第1回公判の概要(報道より)





「闇サイト」被告、起訴事実認める 名古屋地裁初公判

 08年9月25日(中日新聞夕刊・記事抜粋)


名古屋市千種区の会社員磯谷利恵さん=当時(31)=が昨年8月、男3人に拉致、殺害された事件で、強盗殺人や逮捕監禁などの罪で起訴された元新聞セールススタッフ神田司(37)、無職堀慶末(よしとも)(33)、無職川岸健治(41)の3被告の初公判が25日、名古屋地裁であった。

 起訴事実について、3被告とも磯谷さんを殺害したことは認めたが川岸被告は「殺害方法の順序が違う」と主張。神田被告の弁護側は「(磯谷さんを)脅迫した言葉の詳細について争う」と述べた。

 冒頭陳述で検察側は3被告が携帯電話のインターネット上の闇サイトに頻繁にアクセスし、知り合った状況を指摘。川岸被告が保険金詐欺、神田被告が偽の養子縁組などの違法行為を計画したが失敗していたと指摘した。

 その後、3被告はファミリーレストランでOL風の女性から金を奪って殺すなど具体的な犯行計画を練って共謀を図ったとした。

 3被告の弁護側はそれぞれの冒頭陳述で、「ファミリーレストランで殺害までの具体的な犯行計画は練っておらず、この時点で共謀は成立していない」と反論。共謀が成立した時期について神田被告はファミリーレストランを出て車に乗り込んだ時だとし、堀被告は、殺害現場で、磯谷さんからキャッシュカードの暗証番号を聞き出した時点で殺すことに合意したと述べた。

 川岸被告は、殺害行為について、神田被告らが首を絞めるなどしていたため「やむを得ず加わった」と主張。犯行後に警察に自首し、新たな犯行を防ぐことができたとした。

 昨年12月から公判前整理手続きによる協議が8回あり、争点は3人の共謀の時期などに絞られている。




3被告、共謀成立時期争う姿勢 
  磯谷さん拉致殺害初公判で

 08年9月26日(中日新聞朝刊・記事抜粋)


名古屋市千種区の会社員磯谷利恵さん=当時(31)=が拉致され殺害された事件で、強盗殺人や逮捕監禁などの罪で起訴された元新聞セールススタッフ神田司(37)、無職堀慶末(よしとも)(33)、無職川岸健治(41)の3被告は、25日の名古屋地裁の初公判で殺害行為は認めたが、殺そうと決めた共謀の時期について争う姿勢を見せた。

 検察側は冒頭陳述で、2007年8月24日午後3時ごろ、名古屋市内のレンタルビデオ店の駐車場の車内で3被告が集まった際に、強盗殺人など犯行の具体的な計画が決まったと主張。

 一方、弁護側は冒頭陳述で、川岸被告は、神田被告らが首を絞めるなどしていたため「やむを得ず加わった」とし、殺害直前に共謀が成立したと述べた。堀被告も殺害直前の車内で殺そうと決めたとし計画性を否定した。

 神田被告はレンタルビデオ店の次に訪れたファミリーレストランを出て車に乗り込んだ時に、未必的な殺意があったと主張した。

  この事件では、昨年12月から公判前整理手続きの協議が8回開かれ、強盗殺人、死体遺棄の共謀の成立時期や強盗の犯行状況などの細部が争点となっている。判決は来年3月18日に予定され、それまでの18回の公判で、9人の証人尋問や3被告の被告人質問がある。




◆「本当のこと言って」 母・富美子さんが会見


 「あの金づちで何回も繰り返し殴打されたのかと思うと娘がかわいそうで。被告たちは人の心など持ち合わせていない。絶対に許せない」

 殺害された利恵さんの母親富美子さん(57)は25日の初公判の後、記者会見で怒りを口にした。

 3被告を初めて目の前にした印象は「どの人もふつうの顔つきには見えなかった」と、被告らの様子に異常さを感じたと話した。

 「殺そうという話はしたが、本気で言ったことではなかった、と被告が主張するのを聞くと、どうしてそんなうそをつくのだろうと思った。ひきょう。本当のことを言ってほしい」と、保身に走る被告たちに訴えかけた。

 公判では凶器となった金づちや粘着テープなども示された。会見で質問が、公判での利恵さん殺害状況の再現に及ぶと「つらくて聞いていられなかったところもあった」と言葉を詰まらせた。

 今後の公判に関しては「求めていくのはただ一つ。3被告の極刑判決だけ。28万人分以上を集めた署名も事件を風化させず、3人を絶対許さないという思いを示すために続けていく」。

 娘の遺影は、法廷で被告と向き合わせないよう、かばんの中にそっとしのばせた。「娘には裁判の結果が出てから報告するつもり。それまでは、話すと娘が怖かったことを思い出すと思うので」と唇を震わせて話した。





千種拉致殺害冒頭陳述要旨

 08年9月26日(中日新聞朝刊・記事抜粋)

名古屋地裁で25日に開かれた名古屋市千種区の女性拉致殺害事件の検察側、三被告の弁護側の冒頭陳述の要旨はそれぞれ次の通り。


検察側
 【三被告が出会った状況】
 堀慶末被告と川岸健治被告は2007年8月初旬ごろ、携帯電話の闇サイト「闇の職業安定所」で、金目的の犯罪仲間を募集する書き込みをしてメールを交換し合うようになった。同月16日、川岸被告の「組んで何かやりませんか?」という犯罪仲間を募集する書き込みに、堀被告がメールを返信。さらに神田司被告が「以前はオレオレ詐欺をメーンにしていたのですが、貧乏すぎて強盗でもしたいぐらい」などのメールを返信し、連絡を取り合うようになった。


 【パチンコ店などの常連客襲撃計画】
 同月21日、川岸、堀の両被告は初めて顔を合わせ、別に闇サイトで知り合ったAと愛知県豊川市内のパチンコ店駐車場で落ち合って、金を手に入れる方法を相談した。堀被告の提案で、いつも大金を持ち歩いている名古屋市中区東新町にあるパチンコ店の常連客を襲撃して大金を手に入れることにした。常連客が乗った車を追尾したが、途中で見失った。同日午後10時すぎごろ、同市内中区の路上に止めた車の中で、三被告はさまざまな犯行計画について相談。結局、パチンコ店の常連客に対する強盗が一番金のなるという話でまとまった。その後、常連客を拉致する計画からその自宅に押し入る強盗殺人計画に変更した。
 一方、三被告とAは、同日午後10時ごろ、堀被告の知り合いのダーツバー経営者の襲撃を計画。自宅の下見を行ったが、隣家の電気がついており、人目に付くとの判断からその日の襲撃を断念した。


 【通り掛った女性襲撃計画】
 同月23日、Aが住んでいたアパートの賃貸借契約の期限が迫っており、契約更新の資金が欲しかったことから、三被告に対し「誰かを襲って金を奪い取ろう」と持ちかけた。神田被告は「じゃ、誰でもいいから襲っちゃう。どうせだったら、若い女がいいんじゃない。やばくなったら、最後は殺しちゃえばいいんです」などと言って、通行中の女性に対する強盗殺人などを提案したところ、川岸、堀の両被告も賛同した。


 【強盗殺人の共謀】
 三被告は翌日午後三時ごろ、名古屋市緑区のレンタルビデオ店駐車場にとめた乗用車の中で、犯行について相談。さらに、犯行計画を練るため、同市北区のファミリーレストランで、堀被告が「風俗嬢はあんまり金持ってないっすよ。なるならOLの方がいい」と提案。神田被告が20代後半から30代の通行中のOL風の女性を拉致して、金を奪い、犯行の発覚を阻止するため、女性を殺害して,死体を遺棄する旨の共謀が成立した。


 【拉致の状況】
 三被告はOL風の女性を探し出すため、同日午後7時ごろから、乗用車で名古屋市内を走り回り、通行中の5人の女性を追尾するなどして、襲撃の機会をうかがった。同日午後11時ごろ、同市千種区の路上を歩いている被害者を発見した。川岸被告が運転する乗用車で被害者の後をつけ、被害者をいったん追い越し、同区春里町の路上で車両を止め、待ち伏せした。10分後、被害者が車の右脇を通り過ぎた際、堀被告が後部ドアを開けて降り、被害者に道を尋ねるふりをしてその背後から近付き、被害者が立ち止まるやいなや、口を右手でふさぎ、身体を抱え込んで後部ドアから押し込んだ。被害者を人目に付かない場所に連衡するため、愛知県愛西市内にある屋外駐車場まで疾走した。


 【殺害の状況】
 翌25日午前零時すぎ、神田、堀の両被告は川岸被告から強姦(ごうかん)されそうになった被害者の様子を見て、被害者が落ち着きを失い、今にも逃走を図りそうな雰囲気になったと判断。既に被害者を包丁で脅迫して本当の暗証番号を聞き出していたと思っていたこともあり、その場で話し合い、直ちに被害者を殺害することにした。そこで午前一時ごろ、神田、堀の両被告が被害者の首を絞めるなどをしたのを見た川岸被告もここで被害者を殺害することになったと理解し、犯行に加わった。神田、堀の両被告は粘着テープを被害者の顔面全体に覆うように31周にわたって巻き付けた。弱いながらも脈が残っていたことから、神田被告が金づちを左手にもち、数十回にわたって殴打し、窒息死させた。



神田被告の弁護側
 殺害の共謀が成立したのはファミリーレストランを出て車に乗り込んだ時。殺意は確定的ではなく、最悪を想定した未必的なもの。金づちで殴打したのは、確実に殺害するためではなく、被害者が長い間苦しまないため。

堀被告の弁護側
 殺害の共謀が成立したのは殺害現場。神田被告から「今から素手で締めます」と言われて殺害しようとしていることを知り、加担した。

川岸被告の弁護側
 殺害の共謀が成立したのは車で神田、堀の両被告が首を絞めるなど殺害行為をしていたため、やむ得ず加わった。