メアリ・バログ
バースにある女学校の教員さんたちのロマンス。


ただ忘れられなくて  F ハ 11-1 ヴィレッジブックス

 発刊:2007.01.20

ヒロイン:フランシス・アラード(女学校の音楽教師・元声楽家・23歳/フランス名フランソワーズ) ヒーロー:ルシアス・マーシャル(シンクレア子爵・28歳/愛称ルース)

あらすじ
最初に出会った時、互いの印象は最悪だった。
雪が激しく吹き荒ぶ中、フランシスが乗車している馬車は、良く言えば慎重に、身も蓋もない言い方をすればのろのろと重たげに蠢いているだけだった。その馬車に対してルシアスの馬車が、無茶な追い越しをかけたのが間違いだったのだ。
フランシスは、ルシアスのことを傲慢で気難しくて冷笑的で、無礼なだけの紳士だと決め込み、ルシアスは彼女のことをガミガミと文句ばかり垂れる干しスモモにそっくりだと思った。
互いに敵意しか抱けない状況にあったが、この悪天候の中、同じ宿に泊まらざるを得ないことに、ひたすら苦痛を感じる2人だった。その上、宿には留守番役の下僕が一人しかいないということに、暗澹たる思いを分かち合うことになった……。

最悪の出会いをしたフランシスとルシアスですが、底辺から始まったのであとは上昇していくだけとなってます。
楽しそうに食事の用意をしている上に、料理の腕前は極上のフランシスに驚かされるルシアス。
対して、フランシスはルシアスの本質が、気配りがあり、ユーモアを解し、そして適応力が抜群にあることに気付きます。
そして、その整った容貌が笑みを浮かべた瞬間の素晴らしさったら、もうッ!!
急速に惹かれあう2人は、とうとう一夜をともにしてしまうこととなります。離れがたい思いにとりつかれたルシアスは、彼女をロンドンに連れ帰ろうとするのですが、きっぱりと断られてむかっ腹を抱くのでありました。
作中、ルシアスが何度も求婚をするのですが、その度に、フランシスから体よく断られてしまいます。
フランシスがルシアスの求婚を何度も断り続けるのは何故か?という謎を仄めかしながら、ロマンスが展開していきます。
そして、断られても断られても、求婚を繰り返し、その度にいい男になっていくルシアスが素敵です。
お坊ちゃんヒーローも捨てたもんじゃないんだわと思った作品。
フランシスがルシアスに言い募る言葉が、彼の本質を理解していて、これだけ自分を理解してくれている女性はフランシスしかいないと更に惚れ込んでしまうのでありました。
「あなたはご家族を"愛してる"のよ。あなたの衝動的な行動も、その多くは愛情から生まれたんだってことがわかったわ」


ただ愛しくて  F ハ 11-2 ヴィレッジブックス

 発刊:2007.01.20

ヒロイン:アン・ジュウェル(女学校の教師・29歳) ヒーロー:シドナム・バトラー(荘園の管理人・伯爵家の末息子・28歳/愛称シド)

あらすじ
仏との戦争で捕虜となり激しい拷問が加えられた結果、シドナムは右腕と右目を失った。将来は絵で身を立てていくのが望みだった彼は、生き残ったのがつらく思える日々を長く過ごした。
そして、少しずつ自分ができることを見つけ、失ったと思われていたことを再獲得していった。今は、ビューカッスル公爵が所有する荘園の管理人として、その有能さを遺憾なく発揮している。半分隠遁生活に近いとはいえ、領民達と顔を会わせることも多く、周囲も次第にシドナムの顔の右半分を覆っている火傷のあとにも気にかけなくなっていた。
けれどもこの夏、公爵が多数の姻戚を子どもを含めて招待したことを知り、気が重かった。
醜悪とも言えるこの容貌を他人や悪意がない故に容赦のない子どもの目に触れさすことになるか……。
案の定、暮れなずんでいく海を眺めていたシドナムを見た招待客の女性が思った通りの行動を見せたのだ。
シドナムの醜い右側を目にした途端、恐怖に顔色を失ってしまった。
まるで美の化身のような彼女が踵をかえして逃げて行く……。

前作より2年後の物語。
アンが非嫡出子のディヴィッドを出産するに至った経緯や実家と何故疎遠なのかが、彼女の口から静かな怒りを持って語られます。シドナムもまた、現在の自分を獲得するまでの血のにじむような努力、今なお悪夢に苛まれて苦しんでいる様子が淡々と描かれます。
傷ついた過去を背負いながらも、それがあったからこそ今の自分があるのだという境地にたっている2人の強さが切ない。
メモ:ビューカッスル公爵夫妻のロマンスとホールミア(だったかな?)侯爵夫妻のロマンスが読みたい。それにしてもベトウィン一族のお名前が出すぎていて誰が誰やらさっぱり。シリーズの刊行順を考えてもらわないとスピンオフの楽しみが苦痛だ……。


ただ会いたくて  F ハ 11-3 ヴィレッジブックス

 発刊:2009.09.19

ヒロイン:スザンナ・オズボーン(女学校の教師・23歳) ヒーロー:ピーター・エッジワース(ウィットリーフ子爵・26歳)

あらすじ
5年前、婚約寸前までいった女性とその家族を屋敷から放り出したことで、ピーターは上流社会に激震を起こした。それ以来、帰郷しても短期間で、ロンドンや高級保養地に舞い戻る生活をおくっていた。
けれど、もうそろそろ自分が背負っている責任を真正面から向きあう時だった。もともと領地の管理にともなういろいろな仕事を厭ったことは無かった。
ただ、母親との間にできた溝を直視できなかっただけで。それと、母親が良かれと思ってやってくれることが、成長したピーターには息苦しくて仕方がないのに、そのことをはっきりと言えないからだった。
社交シーズンも終わりに近づき、予定を早めに切り上げて、故郷で少し腰を落ち着けようと母親に連絡したところ、お似合いの令嬢を用意してピーターの帰郷を待ち望んでいるらしい……。
母親との確執を避けて、友人宅での宿泊を予定通りにすることにしたピーターは、そこで一人の女性と出会った。彼女を見つめている間に心から湧き上がった思いは、ただ一つ。
「めぐりあえた」

前作と並行して紡がれる物語り。
女性陣に対して、とても細やかな気配りを見せるピーター。彼女たちが喜ぶような言葉を惜しげも無く口にして、場を盛り上げてます。老若に関係ないから、余計に周囲から好かれる人物となってます。最初は軽薄な男性だと思ってしまったスザンナですが、弱者に対して裏表のない暖かな態度をとる彼に、惹かれていきます。
ピーターの母親と、自分の亡くなった父親の間にあった因縁に彼とだけは仲良くなりたくはないと強く思っているのに、親しくお喋りを交わし、そして友人となり、最後には肌を重ねてしまう間柄に。
紳士として決してとってはいけない振るまいを、スザンナに対しては取ってしまうピーター。彼女への想いが日増しに深まっていく中、過去の真相が明らかになります。それでも、スザンナとともにありたいと願うピーターが、物腰柔らかにがんばってます。