。今年も夫が見つからなければ、年齢的にも、もう後がない……。
父親が亡くなってから、ペイトン家は火の車で、弟の学費はもちろんのこと、日々口にするものも乏しくなっている今、何としてでも裕福な貴族の家に嫁ぎたかった。
でも、そんな家庭の事情を世間はよく知っているせいか、舞踏会に出席しているアナベルにダンスを申し込んでくる紳士は一人もいない。
壁の花となっていたアナベルと同様に今シーズン、壁際の椅子を常連にしていた女性が声をかけてきた。
「せめて、もう少し座り心地のいい椅子を用意してくれてもよさそうなものなのにね」

米国の大富豪ボウマン家(石鹸製造業で財をなす)の娘達(リリアンとデイジー)と、ギャンブルで財を成したジェナ家の娘(エヴァンジェリン)とアナベルは、夫探しを協力しあうこととなります。
まずは、年齢的に後がないアナベルから。
彼女の夫探しの為の舞台として選んだのが、ウェストクリフ伯爵がハンプシャーで開いた狩猟パーティ。
目をつけた独身男性に、手練手管を駆使して、迫っていくこととなるアナベルと援護陣。そのあたりの描写より、4人娘のちょっとばかり(?)タガが外れた言動がもう、楽しげでニマニマ。屋外でドレスを脱ぎ捨てて下着姿で、ラウンダーズ(野球もどき)に興じる4人の開放的なことといったら。それを紳士達に見られた後の顛末も可笑しい。
アナベルに強烈に惹かれているサイモン・ハントが、上流社会のしきたりとか礼儀などを無視して強引に迫っていったりする中で、彼女の存在が自分にとってどれだけ大切なのかを知る過程がなんだか初々しかったり。
リリアンが、狩猟パーティのホストであるウェクリスト伯の堅気で生真面目な性格に痛恨の一打を加えていく様子など、登場人物が魅力的に描かれてます。
あと、高級ホテルの謎めいたオーナー、ハリー・ラトレッジが、何作目のヒーローになるのかしらと期待〜。


恋の香りは秋風にのって ク1-4 原書房:ライムブックス  発刊:2006.11.20
ヒロイン:リリアン・オーデル・ボウマン(アメリカの大富豪令嬢・22歳?) ヒーロー:マーカス・マースデン(ウェストクリフ伯爵・35歳)

あらすじ:「壁の花」シリーズ2
米国で、
石鹸製造業から莫大な財をなしたボウマン家を、数週間に及ぶハウスパーティに招待したのは、今後の事業展開を見越してのことだった。
できれば、同行している家族はなしの当主のトーマス・ボウマンだけを招待したかったがそうもいかないようだった。娘2人を何としてでも貴族に嫁がせようとしているボウマン夫人と、あの姉妹。
ボウマン家の姉妹、特に姉娘のリリアンのふるまいは不適切のなにものでもなかった。
初夏のハウスパーティで友人達と下着姿で、ラウンダーズに興じていたのだ……。
あの騒々しい性格が短期間に静かになるわけがなく、だとすれば、このパーティではどんな大混乱が引き起こされることになるか。
末の妹リヴィアが、ボウマン家を出迎えるために、ウェストクリフを玄関まで引っ張っていこうとする手から疾風のごとく逃れたあと、彼は遠乗りにでかけた。
しかし、戻ってきた厩舎の小放牧場で、件のラウンダーズを楽しんでいるボウマン姉妹の姿を目の当たりにすることになるのだった。

互いに相手を言い負かしてやろうと、ついやり合ってしまう間柄のリリアンとウェストクリフ伯爵。
リリアンは、ウェストクリフが思い描いていた「温和で礼儀正しい」結婚相手としては正反対の存在なのですが、気になって仕方がない女性。そんなリリアンに、傾倒していく彼の様子がムフフフフ。
特別に調合してもらった「香水」を、身に付けた壁の花4人組が実験している姿が、本当に楽しそうです。その香りに反応するのが、前作ヒロインのアナベルの夫ハントと、ウェストクリフ。
小道具の使い方がうまいです。
あと、リリアンの豊かな黒髪を押さえつけるための大量のピンの存在とか。
誘拐されたリリアンを鬼気迫る形相で追い求めるウェストクリフ伯爵は、本当に格好いい。


もう一度あなたを ク1-5 原書房:ライムブックス  発刊:2006.12.20
ヒロイン:アリーン・マースデン(伯爵家の長女・31歳) ヒーロー:ジョン・マッケナ(実業家・元馬丁・30歳)
ヒロイン:オリヴィア・マースデン(伯爵家の次女・24歳/愛称リヴィア) ヒーロー:ギデオン・ショー(米国の大富豪・35歳?)

あらすじ
新興国アメリカで財をなしたショー家の家長として、ギデオンは事業を切り回していたが、別に働かなくても衣食住に困ることは一切無かった。財力だけが何よりも大事だとする父親との軋轢や、親密に付き合っていた筈の女性達が、ここぞというところで、彼を見限っていく。今の彼にとって、酒を酔うほどに飲むことが、一番ましな状況を作り出す方法だった。
「私には、わざわざ追いかけようと思うほど夢中になれるものなどありませんから」
そう思っていたショーが、事業拡大のために、訪英した先で出会ったのは、舞踏会から漏れてくる音楽にのって噴水の前で、楽しそうに踊っている若い女性の姿だった。

上記のあらすじは主人公達のものではありません。
マッケナの共同経営者であるショーの気怠げ〜な言動が、リヴィアが視界に入った途端、しゃかりきになったりするのが大層、かわいいです。
リヴィアのことを大切に思っているのが随所に描かれてます。
泥酔していたところに、心配したリヴィアがやってきてちょっとした言い合いになって、自制心が弾けとび、じゅうたんの上に押し倒しことに及ぼうとしたショー。
けれども、なんとか理性と良心を呼び戻している彼に対して、煽っているリヴィアの言動がキュート。
「しかもじゅうたんの上でだなんて」
「私はちっとも不快じゃなかったもの。それに、このじゅうたんも大好き。だから、ね、もう一度」


冬空に舞う堕天使と ク1-6 原書房:ライムブックス  発刊:2007.03.20
ヒロイン:エヴァンジェリン・ジェナー(賭博クラブオーナーの一人娘・23歳/愛称エヴィー) ヒーロー:セバスチャン(セントヴィンセント子爵・公爵家の跡取り・32歳)

あらすじ「壁の花」シリーズ3
エヴィーにはもうあとがなかった。
日常的に伯父夫妻から受けている虐待はひどく、何よりも体調を崩している父の見舞いすらままならないのだ。
この状況を打破するためには、誰かと結婚するしかない。
白羽の矢をたてたのは、セントヴィンセント卿だった。
彼は破産を目前にして、エヴィーにとって初めてできた親友達の一人であるリリアンを誘拐し、結婚を強要した男だった。
エヴィーとの結婚を承諾してくれそうな人物は、借金で首が回らなくなりかけている彼しかいない。
伯父夫妻の目を死に物狂いで盗んで飛び出したエヴィーは、セントヴィンセント卿の屋敷を訪ねるのだった。

放蕩の限りをつくしている男が、一人の女性のために、生き方を変えていく王道のラブロマンス。
浪費することしか知らなかった上に、働くことなどこれっぽっちも思いつかなかった彼が、エヴィーが相続することになった賭博クラブの再建に乗りだしていきます。
それは、自分の破綻した懐を豊かにするための手段なのですが、エヴィーに対する優しい気遣いがそこかしこにあふれ出してます。
エヴィーが伯父夫妻から虐待を受けていたことを知った時の、彼の憤る姿が一番、好きな場面。
「命をかけて誓うが、わたしの手がきみに痛みを与えることは絶対にない。わたしはほかの点では最低の夫になるかもしれない……しかし、暴力をふるうことはけっしてない。それだけはわかってもらいたい」
メモ:キャム・ローハン(24歳・エヴィーの幼馴染み)


春の雨にぬれても ク1-7 原書房:ライムブックス  発刊:2007.03.20
ヒロイン:デイジー・ボウマン(アメリカの大富豪令嬢・22歳/本名マルグリート・ボウマン) ヒーロー:マシュー・スウィフト(デイジーの父の右腕・30歳前/本名マシュー・フィーラン

あらすじ「壁の花」シリーズ4
米国で、石鹸製造業から莫大な財をなしたボウマン家の次女デイジーに、父親は最後通牒をつきつけた。
「五月の終わりまでにふさわしい相手を見つけなさい。でなければ、おまえをスウィフトに嫁がせる」
アメリカから、はるばるイギリスにやって来たのは貴族の血をひく結婚相手を探すため。なのに、デイジーは相変わらず読書にばかり夢中になっているのに業を煮やしたのだった。
父が無理矢理押し付けようとしている男性マシュー・スウィフトは、実利一辺倒の人間だった。父親と同じような考えをし行動をする持ち主と結婚するなんて考えるだけでも嫌だった。

「壁の花」シリーズのとりを飾るのは、デイジー・ボウマン。
お相手は、父の腰ぎんちゃくであるマシュー・スウィフト。
マシューのデイジーへの強い憧れ、恋い焦がれている思いが真っすぐで良かった。
生真面目な彼が、夢見がちなデイジーのことをひたすら大事に思っていて、いいわー。素敵。
あと、ウェストクリフ伯爵が株を上げまくってます。
彼が主人公だった『恋の香りは秋風にのって』よりも、脇役で登場している時の方が存在感があります。結婚相手を見つけられないデイジーに対して、父親から
「おまえは寄生虫だ」と言われたと落ち込む彼女に、そうじゃないと優しく諭す伯爵。
「デイジーは、彼女のすべてを大切に思い、厳しい現実から彼女を守ってくれるような男性と結婚すべきだ。彼女が夢見ることを許すような夫がふさわしい」
最初に伯爵が言う「デイジーの理想の夫像」は、マシューそのものなわけですが、デイジーが夢見るだけの女性ではなく成長して、マシューの支えとなっていく強さを見せるのもひねりがあって好き。
デイジーの姉リリアンは、出しゃばり過ぎに感じるほど頻繁に登場。
デイジーより目立っている場面が多かった……デイジーが主人公なのに…。


とまどい ク1-8 原書房:ライムブックス  発刊:2007.07.20
ヒロイン:ラリーサ・クロスランド(伯爵未亡人・24歳/愛称ラーラ) ヒーロー:ハンター・キャメロット・クロスランド(ホークスワーク伯爵/本名?・30歳

あらすじ
一年前に海難事故で亡くなった筈の夫ハンターが、無事に帰国したらしい。未亡人となっていたラーラは動揺を必死になって隠し切ろうとしていた。
この一年の間、自分の意思で物事を決定できる喜びを噛みしめていたのに……。
2年間の結婚生活はラーラにとって、夫の影に怯える生活だった。
夫には結婚したいとまで思っていた愛人がいた。ラーラの元に子を為すためだけに渋々訪れてくる夫を受け入れなければならない身体や心の痛み。
あの生活がまた戻ってくるのか……暗澹たる思いだった。

一年前に亡くなった筈のホークスワーク伯爵ハンターが帰国し、周囲の慌てふためく状況から物語が始まります。
帰国したハンターは本物なのか?
ラーラも含めて、疑心暗鬼の視線がハンターに注がれます。読者は書かれている彼の行動から、その真偽がすぐわかる展開となってます。
夫に対して怯え以外の感情を抱いていないラーラを振り向かせようとするハンター。思いがラーラへと一直線に向かっているハンターの言動に頁を繰ってました。
終盤、真実を糾弾したラーラの言動は、正義感がたかぶったり、自己憐憫に落ち込んだり、考え過ぎたりする妊娠時特有の感情の揺れ、その揺れのままに行動しちゃうアイタタタなところなんて、身につまされます。
慈善活動に入れ込むラーラの意固地な態度とか、ラーラの妹レイチェルの夫婦関係が夫による虐待という何とも陰惨な話もあって爽やかに読める作品ではありません。
でも、あれだけハンターに一途に愛されるなんて、なんとも羨ましい限りという仕上がりとなってます。


想いあふれて ク1-9 原書房:ライムブックス  発刊:2007.11.20
ヒロイン:ヴィヴィアン・ローズ・デュバル(高級娼婦/本名ヴィクトリア・デバネ・故父親は哲学者・ヴィヴィアンの双子の妹 ヒーロー:グラント・モーガン(捕り手・34歳)

あらすじ:ボウ・ストリートシリーズ1・2・3
グラントはテムズ川から引き上げられた女の顔を見た時、驚きを禁じえなかった。
高級娼婦のヴィヴィアン・ローズ・デュバルが、頭を殴られ首には絞殺のあとまでつけて目の前に横たわっている。
二カ月前いかがわしいパーティの席上で高級娼婦ヴィヴィアンの余りの美貌に強く惹かれて交わした会話には、彼女がただの自己中心的な女だということを早々に見抜くだけの成果しかなかった。
グラントに振られた腹いせに、ヴィヴィアンは自分こそが彼を振ったのだとまことしやかに喋り散らした。
ありもしない噂が巻き散らかされ、そのおかげで、どれだけの憤りを抑え込まなければならなかったか。
復讐の好機は、思いもかけずにグランドの腕の中に転がり込んできた。
それも都合の良いことに、ヴィヴィアンは頭を強打したことが原因で記憶がなかったのだ。

記憶のないヴィヴィアンを自宅にかくまい、その上、客間で寝かすのではなく、自分の寝室で療養させるグラント。
彼女と寝て飽きたら捨てて、相手の心を傷つけることができたら腹いせになるという、何とも卑小な理由でヴィヴィアンの世話を親身にしています。
高級娼婦だから底の知れた女だとばかり思っていたヴィヴィアンが見せる顔が、ことごとくグラントの思い込みを覆していく展開となってます。
召使いに対しての優しさ、読書に対する熱意と知識、どれも高級娼婦であるヴィヴィアン像とはかけ離れたところにあります。
そして、何故、ヴィヴィアンが殺されそうになったのかを調べ上げていくグラントは、彼女が何者であるのか探していくこととなります。
と、いってもヴィヴィアンとベッドを共にするまで、高級娼婦だという思い込みは晴れないんですけどね。最終局面でなだれ込むように、真相がわき出してくる展開となってます。それまでは、ひたすら、ヴィヴィアンに対するグラントの複雑な想いが交差してます。


憎しみもなにもかも ク1-10 原書房:ライムブックス  発刊:2007.12.20

ヒロイン:ソフィア・シドニー(没落子爵令嬢・28歳)

ヒーロー:ロス・キャノン(治安判事・39歳)

あらすじ:ボウ・ストリートシリーズ2・3
最愛の妻エレノアがお産の際に赤児とともに命を落としてから、ロスは仕事中心の生活をひたすらおくり続けていた。寝食を忘れて仕事に没頭する彼に、世間は治安判事としての賞賛と畏敬を、家族からは身体を壊すのではないかという懸念の視線を寄せられている。
そんな何事にも動じない強固な精神を自負していたロスの前に現れたのが、ソフィア・シドニーと名乗る妙齢の女性だった。ロスの元で働く治安判事補佐官の募集を行ったところ、求職にやってきたらしい。
彼女を一目見た瞬間に、高ぶった思いは既に身体を影響させていて、ごまかすためにロスは慌てて椅子に腰掛ける始末だった。

弟ジョンを死に至らしめたロスに復讐するために、治安判事補佐官の募集に応募してきたソフィア。ロスの懐に入り込み、彼が失墜するような何かを探り出そう、もしくは、愛欲に溺れこませたあと捨て去ってやると乗り込んでくるわけですが……。
ロスの仕事に対する公明正大な態度、ソフィアに対する紳士的な態度と一途さ。どれもソフィアの復讐心を削いでいくこととなります。ロスが肩を撃たれ、その看病の最中、自分には復讐は無理だと気づかされます。
亡くなったと思っていたジョンが生きていたこと、身分の違いなど、ロスとの間にはあらゆる障害が横たわっているとソフィアは思っているのですが、ロスは
「わたしは、絶対にきみを離さないよ」
メモ:ロスやグラントが懇意にしているリンリー医師のロマンスってあるのかしらん?


夢を見ること ク1-11 原書房:ライムブックス  発刊:2008.02.20

ヒロイン:リバティ・ジョーンズ(美容師・24歳)

ヒーロー:ゲイジ・トラヴィス(トラヴィス家の跡取り・30歳)
ヒーロー:ハーディ・ケイツ(リバティの初恋の男性・3歳年上)

あらすじ
ハーディ・ケイツがリバティと出会ったのは17歳の時だった。越してきたばかりの彼女は近所の犬に追いかけられ転倒し、膝を擦りむいていた。14歳の彼女は痩せっぽちでハーディにとってみれば、もう一人手のかかる妹ができたようなものだったのだ、最初の内は。リバティは、男にだらしない母親をひたすら愛して面倒を見続ける。愚痴の一つも言わずに、生まれてきたばかりの異父妹の世話をしている。そして、ハーディの目の前で彼女はどんどんと美しく成長していく……。
ゲイジ・トラヴィスは激怒していた。癌で亡くなった義母の為に建てられた屋敷に父チャーチルが愛人を連れ込むとは。24歳の彼女は父の愛人としては、若すぎないか。落馬で脚を骨折したために、車イス生活を余儀なくされている父が、新しくアシスタントを雇うからとリバティを連れてきたのだ。
美容師としての経験しかない女が、父のアシスタント?
2度と顔を見せるなと居丈高に脅すように告げたにもかかわらず、 ゲイジはそれから毎朝、父のアシスタントとなった彼女と顔をあわすことになるのだった。そして、不覚にもインフルエンザにかかったゲイジを看病しにやって来たのはリバティで、身体にいいからとわざわざ作ってくれたチキンダンブリングは絶品だった。

リバティが困り果てている時にハーディが差し伸べてくれた気遣い、優しさ、愛情はリバティの心に染み渡っていつまでも鮮明な思い出となっています。その切ないまでに美しい思い出が積み上がっていくのが前半。
美容師として働きだしたリバティの元に顧客としてやってきたチャーチル・トラヴィスとの交流が半ばで描かれ、その息子ゲイジとの軋轢から始まる関係が後半で描かれます。
懐に相手をなかなか入れることができないゲイジですが、一旦、認めてしまうとその懐が広くて、とても誠実です。リバティの涙に弱いところなんてもう、本当に素敵です。幼い異父妹キャリントンを養うことで苦労してきたリバティを甘やかしたくて仕方がない彼の様子も微笑ましくて凄くいいのですが、絶対に彼女を諦める気がない姿勢はもっと素敵。
メモ:トラヴィス家弟妹/ジャック25歳、ジョー23歳、大学生ヘイヴン(末っ子長女)/キャリントン9歳


あなたを夢みて ク1-12 原書房:ライムブックス  発刊:2008.04.20

ヒロイン:サラ・ローズ・フィールディング(人気作家・25歳)

ヒーロー:デレク・クレーヴン(高級賭博クラブ経営者・30歳?)

あらすじ
アヘン剤を服用していても、昨夜、縫い合わせたばかりの顔の傷が痛む。痛みが治まるまで寝ついていた方がいいのは分かっていたが、デレクは、経営する賭博場にはりめぐらされた秘密の通路をうろついていた。
そう、隠し穴から彼女を盗み見るためだけに。
彼女は、賭博場の中を興味深げに歩き回り、そして一心不乱に書き付けをし続けている。
昨晩、暴漢に襲われ顔を切りつけられていたデレクを助けてくれたのは、人気小説家のサラだった。
助けてくれたことの礼に金を渡そうとしたデレクだったが、彼女は受け取らなかった。代わりにと、
「この賭博クラブの中を見学させていただけるなら」

デレクが退屈しのぎに手を出していたのは、有力貴族の奥様方。その内の一人、アシュビー卿の奥方であるジョイスの奔放な閨にも早々に飽きて、切り捨てようとするのですが、別れ話がもつれます。いたくプライドが傷つけられたジョイスが、ところ構わず押し倒す勢いでデレクをつけ回してます。
そんなジョイスの対局にあるのが、サラ。
彼女を見初めたデレクは、手を出してはいけない女性だと己を厳しく律することとなります。でもまぁ、想いが深いだけに暴走しちゃうんですけどね。
サラが書いた小説「マチルダ」の主人公である娼婦マチルダを、読者が実在の人物として評したり、憧れたりしている様子が、いいんですよ。
お気に入りの登場人物のその後とか、実はこうだったかもと、妄想するのって、格別な楽しさですもん。
あと、サラに心酔し切っているデレクを読み拾う楽しさったら、もうっっvv


あなたのすべてを抱きしめて ク1-13 原書房:ライムブックス  発刊:2008.07.20

ヒロイン:ウィルへミーナ・ローソン(旧家の破天荒な令嬢・愛称リリー)

ヒーロー:アレクサンダー・レイフォード(ウルヴァートン伯爵/愛称アレックス)

あらすじ
婚約者キャロラインが亡くなってから2年が経った。女だてらに馬に乗って狩り場を颯爽と駆けるの楽しんでいた彼女は、落馬し首を折ってこの世を去ったのだ。
直前まで馬に乗ることを止めていたのに、止めきれなかったことをアレックスは後悔し続けている。
親戚一同が、そろそろ跡継ぎをと又、言い出し始めたのをきっかけに、アレックスは結婚相手を選びだした。
キャロラインのように溌剌とした女性ではなく、穏やかで従順な性格のひとを。選ばれたのは、
ペネロープ・ローソン
一切我を張らず、もの静かにたたずみ、アレックスの言葉に恥ずかしそうに耳を傾ける年若い女性。
まさか、ペネロープの後ろで、アレックスの結婚をつぶしにかかろうと、爪を研いでいる女性がいようとは思いもしなかった。

大事な妹、ペネロープには思いの通じ合った男性、ザッカリー・スタンフォードがいて、2人の仲を引き裂くなんて許しがたいとお節介をやくリリー。
けれども、リリーは既に深刻な厄介事を抱えてます。愛娘ニコールを誘拐され、その安否がわからぬまま財産を食いつぶされた状況にあります。
妹を愛のない結婚から救い出せることには成功できたものの、最愛の娘をとりもどせる機会はやってきそうにない……。自暴自棄の中、なんとかお金をつくりだそうと賭場で無茶な賭をしていたリリーのところにやってきたのが、婚約者ペネロープを失って怒髪天にきているアレックス。
無茶な賭に勝ったアレックスが、支払いの代償としてリリーの一夜を買う事になるわけでして。
豪勢な賭場の持ち主、デレクがまだ洗練されていない人物として登場。彼の抱える劣等感とか粗削りなところとか、この作品を先に読みたかったよなー。
アレックの身内に対する献身と愛情の深さが、格好いい。


夜色の愛に つつまれて ク1-14 原書房:ライムブックス  発刊:2008.12.20

ヒロイン:アメリア・ハサウェイ(長女・ラムゼイ子爵の妹・26歳)

ヒーロー:キャム・ローハン(ロンドンの高級賭博クラブ「ジェナーズ」の支配人・30前)

あらすじ:ハサウェイ家シリーズ1
「三十代を目前にした男にとって、性欲が減退するのはあたりまえのことなんでしょうか」
陰気に尋ねてきたキャムの言葉に、雇い主にあたるセントヴィンセント子爵は飲んでいたブランデーで大きくむせることになった。
ここ1年ばかり、分別を忘れて無茶をしたいという要求に狩られるのに、なにをしてもやる気のなさが押し寄せてくるのだ。
真面目なことも冗談で混ぜ返すことが多い子爵からの助言は、
「新しいものに挑戦すれば大丈夫だろう」というものだった。
その言葉を思い出したのは、自堕落な兄を探しだそうと高級賭博場「ジェナーズ」までやって来たミス・ハサウェイの手助けをする羽目に陥った時だった。

婚約者ローラを亡くして自暴自棄となって自殺願望があることをまきちらしている兄レオ。一年前に猩紅熱にかかり、なんとか一命をとりとめたものの、虚弱体質になった次女のウィン。あと、妹が2人という家族の面倒を一手に引き受けているアメリア。アメリアの近くでハサウェイ家を支えているのが、ロマ人のメリペン。
3ヶ月程前に子爵位を継いだ兄を有無を言わさずアメリア達は領地まで連れてきてます。環境が変われば、持ち直すかと期待していたのですが兄にはそんな気配、全くありません。
トラブルばかりおこしていてるレオをなんとかしようと頑張ってはいるのですが……これもまたダメ。
本当によくアメリアが頑張っているんですが、あまり悲壮感が漂っていないのは、彼女の前向きな愚痴のせいかも。そんなアメリアの愚痴に、的確につっこんでいくのがメリペン。信頼しあっている2人の掛け合いが楽しい。
そのメリペンが深く愛する相手は、ハサウェイ家の次女ウィン。2人の兄妹のような関係が、動き出していく様が切ないです。窓拭きエピソードは心震わせる。
奮闘しているアメリアを手助けしていくキャムの物柔らかな態度が、彼女関連限定で、切羽詰まったものとなるのが素敵です。欲しいものは欲しいと足取り軽く行動し、アメリアに一途な様子も良かった〜。
メモ
レオ・ハサウェイ:子爵・28歳/ウィニフレッド(ウィン):次女/ポピー:19歳・三女/ベアトリクス(ビー):15歳・四女/メリペン:15年前、倒れていたところをハサウェイ家に助けられる・ロマ・真名ケヴ/ジョン・ダシール:建築家・ラトレッジホテルを設計・30代後半/フランシス・バークスピー:ダシールの助手/メリット:ウェストクリフ伯爵夫妻の愛娘


幸せの宿る場所 ク1-15 原書房:ライムブックス  発刊:2009.02.20

ヒロイン:ヘイヴン・マリー・トラヴィス(トラヴィス家の末娘・令嬢)

ヒーロー:ハーディ・ケイツ(石油業界の風雲児)

あらすじ
週末を楽しく過ごす相手を探している輩が、一同に集まったのではないかと思うくらいバーは混んでいた。ほんの少し腰を浮かしただけで、座っていたスツールはあっという間に横取りされてしまうに違いない。
隣の席に座っている金髪美人と、和やかな会話を交わしていたハーディは、人の波に押されてカウンターに叩きつけられそうになった若い女性をとっさに支えた。飛ばされたバックを拾い上げ、手渡した時、間近に見たのは2年前から、ハーディの心に巣くい続けた女性の顔だった。
ヘイヴン・トラヴィス
彼女の長兄ゲイジの結婚式に招かれてもいないのに顔を出した時に、強烈なキスを交わしあった仲だった。あの時、彼女は駆け落ちしてまで添い遂げようとしていた恋人がいて……。

ヘイヴンの性質が、人格障害者を惹きつけるのか、前半は夫であるニックからDVを、中盤からは上司のヴァネッサからパワハラをされてます。あと、トラヴィス家の面々(父親と3人の兄たち)からは家父長的過干渉をどっさりと。それにしても、ヴァネッサのパワハラを何故、唯々諾々と受け入れてるのか、わかんないです。次兄ジャックが経営している会社に勤めているんだから、さっさと告げ口してしまえばいいのにー。
カウンセリングをきちんと受けているのですが、医者は、ヘイヴンの話を聴いて知識や助言を与えるだけで、行動を促すものではないとわかってはいるのですが。
ハーディがエレベーター内に閉じ込められて溺死しかけているヘイヴンを救助するところや、ヴァネッサの本性がジャックにばれる下りなど、お気に入りの場面は秀逸。
メモ
ジャック・トラヴィス:次男・不動産会社経営/ジョー・トラヴィス:三男・写真家


同居生活 ク1-16 原書房:ライムブックス  発刊:2009.04.20

ヒロイン:ホランド・テイラー(未亡人・伯爵家令嬢・24歳?/愛称ホリー)

ヒーロー:ザッカリー・プロンソン(成上りの大富豪・34?/愛称ザック)

あらすじ
最愛の夫ジョージを腸チフスで亡くしてから3年。ホリーは、その悲しみと痛みにどっぷりと浸り切っていた。周囲の人達は、ジョージの死から立ち直りつつあったが、ホリーは未だに駄目だった。そんな彼女が渋々、出ることになった社交の場は、きらびやか過ぎて、持病の偏頭痛を起こさせようとしている。
早々に辞去しようとしていた彼女の手を、一人の男が捕えたのだった。

ホリーを見初めたザッカリーの手腕の確かさが凄いんですが、その母ポーラの炯眼がこれまた、ジンッときます。ザッカリーがホリーに心底、傾倒していってるのに早々に気づいて、この世には手を出したら駄目な相手がいるのよと諭すんですよ。切ないんですけど、その会話がホリーとザッカリーの立場の違いを説明しててしっくりとくる。
ホリーの愛娘ローズの愛らしさ、ザッカリーの妹エリザベスへの愛情とか、家族に対する優しい思いが溢れている作品となってます。
一番強いのは、ザッカリーのホリーに対する愛情と優しさ。随所に、その感情があふれ出てます。
メモ
ジェイソン・サマーズ(ホリーの従兄弟・新進の建築家・25歳)とエリザベス・ブロンソン(庶子・21歳)


壁の花の聖夜 ク1-19 原書房:ライムブックス  発刊:2009.12.20

ヒロイン:ハンナ・アップルトン(コンパニオン)

ヒーロー:ラファエル・ボウマン(ボウマン家跡取り・投機家/愛称レイフ)

あらすじ
娘2人を望み通り以上の男に縁付かせたトーマス・ボウマンは、次の矛先を、長男レイフへと向けた。
少しでも上の貴族階級の令嬢をボウマン家の嫁にしようと動き出したのだ。
ことあるごとに相続権を剥奪すると脅しをかけてすら言いなりにならない長男だったから、父親の言は完全に無視されるかと思いきや、素直に従ってきたのだ。
どうやらヨーロッパの経営権に食指が動いているらしい。これを餌にすれば、レイフに身分の高い娘をあてがうことができる筈だった。

トーマス・ボウマンが目をつけたのが、ナタリー・ブランドフォード。彼女を嫁にしようと、色々と手を回します。その中心的な役割を担ったのが、ウェストクリフ伯爵に嫁いだ長女リリアン。
リリアンは、ナタリーがどんな女性であるかという情報を得ようと、動き出します。
ナタリーの従姉でコンパニオンをしているハンナ・アッブルトンを招待して、長兄レイフに引き合わせます。
強い自覚はないのですが、ハンナにすとんと恋に落ちたレイフ。色々と暴走してます。
幼少の頃のレイフのエピソードをうまく取り入れて、孤独な人生を歩んできた彼の心のねじれ具合などキュンとします。
それにしても、ナタリーが、いけいけどんどんな娘っ子だったのにはちょっとびっくりでありました。
あと、ハンナに求婚しようとしていたサミュエル・クラークのフェチが頭蓋の形状だというのが噴きだした。見栄えではなく確かに中身だ(笑)
メモ
ランソム・ボウマン、リース・ボウマン(ボウマン家の双子、次男、三男)