あらすじ 来日したウィリアム・メイスンの同時通訳として、テレビ番組の録画に参加した由布子は、彼の無礼さに日本語はわからないだろうと高をくくって、こき下ろした。そのツケは彼が、日本語を理解しカタコトでも話せる程、日本通であることを番組内で思い知らされることになった。互いに、いけ好かない奴という第一印象を与え合った二人だが、由布子がふっと見せた日本的な振る舞いに、どうしようもなく魅かれていることに気づくウィルだった。
まとまった展開でありながら、上滑りな印象を受ける作品。由布子とウィルの会話が、なんだかなんだかとっても小ッ恥ずかしいとしか言いようが無くてねー、読むのに苦労しました。私には、合わない題材、文体でした。いきなり出てくる京言葉も、ダメ。 日本旅行に浮かれた作家さんと外国かぶれの女性というカップル(身もふたもない……)だった。 由布子はキャリアウーマンを自認してる割にはプロ意識がお粗末としか言いようがないことをしでかしてるし……。秘書のジョアンの方が、よっぽどヒロインらしいと思ってしまった。ウィルが無礼で女々しいから、われ鍋になんとやらで丁度よいのかも……(苦笑)
あらすじ 後期授業が始まるまでの夏休み、伯父がいるローマで写真三昧の生活を送ろうと美夜は張り切っていた。張り切り過ぎて、ローマの裏通りに迷い込み、逃げる間も無く目つきの悪い男に大事なカメラを強奪されそうになった。カメラのベルトが引きちぎられ殴られると思った瞬間、上背のある上質なスーツを着た男性が間に入りあっという間に強盗を追い払った。ジョルジュ・モレリと名乗ったその男性は、美夜の危機意識の欠如に呆れながらも楽しそうだった。
一応、復讐ものになるんですが、復讐されてると思い込んでいるのは美夜だけで、ジョルジュ、最初から最後まで美夜にベタ惚れ。画策しまくって、強制的に結婚までしてるんだもん。既成事実をさっさと作りあげようと、正攻法(?)で美夜が行く先々に現れて誘惑。成功しないとなると、お酒に弱いということで飲ませようとしてるし、挙げ句の果てに睡眠薬まで盛ってるんだから……無法者です〜。元々、美夜自身、ジョルジュに惹かれているからガードがスキだらけ。そのすき間だらけのガードがまた、ジョルジュの気をそそるんだろうなーという展開で、ありとあらゆる場面で押し倒されてます、が、なかなか最後までさせて貰えないジョルジュ……詰めが甘い(笑)
あらすじ 婚約破棄の大騒動は、沙羅をサンフランシスコへと運んだ。婚約者に従属することを当たり前とする周囲の人間に嫌気が差し、逃げ出してきたのだ。この地で、自由に生きてみたい。束縛されるのはもうたくさん。空港から出た途端、トラブルが待ち受けているとは思いもよらない沙羅だった。頬に傷のあるタクシー運転手が、連れていってくれたホテルは、沙羅が行き先として告げたホテルではなかったし、ようやく、ホテルに着いたと思ったら、部屋に侵入してきた男ルークに拳銃で脅される始末……沙羅の神経は、焼き切れそうだった。
悲しいことに、ルークの分がとっても悪いですー。束縛されまくった婚約者に三行半をつけてきたばかりなもんだから、まずもって沙羅としては男性とのおつき合いはしたくない。よしんば、することになっても、女性に命令ばかりする男は、「絶対にお断りッ!!」 本当に運が悪い。出会った当初から命令ばっかりしてるルーク、沙羅の命を守るためなんだけど、そういう尊大な男だと思われてます。「守ってやりたいと思うこの気持ちのどこが悪いんだーーーーッ」 ルーク、必死の説得に打って出てます〜。
友衛遊馬:茶道、坂東巴流の跡継ぎ・18歳・家出中
友衛行馬:遊馬の弟、6歳下 友衛秀馬:遊馬の父、元警察官、49歳 友衛公子:遊馬の母 友衛風馬:遊馬の祖父 弥一:坂東友衛流の門人 カンナ: 坂東友衛流の門人、弥一の孫 坊城哲哉:不動産屋の次男坊・23歳 幸麿:今出川幸夫・高校の数学教諭・実家は道具屋 不穏:長命寺住職・六角坊 親方:畳屋・高田家 高田志乃:親方の母親・遊馬の居候先・お茶の師範 柏木佐保:女子高校生・遊馬と恋仲 伊織:宮本一郎・遊馬の弟子 氷心斎:巴朱鶴・巴流宗家家元 奈彌子: 氷心斎の長女 眞由子:氷心斎の次女 鶴了:奈彌子の恋人
茶道、坂東巴流の跡継ぎである友衛遊馬(18歳)の家出顛末記。
登場人物紹介 「東太郎」(48歳) 中国大陸で山賊に攫われた母は、1年後救出され、その命と引換えに太郎を産み落とす。伯父夫妻に引き取られ育つことになった太郎は、伯母とその息子達からひどい虐待を受けていた。 「宇多川よう子」(東太郎より1歳下) 医者の父と資産家令嬢だった母の元に生まれる。次女。物質的には何の苦労もなく育つが、母親からの愛情は薄い。喘息もち。 「重光雅之」(よう子の3歳上) よう子の幼馴染み。成人したあとの彼女をひたすら支える。 「土屋冨美子」(58歳) 宇田川家の女中。彼女の思い出語り、太郎とよう子の出会いから、2人の行き着く先までを語る。 「加藤祐介」(26歳) 大手出版会社の編集者。土屋冨美子から聞いた話を、作者である水村美苗に話す。
恋愛もの。それも、スッキリ爽やかに成就する恋愛ものでは全くなく。 そういう設定でも気にしないという方にはオススメです。 ただ、上巻の最初の176頁を乗り切るのがちょっとキツイので、それを抜かして読まれた方が良いかも。 読後、「東太郎」贔屓になってしまったという人が、その部分を読まれると大層美味しいと思うので。彼の米国での立身出世の過程を垣間見ることができます。瞳に荒んだものを宿らせながら、金もうけへ突き進んでいく「東太郎」←やべっ、惚れちゃったよ。女の趣味、悪いけど。 東太郎のよう子に対する強い思慕と恋情が読み進んでいくにつれ、ずっしりと押し寄せてきます。そんな太郎達を側で見続けることになった冨美子が切ない。
宮城谷 昌光 読書録では「王家の落日」「天空の船 上下」「侠骨記」「夏姫春秋 上下」「猛火の太陽」「春の潮」「花の歳月」「沈黙の王」「重耳 上中下」「介子推」を読んだことになってます。そして、1995年刊行の「晏子 上」を読了後、多い画数のため■に見える漢字の余りの多さと本の厚みに挫折した模様(苦笑) 記憶に残っているのは、「侠骨記」「花の歳月」 だけというのは……むむむむ〜ん。
あらすじ 家柄は古くからあるものの、貧しい竇(とう)家の長女である猗房(いぼう)には6歳下の弟、広国(こうこく)がいた。父が病に倒れている中、農作業は兄と母の肩にかかっており、広国の世話を含めて家事は10歳の猗房に任されている。 その猗房を、名家の子女を集めて皇宮にて養成しようとしている漢王室に推薦することになったと言うのだ。 猗房は里の外を一度は見たいと思いながらも、誰が欠けても、一家は立ち行かない現状を理解しているのだった。
長安に向けて出立する猗房と見送りにきた母と兄弟。その後、一家の要であった猗房が居なくなった竇(とう)家は、瓦解することになります。 猗房も皇宮に入ったものの、漢王室が諸国の王に下賜する娘の中に入ることになり北の最果ての代国に。その時、猗房は多分12歳で、迎える代国王の恒は14歳……早婚にも程があるよなぁ。その上、既に恒には正妃がいて、嫡子も生まれてるんだから驚き。 恒に愛憫をかけられ猗房は幸せな暮らしをしている中で、気にかかるのは家族のこと。手紙を書いても返事が届かず悩んでいるのを察したのが、恒の母親で、人手を割いて調べてきてくれます。結果は父親は病死、母は自死の疑いあり、兄弟はともに行方不明。 猗房は、再び、兄弟と出会うことができるのか……。 猗房が後に、竇太后として外戚権力を使って、漢王朝を思いのままに操る女傑となることを片鱗も見せない、清楚なヒロインとして描かれてます。歴史をなぞるだけでない小説は、これだからやめられない♪
あらすじ 『雨』行きずりの女性との間に出来た愚鈍な息子が、長じて牙を剥く。 『指』地位も権威も財もいらぬ。合性のよい妻達がいれば、それでよい。 『風と白猿』将軍の新妻が攫われた? その真相 『桃中図』身体の弱い跡取り息子とその従者との関係 『歳月』幼くして婿取りをした少女は、慣れ親しんだ夫と父を盗賊に惨殺される。その復讐のために費やされる歳月 『玉人』地方に飛ばされた友人を訪ねた男は、そこで病身の夫をもつ美しい女に入れ込む
濃密というか、男が醸し出すねっとりとした情欲が漂ってます。 いや、情欲だけが描かれているんじゃないんですけどね、そっちにばかり目がいった……。
あらすじ 2年間のニューヨークでの学校生活が終り、明石は駅馬車に乗って故郷デンバーに向かっていた。その駅馬車をスー族が強襲したのだ。明石はニューヨークでの淑女教育を脱ぎ捨て、銃を持って応戦した。スー族に追いつかれると思えた時、駅馬車を援護する騎馬隊が突如現れた。スー族を追い払い、誰もが助かったと安堵したのもつかの間、彼らは野盗と化した。駅馬車が運んでいた金塊、乗客の貴重品、全てを略奪し始めたのだ。明石は左薬指にはめていた紫水晶の指輪を供することを是とせず、抵抗の意を見せた瞬間、野盗の首謀者らしい男に罰するようなキスを受けたのだった……。 北軍領地から金塊が、南軍の軍資金として大量に流出していることの全容を北軍少佐のショーンは、突き止めつつあった。金塊を運んでいる駅馬車をわざとスー族に襲わせ、金塊は回収して南軍に流しているらしいのだ。なんとか現場を押さえるために、ショーンは野盗に身をやつし金塊を運んでいる駅馬車をスー族が奪う前に襲うグループを率いていた。今回の任務も成功しかけたと思えた瞬間、紫水晶を左薬指にはめた女にマスクを取られ、顔を見られる失態を引き起こした。ショーンは怒りにかられたまま、女の手首を縛り騎乗させ連れ去った……。
明石をめぐる男達のそれぞれの情感が見事に違っていて、かなり起伏に富んだ作品。 ショーンの男性の本性を顕にした野蛮とも言える愛情と嫉妬。 ジェフリー(ショーンの親友・明石の親友アイリーンの兄)の友愛に近い愛情。 シャルル(明石の幼なじみ)の儀礼的な愛情。ちなみにシャルルは潜在的な同性愛嗜好者。 ジョーこと城之進(明石の乳兄弟)の敬愛と兄妹愛に押し込める密やかな愛情。 私としては、城之進のを推すんですけど、明石さーん。透明感のある深くて静かな愛情の物語になったのになー。ちっ、惜しいよぅ。 ショーンと明石が、互いに対してのみ本性がむき出しになって、体力面ではショーンが優勢だけど口では完璧に負けてる(苦笑)。愛情を告白したいのにプライドがあって告げれず、最後の甘美な拷問を受けるに至るまでショーンなんとか意地を張るんですがあえなく……明石には敵わない(苦笑) 南北戦争が主題としてあるので、血生臭いです(集団レイプシーンがあったり…) 金塊を南軍に提供しているのは、明石の父親ヒース伯なのか、それとも隣接する牧場主のシャルルなのか。謀略をかけて真相に迫ろうとするショーン……本当に、血生臭いんです〜(吐息)
あらすじ 【ムジナのしっぽ】結寿と道三郎の出会い。祖父幸左衛門の負の過去が浮かび上がる。 【涙雨】旗本の嫡男の乳母をしていた女が、ややこを連れ去る事件が発生。結寿と道三郎が解決に乗り出す。 【割れ鍋のふた】 姉佐代の悩みを聞いてやって欲しいと、幼馴染みの貞之進に頼まれた結寿。佐代が盗まれた短冊を探し出して欲しいと頼んでくる。夫婦仲の不思議を描く。 【ぐずり心中】結寿の縁談を強引に進めようとする継母との攻防。 【遠花火】弓削田宗仙の老いらくの恋、西瓜泥棒をした男の昔の恋の行きついた先。 【ミミズかオケラか】近所に住む10歳の女の子が水死体でみつかった。父親が犯人としょっぴかれ……。事の真相を知っているらしい弥之吉に結寿が寄り添います。 【恋心】結寿の友人、鈴江は貞之進のことを好いていて、そこをごろつきにつけ込まれます。 【春のきざし】道三郎の嫡男彦太郎を養子にしたいという家が出てきて、その阻止のために結寿と道三郎が結託。前作で身も心も傷ついた鈴江の再生の物語。
結寿と道三郎がひっつくには差し障りがいろいろとあります。 昔から火盗改方と町奉行所は犬猿の仲。 結寿が、八丁堀の隠密廻り妻木道三郎と口をきくのも嫌がる祖父の元で、彼への思いを育んでいきます。 2人の仲が進展することを諦観しつつも道三郎にときめく心を結寿は大切に抱えています。 対して、飄々としている道三郎は、着実に、足固めをしていてニンマリ。 結寿の友人がごろつきに乱暴される話【恋心】があるので、苦手な方はご注意を。