鈴木内科・循環器科

高血圧ワンポイントアドバイス


このコーナーは診療中に患者様からよく聞かれる質問を、Q&A形式に
まとめてみました。ご参考になれば幸いです。

Q 家庭血圧ではいつ血圧を測ればよいでしょうか。
A 起床後朝食前と就寝前に測定してください。複数回測定した場合は極端な値は除いて平均してください。血圧には日内変動があり、通常は朝高く夜は下がります。朝の血圧は1日の中で一番高い時間帯に血圧を測定するということで意味があります。朝血圧が極端に上昇するタイプは、早朝高血圧と言われ、午前中に脳卒中や心筋梗塞の発症が多いことが知られていて、早朝高血圧との関連も言われていますので、朝血圧が高い方は要注意です。就寝前の血圧は1日の平均的な値が出ると言われています。いずれの時間帯でも135/85を超えると家庭内高血圧と判定されます。高齢者で食後に血圧が下がる人がいます。食後低血圧といわれ、食事をすると胃腸の血管が拡張することにより、全身血圧が下がります。極端に下がると、食後にめまいや立ちくらみが生ずる事がありますので、症状があるときは食後にも血圧を測定してみてください。また、食後だけでなく、入浴・運動後や、飲酒しても血圧は下がります。

Q 家庭血圧はどのような血圧計を用いればよいでしょうか。
A 市販されている大手メーカーの上腕タイプの血圧計であれば問題ありません。ただし、手首タイプの血圧計は測定部位の問題(手首の動脈は橈骨と尺骨の2本の骨で挟まれており、加圧しても十分圧迫できないことがある)や、手首と心臓の相対的な高さがずれると大きく誤差が出ます。学会では手首タイプの血圧計の使用は勧奨されていまん。診察室の血圧と家庭血圧が大きくずれるときはクリニックに家庭血圧を持ち込んで、クリニックの水銀柱血圧計で精度チェックをしてもらってください。

Q 上の血圧と下の血圧の差はいくつあればいいのですか。
A 良く聞かれる質問ですが、高血圧の診断基準には上の血圧(収縮期血圧)と下の血圧(拡張期血圧)の血圧格差(脈圧)の正常値は規定されていません。それぞれの絶対値のいずれかが140/90を超えた場合、高血圧と判断され、治療による降圧目標値は130/85未満(高齢者では140/90未満)とされています。大まかに言えば、収縮期血圧は血管の硬さを表し、拡張期血圧は血管の締まり具合を意味します。動脈硬化が進行すると収縮期血圧は上昇します。高齢者では動脈硬化が進行すると収縮期血圧が上昇てし脈圧が大きくなっていきます。つまり、血圧の上・下の差が大きい方は動脈硬化が進んでいる可能性が高いので要注意です。そのほか、大動脈弁閉鎖不全症のある方は拡張期に血液が心臓に逆流してしまうので、拡張期血圧が下がり、脈圧が大きくなります。

Q 左と右で血圧に差がありますがいかがでしょうか。
A 血圧値には左右で多少のばらつきがあります。通常ではそれほど左右差はないはずですので、左右どちらの腕で血圧を測定されても良いです。しかし、左右で上の血圧が20以上、下の血圧が10以上差がある場合は、血管がつまりかけている可能性があります。心房細動などの不整脈があると血圧計でうまく測定されない場合もあるので、左右差が大きいときや不整脈があるときはドクターに相談されてください。

Q 血圧の薬は飲み始めたらやめられないのですか。
A これも良く聞かれる質問です。高血圧は大部分が本態性高血圧といわれ、これは遺伝的な背景があり、加齢や生活習慣の問題が加わり、年と共に徐々に血圧が上昇していきます。放置しておくと脳卒中や、心肥大、狭心症、心筋梗塞、腎機能低下など、数々の合併症が起こりやすくなります。現在の治療は原因治療ではなく、血圧を下げることにより合併症が減少するというエビデンスに基づき、対症療法で血圧を下げる治療が行われています。もちろん食事や運動療法をきちんと行い、を生活習慣の改善が図れれば、血圧は下がりますので、降圧薬を減量したりやめることも不可能ではありませんが、生活習慣を100%改善できる人はほとんどいないのが現状です。高血圧症は合併症が起こるまで自覚症状はほとんど出ませんので、病気の本質を良く理解して、生活習慣の改善を図る努力を行いながら、きちんと服薬することが大切です。