鳩山法務大臣に宛てた手紙





   前略 突然このようなお手紙を差し上げる非礼をお許し下さい。大変ご多忙とは存じますが、最後まで目を通して頂けたら幸いに存じます。

  私は平成19年8月24日、闇サイトで集った三人の男に、自宅を目前にして拉致され、二時間後には惨殺、そして遺棄された磯谷利恵の母親で磯谷富美子と申します。

 私は被害者遺族となって初めて、色々な不条理を知りました。
 お手紙をお出しする前に、法務大臣に就任された後に「大臣のほんね」というテレビ番組のインタビューを受けていらっしゃる映像を見ました。その中で裁判員制度の必要性を問われ、「国民の常識をぶつけて、判決に反映させる。国民と裁判を近づける。」とお答えされていたお言葉を、力強く受け止めさせて頂きました。そのお言葉の中に含まれている事こそが、先に申しました不条理の大きな一つだったからです。

  一般庶民の処罰感情と余りにもかけ離れた司法の判決を知るにつけ、憤りを感じずにはおられませんでした。黙って裁判の判決を待っているだけでは、極刑を勝ち取るのは難しいと感じました。娘の無念を晴らす為に、法的な知識等皆無の私共が思いつくことは、犯人三人の極刑を求める署名活動でした。

  娘の事件は、公判前整理手続きが終わっていない為、何時裁判が始まるか、まだ見えていません。どこから見ても冤罪や不鮮明な内容の事件ではなく、実にはっきりした事件なのです。何故裁判までにこれ程の時間を要するのか、一人に二人の弁護士、計六人の国選弁護士が就くのか、私共被害者遺族には到底理解が出来ません。

  極刑を求める私共の思いにご賛同頂き、署名して下さった方は、活動開始からおよそ五ヶ月間で二十五万名になりました。

  署名に添えられていたお手紙には、被害者の立場ではなく、加害者の立場に立って裁かれる今の司法のあり方に、憤りを感じていらっしゃる方が、多くいらっしゃいました。

  また、治安の良かった日本は何処に行ってしまったかと、まさしく鳩山法務大臣の「世界一安全な国の復活に向けて」のお言葉どおり、凶悪犯罪が後を絶たない今の日本を、憂い悲しむお言葉も多々ありました。

  私は凶悪な犯罪に対して厳罰を下すことは、犯罪の抑止力になると信じています。その為の法改正、法整備をお願いしたいです。

  娘は闇サイトで集った三人に会社からの帰宅途中に、無差別に目をつけられ、拉致、惨殺されました。有害サイトを使った事件もまた後を絶ちません。難しい問題だとは思いますが、何らかの法規制をして頂かないと、このような有害サイトを使った事件は、これからも増え続けると思われます。

  今回お手紙を差し上げたのは「鳩山法務大臣が異例の早さで死刑執行を下されているので、署名を大臣にお送りして裁判の判決のスピード化を直談判してみては如何ですか」とのお手紙を頂いたからです。

  私がホームページを立ち上げて、署名を呼かけた時に、見ず知らずの多くの方達が直ぐに行動して署名を送って下さいました。その行動力に今も感謝しています。だから、このようなお手紙を頂いた時に、私だからこそ出来る事を、行動に代えておこたえしようと思いました。

  今は娘の事件が風化されないようにと、署名活動を続けています。署名して下さった方々は、この事件を記憶に留めて下さり、どのような判決を下されるか興味を持って、最後まで見届けて下さると思います。それこそが、鳩山法務大臣がおっしゃる「裁判を身近に感じていただく」ことだと思います。

  大変長くなりましたが、お忙しい中、大切なお時間を頂き有難うございました。鳩山法務大臣のこれからのますますのご活躍をお祈り申し上げます。
草々
 平成20年3月3日
鳩山法務大臣様
磯谷富美子



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