海堂 尊

チーム・バチスタの栄光 宝島社  発刊:2006.02.04
田口公平(神経内科学教室・講師・41歳)
白鳥圭輔(厚生労働省大臣官房秘書課付技官・医療過誤死関連中立的第三者機関設置推進準備室室長)

『チーム・バチスタ』
桐生恭一(臓器統御外科ユニット・助教授・42歳)

鳴海涼(基礎病理学教室・助教授・37歳)
酒井利樹(臓器統御外科ユニット助手・30歳)
大友直美 (看護課手術室看護主任・33歳)
氷室貢一郎(麻酔医学・講師・37歳)
羽場貴之(手術室・臨床工学士・室長・53歳)
垣谷雄次(臓器統御ユニット・講師・49歳)

高階権太(東城大学医学部附属病院長)
藤原真琴 (不逞愁訴外来の専任看護師。60ちょいすぎ)

あらすじ
東城大学医学部附属病院で、今、一番、注目を浴びているのが、臓器統御外科の助教授である桐生恭一だった。彼が率いるチームは心臓移植の代替手術である「バチスタ手術」の成功を邁進し続けていた。しかし、27例目にして術死が、28例目は成功、そして、29、30と立て続けにおこったのだ。
その術死の状況に違和感を感じた桐生は、病院長である高階に相談を仰ぐのだった。

手術用語はまったくちんぷんかんぷんで、物語の中でかなりの頁を割いている医療行為も、情景が思い浮かばず。
でも、一気に読んでしまいたくなるー。
白鳥の傍若無人ぶりは流石で、そのことを話す高階病院長の遠慮の無さっぷりも素晴らしい。
出世にはとんと興味が無い田口が、しっかり出世の道を歩んでいるのもなんだかほほ笑ましいし。
桐生先生は、文句無しに格好いい。


ナイチンゲールの沈黙 宝島社  発刊:2006.10.21
田口公平(神経内科学教室講師・不定愁訴外来・41歳)
白鳥圭輔(厚生労働省大臣官房秘書課付技官・医療過誤死関連中立的第三者機関設置推進準備室室長)

「小児科病棟」
奥寺隆三郎(教授)
副島真弓(助教授・30代後半)

内山聖美(医長・5年目)
猫田麻里 (看護師長)
権藤昌子(看護主任)
浜田小夜(看護師)

「ICU」
花房美和 (看護師長)
如月翔子(看護師)

森野弥生(看護師)
「神経内科病棟」
兵藤勉(医局長)
白石早苗(看護師長)

丹羽千代(看護主任)

高階権太(東城大学医学部附属病院長)
藤原真琴 (不逞愁訴外来の専任看護師。60ちょいすぎ)
速水晃一(救命救急センター部長)
島津吾郎(放射線科助教授・MRI研究分野の第一人者)
神田(放射線技師・主任)
新垣(放射線科教授)
平島雄一(眼科助教授)
沼田(助教授・倫理問題審査委員長)
笹井(教授・AI)
三船(病院事務長・医療経済資源配分額専門家)

「小児科病棟患者と家族」
牧村瑞人(レティノブラストーマ・中学3年・14歳)
佐々木アツシ(レティノブラストーマ・5歳)
田中秀正(鼠径ヘルニア・小学5年)
杉山由紀(白血病・16歳)
牧村鉄夫(瑞人の父親・アル中・40歳)
「神経内科病棟入院患者等」
水落冴子(肝硬変・歌手)
城崎(冴子のマネージャー・ピアニスト)

「桜宮警察署」
加納達也(警視正・44歳)
玉村誠(警部補・捜査一課)
棚橋(鑑識)
谷口(本部長)
坂東(警部)

あらすじ
バチスタのスキャンダルから9ヶ月後の物語。
病院忘年会の余興で、小児科病棟勤務の浜田小夜の「アヴェ・マリア」のアカペラが響き渡った。その後のアンコールには「證誠寺の狸囃子」が歌われ、その場にいた者たちの脳裏には、狸の着ぐるみ姿の高階病院長が鮮やかに思い浮かべられていた
小夜が担当している患者は眼球に発症する癌(レティノブラストーマ)を患っており、眼球摘出でしか対処できない病状にあった。年内に手術をした方がよいとの判断がでているのだが、患者の1人、牧村瑞人の父親は一度も病院に顔を出したことがなかった。

田口公平が週3回開いている「不定愁訴外来」の説明(徹頭徹尾愚痴を聞きとげることで、患者のメンタル・へルスケアに寄与する、というのが売り文句)がいいです。
それにしても、登場人物が多過ぎて、それぞれへのキャラクターに対する思い入れがほぼ皆無状態になってしまい、いまひとつ。
性的な後ろ暗さが滲んできていて、うーっ、そっちに行くのかと思ってたらどのカップルも『どろどろ』の純愛だし。物語的には、歌声の視覚化という、脳の不思議に切り込んだのかファンタスティックな内容がババーンッと描かれてます。うーん……荒唐無稽な領域だわ。
水落冴子と小夜との間には、過去の因縁が横たわっているんではないかと考えてたんですが、全くかすりもせず……。


螺鈿迷宮 角川書店  発刊:2006.11.30
天馬大吉(東城大学医学部3回生を2回目・26歳)

白鳥圭輔(皮膚科医・厚生労働省大臣官房秘書課付技官・医療過誤死関連中立的第三者機関設置推進準備室室長)
姫宮(看護師・白鳥の部下)
別宮葉子(時事新報桜宮分室社会部主任補佐・26歳)
田端健一 (東城大学医学部4回生・24歳)
結城(メディカルアソシエイツ代表者)

「桜宮病院」「碧翠院」
桜宮巌雄(桜宮病院院長)
桜宮華緒(碧翠医長)
桜宮小百合(呼吸内科医・桜宮病院副院長)
桜宮すみれ(神経内科専門医・桜宮病院副院長)

あらすじ
東城大学医学部で2回目の3年生をしている天馬大吉は、幼馴染みの別宮葉子に謀られて、医療法人「碧碧院桜宮病院」に潜入捜査する羽目に陥っていた。
病院に出入りして利益供与をすすろうとしていた男、立花善次が、忽然と姿を消したらしく、その行方を調べろと言うのだ。
潜入は、病院側が募集していた医療現場を支えるボランティア募集に乗っかかる筈だったが、一日目にして、天馬は入院患者に成り果てた。
「でかい」看護師、姫宮が階段から転げ落ちそうになったのを止めようとして、怪我を負ったのだ。
「右腕骨折全治3週間、右側腹部打撲全治3日」
そして、天馬の負傷はこれに止まらなかった。

桜宮病院と東城大学病院との相克。桜宮家の面々が突き進もうとする道が多方向なのに、行き着く先はどれも、どうにもこうにもな着地点。そのためか、桜宮病院が抱える闇の深さが際立ってます。
桜宮家、立花善次、天馬大吉の因縁が明かされ愕然としている内に、桜宮病院の業が新たに滲み出る結末は、なんとも薄ら寒くて、参った……。
メモ:立花善次の舅にあたる結城は、「ジェネラル・ルージュの凱旋」の速水晃一から便宜をうけてます。


ジェネラル・ルージュの凱旋 宝島社  発刊:2007.04.23
田口公平(神経内科学教室講師・不定愁訴外来・41歳)
白鳥圭輔(厚生労働省大臣官房秘書課付技官・医療過誤死関連中立的第三者機関設置推進準備室室長)

「小児科病棟」
猫田麻里 (看護師長)
権藤昌子(看護主任)
浜田小夜(看護師)

「ICU」
花房美和 (看護師長・異名ハヤブサ)
如月翔子(看護師)

森野弥生(看護師)
久保(看護主任)
姫宮(看護士見習い・厚生労働省大臣官房秘書課付医療技官・医療過誤死関連中立的第三者機関設置推進準備室室長補佐)
「神経内科病棟」
兵藤勉(医局長)


高階権太(東城大学医学部附属病院長)
藤原真琴 (不逞愁訴外来の専任看護師。60ちょいすぎ)
速水晃一(救命救急センター部長)
佐藤(救命救急センター・消化器関連のスペシャリスト)
島津吾郎(放射線科助教授・MRI研究分野の第一人者)
神田(放射線技師・主任)
新垣(放射線科教授)
平島雄一(眼科助教授)
沼田(助教授・倫理問題審査委員長)
笹井(教授・AI)
三船(病院事務長・医療経済資源配分額専門家)

「神経内科病棟入院患者等」
水落冴子(肝硬変・歌手)
城崎(冴子のマネージャー・ピアニスト)

「東城大学倫理問題審査委員会外部委員」
野村勝(桜栄弁護士事務所)

中野美佐子(桜宮女子短大倫理学教授)

結城(医療代理店メディカル・アソシエイツ代表 )

あらすじ
不定愁訴外来の田口公平の院内ポストに届いた封書には、手書きで、
「救命救急センター速水部長は、医療代理店メディカル・アソシエイツと癒着している。VM社の心臓カテーテルの使用頻度を調べてみろ。ICUの花房師長は共犯だ」
あの速水晃一が、業者と癒着して利益を得るような人間では、断じてないと田口は言い切れた。
しかし、周囲の人間は田口とは違う見解を持っているらしく……。

「ナイチンゲールの沈黙」と同時進行の物語。
速水晃一の去就が全編を通して描かれてます。かなり破天荒な行動力で救命救急センターを切り盛りされてます。格好いい。
速水の行状を問い質すために、沼田助教授が率いる倫理問題審査委員会を田口は利用しようとするのですが、田口の出世に対して強い嫉妬を感じているらしい沼田助教授は、難癖をひたすらつきつけて問題が前に全く進んでません。沼田助教授、ヒマ過ぎ。
姫宮がドタバタと騒動を起こしつつも、ピシッと要所を締めてくる姿も格好いいです。闇に沈みかけた児童虐待を鮮やかに救い上げてるんだから。


ブラックベアン1988 講談社  発刊:2007.09.20
世良雅志(研修医1年目)

佐伯清剛(東城大学医学部総合外科学教室主宰・教授)
高階権太(帝華大学から招聘された講師・消化器外科専門)
黒崎(助教授)

渡海征司郎(医局員10年目・オペ室の悪魔)
垣谷(助手・世良の8年先輩)
関川(医師5年目)
北島(世良の同期)
青木(世良の同期)
藤原真琴 (手術室婦長)
猫田(手術室主任)

速水(東城大学医学部4年)
島津(東城大学医学部4年)
田口公平(東城大学医学部4年)

西崎(帝華大学第一外科教室教授)

あらすじ
東城大学医学部総合外科学教室を主宰する佐伯外科に入局したばかりの世良は、癖の強い医師たちに、必要以上に「可愛がられ」て、経験を積んでいく。

「チームバチスタ」スピンオフ。高階病院長の若かりし頃のお話し。彼が東城大学医学部附属病院に赴任した所から始まってます。あいかわらず、手術用語はまったくちんぷんかんぷんで、物語の中でかなりの頁を割いている医療行為や器具も、情景が思い浮かばず。
今作は、復讐ものになるのかな。父親を排斥した佐伯教授に復讐しようと渡海征司郎が雌伏10年目に動き出してます。
その復讐劇に巻き込まれることになった高階講師と世良という構図。
研修見学で、患者の出血を浴びて卒倒した田口公平が読めます。速水、島津、田口がそれぞれ書いたレポートが彼らの性格がもろに出ていてクスリ。


ひかりの剣 文藝春秋  発刊:2008.08.10
速水晃一(東城大学医学部剣道部主将)
清川吾郎(帝華大学医学部剣道部主将)

高階権太(帝華大学から招聘された講師・消化器外科専門・剣道部顧問)
清川志郎(東城大学医学部1年剣道部・吾郎の弟)
朝日奈ひかり(帝華大学薬学部1年剣道部)
島津(東城大学医学部4年・柔道部)
田口公平(東城大学医学部4年)

あらすじ
医学部剣道部の象徴的大会、「医鷲旗大会」で、速水晃一は、医鷲旗を勝ち取ることが出来るのか。
速水の前にたちはだかるのは、帝華大学医学部の清川吾郎だった。

「ブラックペアン」と同時期の物語。速水と、そのライバル清川が剣道に取り憑かれて稽古しまくまってます。
面白いッッ!!と言えないのは、剣道について何も知らないせいか。
『ジェネラル・ルージュの凱旋』で、活躍した速水晃一が、医学生の時に剣道に身を入れていたという筋書き。


医学のたまご 理論社  発刊:2008.01
曽根崎薫(桜宮中学1年B組・13歳→)

曽根崎伸一郎(薫の父親・ゲーム理論学舎・マサチューセッツ大学教授)
藤田要(東城大学医学部総合解剖学教室教授)
進藤美智子(桜宮中学1年B組学級委員長・薫の幼馴染み)
三田村優一(桜宮中学1年B組・開業医の息子)
平沼雄介(桜宮中学1年B組/通称ヘラ沼)
田中佳子(桜宮中学1年B組担任)
鈴木(桜宮中学副校長先生)
桃倉(外科医・東城大学医学部総合解剖学教室助手・通称モグラ)
佐々木アツシ(高校3年・東城大学医学部総合解剖学教室に飛び級で通っている)
田口公平(教授)
如月翔子(小児科総合治療センター看護師長・東城大学付属病院美少年腱索ネット会長)
小原(文部科学省女性事務次官)

あらすじ
文部科学省が主催した潜在能力試験で、栄えある1位の座を獲ったのは、桜宮中学1年B組に通っている曽根崎薫だった。学校では、社会の成績だけが良い薫が、平均点30点という難問がならぶ潜在能力試験で、何故、1位になれたのか。
試験問題を父親の曽根崎伸一郎が作り上げ、その試験台として薫が協力したからだ。
1位になった薫に開かれたのは、東城大学医学部で学ぶ機会だった。

頼みもしていないのに、東城大学医学部で勉強をする羽目に陥った薫くん。
志もないままに、藤田教授の言いなりになった彼が直面することになったのは……論文のねつ造事件。
真実を世間に知らしめるために、薫くんは、一歩を踏み出します(と、言っても父親がおぜん立てしてくれるわけですが)


ジーン・ワルツ 新潮社  発刊:2008.03.20
曽根崎理恵(帝華大学医学部産婦人科教室の助教・32歳)

清川吾郎(帝華大学医学部産婦人科准教授)
曽根崎伸一郎(理恵の夫/米国ボストンに単身赴任中)
三枝茉莉亜(マリアクリニック医院長・末期肺癌患者)
三枝久弘(産婦人科医・逮捕拘置中)
妙高みすず(マリアクリニック助産師兼外来看護師)
甘利みね子(主婦・34歳・自然妊娠)
神崎貴子(アンティーク家具の買付人・28歳・自然妊娠)
青井ユミ(フリーター・19歳・自然妊娠)
荒木浩子(主婦・39歳・人工受精)
山咲みどり(主婦・55歳・人工受精)

あらすじ
「医学のたまご」の主人公曽根崎薫くんの母親の物語。生殖医療の問題点がいろいろと。

主人公の曽根崎理恵先生に、その領域に手をつけるほど子どもが欲しいという情念が感じられない。
……とばし読みしすぎたのか?
曽根崎先生のお医者さんとしての倫理が、低いような感じ。誰しも騙されるのは嫌だと思う。
4人の出産がかち合う場面がクライマックスとなってます。曽根崎先生と清川先生、大忙し。


イノセント・ゲリラの祝祭 宝島社  発刊:2008.11.21
田口公平(神経内科学教室講師・不定愁訴外来・リスクマネジメント委員会委員長)
白鳥圭輔(厚生労働省大臣官房秘書課付技官・医療過誤死関連中立的第三者機関設置推進準備室室長)

「東城大学医学部付属病院」
島津吾郎 (放射線科教室准教授)
兵藤勉(医局長)
高階権太(東城大学医学部附属病院長)
藤原真琴 (不逞愁訴外来の専任看護師。60ちょいすぎ)

「厚生労働省」
細井寛之 (事務次官)
坂田勘平(医政局長)

八神直道(医療安全啓発室課長)

「警察庁」
北山錠一郎(警察庁刑事局局長)
加納達也(警視正・警察庁刑事局刑事企画課電子網監視室室長)
斑鳩芳正(桜宮市警広報課室長・警察庁刑事局新領域捜査創生室より出向)
玉村誠(桜宮警察署警部補・捜査一課)

「医療事故調査委員会・創設検討会メンバー」
彦根新吾(房総救命救急センター診断課・病理医)
檜山シオン(ジュネーヴ大学画像診断ユニット准教授)

「アドバイザー」
西郷綱吉(上州大学医学部法医学教室教授・東京都監察医務院非常勤職員)

「時風新報社」
別宮葉子(桜宮支所勤務・社会部主任)

あらすじ
高階病院長から呼び出された田口は、厚生労働省が主催する会合への代行出席を求められた。何とかして、断ろうと頑張ってみたものの、議題が「病院のリスクマネジメントの標準化をめざして」、出席要請をしてきた依頼書の差出人が、あの白鳥圭輔で……。

新興宗教団体の幼い信者の死亡原因究明の場面から始まったので、今回は、宗教絡みかと思いきや、厚生労働省内で開催された医療事故調査委員会・創設検討会の会議の模様がひたすら延々と続く。


ジェネラル・ルージュの伝説/海堂尊ワールドのすべて 宝島社  発刊:2009.03.06
速水晃一(東城大学医学部附属病院外科研修医1年目)

冴子(売れてないアイドル歌手)
ザック(バンド「バタフライシャドウのベース」・アレンジの妙手・城崎)
小林(バタフライシャドウのマネージャー、冴子の元マネージャー)
小堀(冴子のマネージャー)

世良雅志(総合外科学教室・3年目の医師)
松本(研修医1年生)
佐伯清剛(東城医大病院長・総合外科学教室教授)
黒崎誠一郎(総合外科学教室・助教授)
猫田麻里(手術室主任看護師。花房の5歳年上)
花房美和(手術室看護師。4年目)。
田口公平(東城大学医学部附属病院神経内科研修医1年目/天窓のお地蔵さま)

あらすじ
「ジェネラル・ルージュの凱旋」で語られた、速水晃一の武勇伝「城東デパート火災による負傷者を一手に引き受けた」の顛末。

「ブラックペアン」の3年後の物語。自分の才に傲慢になっていた速水が、救急医療の現場を突き付けられて自省。人間的に成長してます。田口先生が相変わらずいい味を出してます。
本作には、年表とか人物相関図とか、作者による作品解説とか、マニア心をくすぐる資料が盛りだくさん。