MISSA ORDINARIUM(ミサ通常文)の内容 1



KYRIE(あわれみの讃歌)

1) Kyrie eleison.(主よ,あわれみたまえ)
2) Criste eleison.(キリストよ,あわれみたまえ)
3) Kyrie eleison.(主よ,あわれみたまえ)


 グレゴリオ聖歌などでは,それぞれの節を3回ずつ繰り返し,合計9回歌われました. しかしもっと古い時代には,その総数は決まっておらず繰り返し繰り返し歌われたといいます. このように繰り返し歌う歌を連祷といいますが,永久にいつまででも歌っていたいような, 深い祈りの世界であり,信徒の心情が伺えます.
 もともとはギリシア語の祈りです. “eleison” はグローリアやアニュス・デイに 出てくる “miserere” と同じ意味で,人間の痛み悲しみを自ら体験し人間の救いを完成させた イエス・キリストに対して,深いあわれみと愛を請い願う祈りとなっています.
『一行がエリコの町を出ると、大勢の群衆がイエスに従った。 そのとき、二人の盲人が道端に座っていたが、イエスがお通りと聞いて、「主よ、ダビデの子よ、 わたしたちを憐れんでください」と叫んだ。群衆は叱りつけて黙らせようとしたが、二人はますます、 「主よ、ダビデの子よ、わたしたちを憐れんでください」と叫んだ。イエスは立ち止まり、 二人を呼んで、「何をしてほしいのか」と言われた。二人は、「主よ、目を開けていただきたいのです」 と言った。イエスが深く憐れんで、その目に触れられると、盲人たちはすぐ見えるようになり、 イエスに従った。』(マタイ20:29-34)
 「主よ,あわれんで下さい」という祈りには,この聖書の箇所の盲人のように,切実な, そして具体的な願いが込められています.
 よく生徒たちがテスト前になると,「先生,勉強教えてください」と言って,職員室にきます. しかしこれでは,この生徒がどんなことがわからないのか,何を教えてあげていいのか, 先生にはわかりませんし,生徒自身も何がわからないのか具体的に気付いていないのです. 「主よ,あわれんで下さい」の祈りは,このような漠然とした要求ではありません.先の生徒が 「この漢字の書順がわからないので,教えてください」と言ってくれば,先生はその要求に答えることができます. 順番に書順を示してあげることもあるでしょうし,自分でこの本で調べてごらんと指示することもあるでしょう. 「調べてごらん」は,生徒の要求したものとちょっと違いますが,この生徒のことを思って, 勉強の仕方をわからせたり,その解答がより生徒の身につくように配慮して,先生は「調べてごらん」 と言うのです.神も同じ様に,「目をあけてください」に対し,目を開くことをせずに別な解答を示すかもしれません. しかし,これが神のその人に対する配慮で,その人にとって一番よいものを祈りの解答として与えてくれます.
 「主よ,あわれんで下さい」と歌うとき,その裏には,クリスチャン一人ひとりのより具体的な祈りが かくされていることを思って歌うべきでしょう.確実に願いをかなえてくださる方に「主よ」と呼びかけ, より具体的な願いを内に抱きながら「あわれんで下さい」と言うのです.その祈りの気持ちを,歌い表したいものです.





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