用語集 その1



 当初,ここでは代表的ないくつかの音律を紹介する程度でいいか,と思っていたのですが, 予備知識がいくらかあった方が理解しすいと思いますので,音律に関る用語集からはじめたいと思います.



 物体が振動してその振動が空気に伝わり,さらにその空気の振動が鼓膜を振動させた時,人間は音を感じます. つまり空気の振動が音です.
 このときの空気の振動は,物体の振動にともなって起るために,空気の密度の高い部分と低い部分が出来ます. この疎密が波となって伝わっていくのです.従ってこの波,音波は疎密波と呼ばれます.音波をグラフに描くと, 正弦波で表わされます.正弦波の最も高い部分(空気圧の密な部分)の間隔,又は最も低い部分(空気圧の疎な部分)の 間隔を波長といいます.波長の長い音は低い音として感じられます.
 1秒間におこる振動の回数をヘルツ(Hz)という単位をつけて表わします.振動数が大きいほど, 高い音として感じられます.振動数は周波数とも言われます.A(ラ a1)の音叉の音は440ヘルツです.普通人間は, 20ヘルツから20キロヘルツ(20000ヘルツ)の範囲の振動を音として感じるようです.
 ちなみに,振動数が2倍になると1オクターブ上の音に,1/2倍になると1オクターブ下の音になります.
 ハーモニーは,音に関する現象ですから,音律を研究することも大切ですが,やはり「音」そのものを理解して おくことが大切なようです.さまざまな音律を工夫することを人間に強いるのは,「音」が持っているさまざまな性質によるものです.


うなり
 同時に2つの音が鳴っている時,その2つの音の振動数がわずかに違っていると,ウワーン,ウワーンという感じに 音が大きくなったり小さくなったりして聴こえます.この現象を「うなり」あるいは「ビート」といいます.
 うなりの数は,振動数の差になります.440ヘルツの音叉の音に442ヘルツの笛の音を重ねると,442−440=2ということで, 1秒間に2回うなりが聞こえることになります.
 ユニゾンを歌う時,みんながまったく同じ音程で歌っていればよいのですが,少しでもずれている人がいるとこのうなりが 発生してしまうことになります.だからユニゾンは難しいのですね.しかし実際問題としては,このようにわずかなずれで生じる うなりよりも,同じ音程で声を伸ばせない,つまり音程が揺れてしまうことの方が多いわけですが.あ,だから余計うなりが 複雑に出てくるわけか.
 ピアノやチェンバロを調律する時にはこのうなりの数を数えて調律していくのだそうです.


倍音
 ヴァイオリンの3弦を鳴らすとラの音が出ます.また,ソプラノ・リコーダーをラの運指で吹くと, やはりラの音が出ます(当然ですが).この2つの音は同じ440ヘルツの音が出ているということになりますが, 音色がまるでちがいますね.何故でしょう.実は,どちらの楽器も440ヘルツの音と同時に違う振動数の音(=違う高さの音)が いくつも出ていて,それらが合成されてわれわれの耳に聴こえてくるわけです.その同時に鳴っている音を倍音といいます. 音色の違いは,この倍音のうちどの倍音が強くなっているか,あるいは弱いか,その割合によって決まってきます. 倍音のうち,その音の高さを決めている音,この場合は440ヘルツの振動数の音ですが,この音を基音といいます. つまり,基音によって音の高さが決まり,いくつかの倍音がどんな強さの割合で含まれるかによって音色が決まるということです. 普通倍音は20以上あるそうです.
 倍音は,基音の整数倍の振動数を持ちます.1倍は基音です.2倍の音は第2倍音といいます.3倍は第3倍音, 4倍は第4倍音,‥‥n倍は第n倍音ということになります.基音を含めてすべての倍音を並べた音列を, 「自然倍音列」といいます.従って,楽器の音や歌声などは,自然倍音列で構成されている, ということができます.自然倍音列で構成されている音を「楽音」,そうでないものを「騒音」といいます.
 C音を基音とした自然倍音のそれぞれの音を表にしてみました.C音はヘ音譜表下第2線の音です.
倍音次数 音名 周波数Hz
32 2112
24 1584
20 1320
16 1056
15 990
14 924
13 as 858
12 792
11 fis 726
10 660
9 594
8 528
7 462
6 396
5 330
4 264
3 198
2 132
1(基音) 66


協和
 2つの音の振動数の比が,簡単な整数になっている場合,この2音が同時に鳴ると非常に澄んだ快い響きになります. この状態を協和といいます.
 振動数比が1:2の2音は1オクターブのこと,2:3の2音は5度のこと,3:4の2音は4度のことです. これらの音程を声やリコーダー,ヴァイオリンなどピッチを微妙に調整出来る楽器で出してみると,とても美しく響きます. しかし,ピアノでこれらの2音を弾くと,オクターブはもちろん綺麗なのですが,5度や4度はうなりが出てしまい,濁って聴こえます. 振動数比を調べてみると,5度は1:1.498307…,4度は1:1.334840…となり,とても簡単な整数の比とはいえません.
 では,なぜ簡単な整数の比になると協和するのでしょうか.次の表はCとG,F,E,Dの5音の倍音を調べたものです. Cとの振動数比がGは2:3,Fは3:4,Eは4:5,Dは8:9になるようにしてあります.

倍音次数 Cの倍音 周波数 Gの倍音 周波数 Fの倍音 周波数 Eの倍音 周波数 Dの倍音 周波数
16 1056 1584 1408 1320.0 1188.00
15 990 fis 1485 1320 dis 1237.5 cis 1113.75
14 924 1386 es 1232 1155.0 1039.50
13 as 858 es 1287 des 1144 1072.5 965.25
12 792 1188 1056 990.0 891.00
11 fis 726 cis 1089 968 907.5 816.75
10 660 990 880 gis 825.0 fis 742.50
9 594 891 792 fis 742.5 668.25
8 528 792 704 660.0 594.00
7 462 693 es 616 577.5 519.75
6 396 594 528 495.0 445.50
5 330 495 440 gis 412.5 fis 371.25
4 264 396 352 330.0 297.00
3 198 297 264 247.5 222.75
2 132 198 176 165.0 148.50
1 66 99 88 82.5 74.25

 C音とG音の倍音を比べてみましょう.すると,Cの第3倍音とGの第2倍音,Cの第6倍音とGの第4倍音のように, 共通する倍音がいくつも出てきます.実は,この共通倍音があることによって,協和して聴こえるのです.C音とG音の場合, 共通倍音はこの表の中だけでも5つありますので,非常によく協和します.
 しかし,D音を見てみると,Cの第9倍音とDの第8倍音しか共通倍音がありません.したがって,協和感は薄く, ぶつかった音として感じられます.しかし,共通倍音も存在するため,まるきりきたない感じにはなりません.
 F音の場合は共通倍音が4つでG音より少なめです.E音の場合は3つでさらに少なめです.ということは, 協和する2音を出そうとする時,共通倍音が合わせる目安となりますので,5度のGを出すのは比較的やさしいが, 3度のEを出すのはだいぶ難しいといえますね.








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