あらすじ
最初に出会った時、互いの印象は最悪だった。
雪が激しく吹き荒ぶ中、フランシスが乗車している馬車は、良く言えば慎重に、身も蓋もない言い方をすればのろのろと重たげに蠢いているだけだった。その馬車に対してルシアスの馬車が、無茶な追い越しをかけたのが間違いだったのだ。
フランシスは、ルシアスのことを傲慢で気難しくて冷笑的で、無礼なだけの紳士だと決め込み、ルシアスは彼女のことをガミガミと文句ばかり垂れる干しスモモにそっくりだと思った。
互いに敵意しか抱けない状況にあったが、この悪天候の中、同じ宿に泊まらざるを得ないことに、ひたすら苦痛を感じる2人だった。その上、宿には留守番役の下僕が一人しかいないということに、暗澹たる思いを分かち合うことになった……。
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